今回取り上げる季語はパンジー(三食菫)で春の季語となります。
パンジーは1800年代に北欧で盛んに行われていた野生の菫を品種改良したものが欧州各地においてさらに品種改良され、それらが江戸時代末期(1860年頃)にオランダ人によって日本に持ち込まれたと言われています。
多くの花は紫、白、黄色の三色の花弁だったので、三色菫と名付けられましたが、現在は単色の花弁や花弁に模様が入った花も見られるようになってきました。
さて、季語としてのパンジー(三色菫)に目を向けてみると、多くの歳時記では「菫」の傍題として取り上げられています。
「菫」の例句として有名なのは松尾芭蕉の「山路来て何やらゆかしすみれ草」、夏目漱石の「菫程な小さき人に生まれたし」などがあります。
しかしながら、これらの句から感じ取れる感覚はパンジー(三色菫)を見て感じるそれとはかなり違うように私には思えます。
芭蕉、漱石が詠んだ句からは目鼻立ちが楚々として、髪色も黒を基調とした東洋の女性を感じさせますが、パンジー(三色菫)は目鼻立ちがはっきりして、ブロンドや赤、栗毛など様々な髪色を持った西洋の女性を連想させます。
また、季節感に関しても、一般にパンジー(三色菫)は春から夏が花の盛りと言われていますが、12月の寒風に鮮やかな花弁を揺らして力強く咲いている姿を皆さんもご覧になっていると思いますので、冬の風景の中に咲いている姿を詠んだとしても強い違和感を持たないのではないでしょうか?
私には以前に取り上げた探梅とパンジーは季節感が近いように思えます。
そうは言ってもひっそりと咲き、そこはかと香り漂う梅に対して、鮮やかで華やかな花のパンジーでは同じ春の花でも趣がかなり変わります。
寒風の中に花弁を揺らすパンジー、春の光に輝くパンジーいずれも捨てがたいところです。
パンジーやここより居留一番地
(俳句ポスト投句)
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。