今回取り上げる季語は櫨紅葉(はぜもみじ)です。
さて櫨とはどんな木なのでしょうか?
私自身もよく知らなかったので調べてみました。
櫨の木は東アジア南部から東南アジアにかけての亜熱帯原産のウルシ科の植物です。
そのため、日本では原産地に近い沖縄(琉球)にはかなり多く自生しており、九州、四国、中国地方にわずかに自生しているだけで、関東地方より北での自生はほとんど見られません。
1644年(江戸時代初期)に鹿児島に流れ着いた異国人(南蛮人なのかそれとも中国人なのか定かではありません)が櫨の実から木蝋(和蝋燭の原料)が採れること、そして実から蝋を採取する方法を伝えたそうです。
時代が下って江戸時代中期に木蝋を採取する目的で櫨の木が琉球より本土に持ち込まれました。
産業として人が木蝋を取る目的で植えられたため、人里に近い場所で現在も幅広く見られます。
ウルシ科の植物は一般に山深いところにひっそり生えていることが多いので、ウルシ科特有の鮮烈な赤の紅葉を人里近くで見かけることは稀なのですが、櫨の木だけは例外で人里に近い場所で鮮烈な紅葉を見せてくれる木です。
私ももしかしたらどこかで見たのかもしれませんが、櫨の木という名前を知らないばかりに気付かなかったのかもしれません。
櫨紅葉に近い季語で漆紅葉というのがあるのですが、歳時記には漆紅葉より櫨紅葉の方が多く例句が掲載されていたのも櫨の木が身近にあったことと関係があるのではないかと思われます。
また、櫨の実は飢饉の時には救荒植物(飢饉などの非常時に食べることが出来る植物)として食べられていたことがあったそうです。
何度も何度も灰汁抜きをしないと食べられないそうですが、空腹に苛まれながら鮮烈な紅葉を目印に、櫨の実を捜していた人々の気持ちは察するに余りあるものです。
安珍を匿まひし寺櫨紅葉
(俳句ポスト投句)
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。