季語探訪 すし(夏の季語) | 蔵六の雑記帳

蔵六の雑記帳

過去にそしていま感じたまま、思うままを記していきたい思っています。
面白くない話かもしれませんが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

今回は夏の季語である「すし」を取り上げてみたいと思います。

 

歳時記によっては「すし」を主題として扱っているものもあれば、夏料理の傍題として扱っているものもあります。

 

ここで敢えて「すし」をひらがなで表記したのは漢字の鮓、鮨、寿司はそれぞれ違う意味を持っているためです。

 

まず、寿司は先の二つの漢字と成り立ちが異なり当て字であると言われています。

 

その由来は江戸時代末期に「すし」が祝いの席などのごちそうとして食されるようになり、寿を司る食べ物として「寿司」と書かれるようになったと言われています。

 

 

それでは、鮓と鮨はそもそもどういう意味があるのか漢和辞典で調べたものを引用すると、鮓は「塩や酒粕等に漬け込んで発酵させることにより酸味を付けた魚、また発酵させて酸っぱくなった飯に魚を漬け込んだもの」と書かれています。

 

この種の鮓は古代から中国南部(華南地方)、東南アジアなどの温暖な地域で作られています。

 

これは温暖で魚の腐敗が進むのが早い地域で魚を保存する方法として広まったものが、日本に伝わったもので、日本人が「すし」として認識している最も古い形であると考えます。

 

現在、ここでいう「鮓」(熟(な)れ鮨とも呼ばれています)を作るには手間と数ヶ月ほどの時間がかかるため廃れつつありますが、滋賀県の鮒寿司など全国的に知名度のあるものも残っています。

 

因みにここで言う「鮓」は乳酸菌により生成した乳酸により酸っぱくなったもので、酢酸を主成分にする酢を使ったすしとは味わいがかなり異なります。

 

そして、次に「鮨」の意味は「酢に漬けた魚、酢や塩で味付けした飯に魚肉や野菜を混ぜたもの、もしくは飯の上に魚や貝類の肉をのせたもの」と書かれています。

 

これが、現代の「すし」に一番近いものです。

 

皆さんもよくご存じだと思いますが、「鮨」は酢酸を主成分とした「酢」により酸っぱくしたものです。

 

この鮨も「押し鮨」、「ばら鮨」、「握り鮨」などに分類できます。

(押し鮨)

(ばら鮨)

(握り鮨)

この中で「押し鮨」は「鮓」(熟れ鮨)の味に近く、数ヶ月待つことなく「鮓」に近い味が楽しめます。

 

まず鮓をつくる手間を省き、鮓の味に近い押し鮨が作られ始めたのではないだろうか考えます。

 

しかしながら「押し鮨」でも米と魚が酢になじむまで少し置いてから食べるのが一般的です。

 

そこで、「ばら鮨」はさらに早くということであらかじめ酢漬けした魚と酢飯をさっと混ぜて食べる形に変わってきます。

 

最後は「握り鮨」でこれは酢飯に生の魚を載せて食べる形になります。

 

こうなると初期に作られていた「鮓」とは大きく趣が異なります。

 

また、先にも書きましたが乳酸と酢酸では酸味の感じ方が違います。

 

乳酸はツンとする酸っぱさはなく、じわーっとした後味の酸味です。

 

一方で酢の方はツンとした酸っぱさと爽やかな後味の酸味です。

 

ヨーグルトと酢の酸味を思い浮かべていただければ分かりやすいかと思います。

 

ひらがなの「すし」を漢字に書き改めるとこれだけの違いが見えてきます。

 

この「鮓」、「鮨」、「寿司」が持つ意味や味の違いを使って「すし」の句が詠めればと思っております。

 

祭寿司ようこられたと妻の里(俳句ポスト投句)

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。