今回取り上げる季語は初鰹で、夏の季語となります。
本にもよりますが、「初鰹」と「鰹」が並んで書かれていたり、鰹の傍題として扱っている歳時記を見かけますので、この二つの季語は近しい関係にあるようです。
では、鰹に初がつくとどう趣きが変わってくるのかを知るために初鰹以外に干支としての動物を除いて「初(動物)」で取り上げられているものを拾い出してみました。
そうすると初鴨(秋)、初雀、初鶏、初鳩、初鴉(以上四つは新年)がありました。これは私の手持ちの歳時記から拾い出したものなので、皆様がお持ちのものとは異なるかもしれません。
初鴨(秋)
初雀
初鳩
初鴉
さてこれら初(動物)の季語について少し考察して、初鰹はどういう季語なのか考えてみたいと思います。
まず初鴨ですが、初を外した「鴨」は単独で冬の季語として存在します。
鴨は冬の季語ですが初が付くことにより冬の寒さ近づいてきていることを感じさせる秋の季語となっています。
次に初雀、初鶏、初鳩、初鴉の初を外した雀、鶏、鳩、鴉は単独では季語として取り扱われていません。
しかし、初が付くこと新春のおめでたい季語となります。
これらの考察を踏まえると、鰹は単独でも季語として取り上げられ、また初がつくことでも季語となることをみると、鰹と初鰹は鴨と初鴨の関係に近いのではないでしょうか?
鰹という季語を見てみると、「鰹」単独では盛夏という季節感がありますが、初が付くとまだ夏本番のうだるような暑さではなく爽やかな暑さである初夏という季節感になるのではないでしょうか。
これは、初鰹の代表句である山口素堂の「目には青葉山郭公初鰹」からも間違いないように思います。
さらに秋の季語である初鴨が次の季節である冬を予感させるという考察から、鰹に初が付くことで、うだるような暑い夏、盛夏が近づいてきていることを感じさせるということも含んでいるように思います。
さらに、初雀、初鶏、初鳩、初鴉がおめでたい季語として扱われている例から鰹に初が付くことで、なにかおめでたいことを連想させる季語としても機能しているのではないかと思われます。
私が持つ初鰹の本質、印象はこの通りです。
これらの本質、印象を上手く使って詠みたいものですが、実際は中々うまくいかないものです。
初鰹競り場に熱き気は満ちて
(俳句ポスト投句)
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。