では前回の続きを始めさせていただきます。
ではもう少し近づいて見た建物の様子をお話ししたいと思います。
まず、シャッターの下りている一階の庇の上を見てみると、石造りの鳥の彫刻が並んでいます。
羽根の形や少し曲がった嘴を見るとどうも鷹や鷲などの猛禽類をかたどっている彫刻のようです。
調べてみると鷹の彫刻だそうです。
彫刻の鷹は全部で7つあり、元々の設計では梟(ふくろう)だったそうですが、日本では梟は不気味な印象があり、また迷信ですが不吉な鳥とされていることもあり、鷹に変更されたようです。
では、なぜ初期の設計では梟にされたかを推測すると、欧米で梟はギリシャ神話に登場する知恵の神アテーナー(日本では長母音を略してアテナと表記されています。またはミネルヴァ)の使いとされ、知恵の象徴、森の賢者として認識されています。
皆様もよくご存知のハリーポッターにも白い梟がハリーのペットとして重要な役を演じています。
また、夜目が利くので守り神として欧米の建物の屋根に梟の像がよく置かれています。
私も欧米に赴任していたときに建物の屋根に梟の像が置かれているのを見かけたことがありましたが、その時はただの飾とばかり思っていたのですが、この文章を書くために調べてみて初めて梟がおかれていた意味がわかりました。
欧米に行かれた際は建物の屋根をよく見てみると、梟の像を見つけられるかもしれません。
日本でも旧首相官邸の屋上に石造りの木菟(梟の仲間)の彫刻が4羽置かれています。
(首相官邸のサイトにある次のアドレスに説明があるので、興味のあるかたはご覧ください。http://www.kantei.go.jp/jp/vt2/main/05/photo-mimizuku01.html)
ここで少し余談をさせていただきます。
先程、知恵の神としてアテーナーとミネルヴァ、全く違う名前を併記していますが、アテーナーはギリシャ神話に登場する女神の名前でミネルヴァはローマ神話に登場する知恵の女神の名前で、元々は別の女神だったのですが、ローマとギリシャの文化が融合する中で両女神が同一視されるようなり、さらに両神ともに梟を従えていることからさらに同一性が増していったと考えられています。
現在、欧米社会では知恵を司る女神としてはアテーナーよりミネルヴァが一般的になっているようです。
似たような事例は日本にも存在し、例えば弁財天は元々ヒンズー教で芸術、学問を司るサラスヴァティー神が仏教に取り込まれて呼び名が変わった神です。
さて余談はこのくらいにして、日本と欧米での梟に対する認識の違いにより梟から鷹に変更されたのは視力の良い猛禽類としてこの建物を見守るという意味からではないかと思われますが、梟と違い鷹は夜目が利きませんので、泥棒が活躍する夜は無力なのが残念なところです。
角ばった印象がある鷹ですが、よく見てみると全体的に丸っこく作られているところは少し梟を意識しているのでしょうか?
厳しい印象の鷹ですが、すこしかわいらしく、愛嬌があるように思えます。
お話が横道にそれている間に夜も更けてまいりました。
続きは次回に譲りたいと思います。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。