今回取り上げる季語は無月で、秋の季語となります。
無月とは陰暦の八月十五日の月、中秋の名月が雨や雲によって見えないことをいいます。
他の国の人であれば「見えないね」で済ます所を見えない月を観賞するというのは日本人だけの感性ではないでしょうか?
これを裏付けるのが月に関する言葉の多さです。英語では独立した単語として月の満ち欠けを表す言葉は満月、三日月、半月ぐらいですが、国語辞典を調べると十六夜の月、十五夜の月、さらには寝待ち月、立待ち月など数多く出てきます。
また、古来より和歌にも数多く詠まれ、俳諧においても主題、傍題を合わせると二十以上の季語があるのではないでしょうか。
このように見てみると日本人は無類の月が好きな民族ではないかと思います。
無月とはこんな月が好きで、深い思い入れがある日本人だから生まれた季語だと思います。
溶接のさざれ火流る無月かな
(俳句ポスト投句)
暗渠より猫走り去る無月かな
(文芸おじや第39号)
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。