ある朝、3年ぶりくらいに男の身内の一人と顔を合わせた。顔をみるだけで、いわゆるパニック発作(過呼吸)になっていた相手だ。
しかし、その朝、こちらから声をかけた。「おはようございます。お元気ですか?」と。
女は感じた。
鬼はいない。
鬼が騒がない。
鬼が戦おうとしない。
自分の心の鬼退治ができたことを実感した。
会話はそれだけだった。
「じゃあ」と車に乗り込み、発車。のち、なんとも清々しい気持ちになった。
今、女はこう思う。
夫婦の価値観は真逆が良い。
自分に足りないことを与えてくれる。しなくてもいい苦労だとも捉えられるが、女はそうは思わなかった。
苦しくて苦しくて、心が壊れ、死んでいく。心が死んでも身体が生きている恐怖。身体を痛めつけ殺そうとまでする。それでも死ねなかった。
こんな経験は真逆の価値観の相手がいなければ出来ないのだから。
どんだけポジティブなんだ?と思う。
でも、せっかく人間に生まれてきたのだから、この苦しみを乗り越えさせてもらえたのだから、同じような苦しみの人を助けたいって思う。
女は今、幸せだ。
男とはまだ一緒にいる。
男にも聞いてみたい、女と結婚して、今どんな気持ちなのか…