女は自分の執着が自分を苦しめている事に気づいた。自分の執着が何なのか?を、整理していった。
執着が何か、一つ一つ気づき、手放す、それでもなかなかゼロにはならない。今もってゼロにはならない。
今まで積み上げてきた、仕事、地位、財産、(大してないけど)を手放していった。
洋服など、物への執着はすんなりと手放すことができた。
ファッションや化粧は身だしなみ程度で満足できるようになった。今までなんのために洋服を買っていたのだろう?まぁまぁ高級な鞄や服、アクセサリー、何一つ必要ない。
周りからの評価のためだけの物欲だということに気付いた。
積み上げてきた仕事…これは自分自身の知識、経験として残る。考え方を変えればよい。知識と経験を活かし知恵をつけて、世の中に使えばよい、と思った。ここも時間はかかったが手放すことができた。
人への執着も時間はかかったが手放すことができた。
少しずつだった、時間は多少かかった、でも手放したとき、別の何かが入ってきた。
きっと人間はそれらのことを繰り返して生きているのだろう。
女は男と結婚しなければ、こんな経験をすることはなかった。
女の母は言う。
「お母さんは苦労知らず。恵まれてた。でも苦しいことがあったあなたは苦しみがわかる人間になったね。だから苦しい人を助けることができるようになったんだね。」と。
女は男に感謝できるようになった。
女はある日夢を見た。
誰かと二人で鬼退治をする夢、鬼退治をした後、鬼の肝をその誰かと食べた夢。その誰かの姿は見えなかったからどんな人か?男か?女か?もわからない。
目が覚めて、女は夢占いのサイトで調べた。鬼退治をした夢はいわゆる困難を乗り越えることができる、前に進む、などと書かれてあった。肝を食べた…は生命力が旺盛になり、物事への意欲や情熱が湧いてくる、自分のやるべきこと、やりたかったことなどをどんどん実行に移していくとよい。と書いてあった。
吉夢と捉えてよさそうだ。
この話を今いる仲間の何人かにした。その見えない誰かは自分だと口をそろえたかのように皆が言った。
女はこの夢の話をするたびに、鬼退治か…鬼…この鬼…なんだろう?と考えた。
ふと、右耳に聴こえてきた。
「自分の中の鬼退治ができたのだ」と。
心の中の鬼退治、確かにそれがしっくりいくと女は納得した。
答えは己の中にしかない。
誰かや社会のせいにしていても解決しない。
全ての元凶は自分の心の中にしかない。
全ては自分が作り上げている世界だから。