恋多き女と言われた和泉式部の、とくに情熱的な一首にグッときました。
不倫の始まり…というよりこれじゃ、突然アイドルにハマった主婦の心理?
元歌は再会を切望する内容なのに、取りようによってはまるで、会ったことがないみたくもなってるし。
薄っぺらくしちゃってごめん和泉式部。
性別はそれでも一応ニュートラルにしたつもりです。
楽しんでいただければ幸いです。
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山を出でて冥き途にぞたどりこし
今ひとたびのあふことにより
歌意:仏様のいらっしゃる明るい山を出て、苦しい真っ暗な世間に戻って来ました。あなたに、ただあなたに、再びお逢いすることのため…
なぜ今更こんなことをしているんだろう。
誰も望んじゃいないのに。
もちろん自覚している。自分がそうしたくて仕方がないからであって、誰かのせいにする気はさらさらない。
良いパートナーと出会い結婚して、子どもにも恵まれ、家庭が円満で、自分の周囲の人間関係も良好で…人生のスゴロクとしては勿体ないほどの成功のコースを進んでいたのに。
あなたを知ってから、
自分の中の優先順位が滑稽なほど入れ替わってしまって、もはや手がつけられない。そう言いながら一方で、この流れに押されていく自分がいとおしくもなってしまっている。
あなたに逢いたい。
そのために自分がここであらん限りの間抜けた努力を重ねていることを、あなたに伝える術はないのに。
あなたにひとめだけでも逢いたい。
自分のこの願いをあなたがどう思っているのかさえ、知る由もないのに。
自ら歩き出したゴールの見えない道。
もう後ろは振り返らない。
角川ソフィア文庫
ビギナーズクラシックス 日本の古典
「和泉式部日記」 川村裕子 編
より 和歌と歌意を引用