今回取り上げる季語は胡桃で、秋の季語となります。
クルミの漢字に胡の文字が使われているので、有史時代に中国などから伝来したものかと想像していたのですが、鬼胡桃などは日本に古くから自生していたようです。
原産地は西アジア、南西ヨーロッパとされており、先史時代に人類の移動とともに日本にやって来たのかもしれません。
人類の歴史では紀元前約7000年前に胡桃は食料として利用されていたようで、日本では縄文時代に既に食べられていた痕跡が残っています。
さて、季語として胡桃を見てみると、その皺深い外観が目を惹きます。
また、胡桃同士をかち合わせたり、擦り合わせたりすると実の中にある空洞が関係するのか、独特の音色がします。
さらに脂肪分が60%程度まで達する濃厚な味は肉食文化のない日本人にとって他に代え難い味です。
胡麻、菜種も油分を多く含みますが、その含有率は50%程度、なにより胡麻も菜種も一粒一粒が胡桃に比べると遙かに小さく、その分たくさん食べようとすると皮の渋みが感じられ、胡桃ほど脂肪(油分)の味を楽しめません。
外観や音色に関しては他の方の句にもよく取り上げられているため、ここらあたりをそのまま句にすると平凡な俳句になりそうです。
これらを対象に詠むのでしたら一工夫も二工夫も必要だと思います。
それに引き替え、脂肪の濃厚な味について直接的に詠んだ句はあまりないように思います。
しかしながら、人の営みや欲望と取り合わせて詠んだ句が散見されます。
これは以前に取り上げた稗が古くから日本人の食を支えてきた力強さをもった季語であるのと同じく胡桃もその力強さをもった季語として通ずるものがあるように思えます。
桃割る七言絶句吟じつつ
(俳句ポスト投句)