マイ・ボニー・・・13 | ブログ連載小説・幸田回生

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読み切りの小説を連載にしてみました。

よろしかった、読んでみてください。

 13

 

 それにしても、事件の多い年だった。

 

 横井庄一さんが、恥ずかしながらグァム島から帰って来た。

 札幌オリンピックで、日の丸飛行隊がメダルを独占した。

 

 浅間山荘事件。連合赤軍、永田洋子がヒロインになった。

 

 沖縄が日本に復帰し、テレビには佐藤栄作とリチャード・ニクソンの顔が映し出された。 

 テルアビブ空港乱射事件、日本人ついに海外進出を果たす。

 岡本公三はヒーローなのか?

 

 田中角栄が、自民党総裁に選出され首班指名を得た。  

 

 

ミュンヘン・オリンピックで、パレスチナゲリラが選手村・イスラエル宿舎を襲い殺害した。


 

 なかでも、田中首相の誕生は、マスコミが角栄を今太閤と持て囃し、空前の角栄ブームが起きた。
 著作の『日本列島改造論』はベストセラーになった。
 角栄は時代の寵児になったのである。

 

 田中政権の柱は、『日本列島改造』と『日中国交』であった。


 

 日本列島改造の主題は、

 明治維新から百年、今日の日本を支えてきた、

 農村から都市へ、農業から工業へ、そういった人と経済の流れを大転換させ、

 住みよい日本列島を実現させることにある。

 

 都市集中のメリットはデメリットに変わった。

 過疎と過密の弊害をなくし、国民が豊かに暮らすそのために。

 

 まず、

 

 ①新幹線・高速道路で日本中を結び、高速ネットワークを完成させ、

 日本列島を一日通勤、一日経済圏に再編する。

 

 ②大都市と地方の格差をなくすために、全国各地域を結ぶ情報ネットワークの整備をする。 

 

 ③利用技術と情報システムの積極的な開発、通信コストの合理化を図る。 

 

 この3つを柱として、情報列島に再編する。 
 そうすれば、都市と農村の格差は、必ずなくすことができる。

 

 その手始めに、新地方都市の理想像として、農村に産業を移し、25万人規模の都市を建設する。
 角栄は、いつも地方にこだわっている。
 それは、きっと角栄自身なのだろう。

 

 列島改造は激しい反撃にあった。
 特に産業界。地方移転の可能性のある大企業、関連する中小・下請けの企業群が反対したのである。

 

 なかでも、列島改造を阻んだ最大の敵は、土建屋・角栄の内なる敵、地価高騰だった。
 列島改造を当て込んだ輩は、土地獲得に狂い始めた。

 

 地価高騰は都市住民の住宅への夢を打ち砕き、角栄人気に陰りが点りだす。
 角栄の主張は正しかったのかもしれないが、その願いを叶えたとはいえなかった。
 

 

 

 毛沢東は、蒋介石を台湾に追い遣り、中華人民共和国を成立させた。
 毛沢東率いる共産軍は、兵力、装備において圧倒的劣勢にもかかわらず、

 蒋介石率いる国民党軍を打破した。

 これが、毛沢東の頂点だったのか。

 

 なぜ、正規軍が農民軍に破れるのか、ここに中国を解く一つの鍵があるだろう。

 一度はうまくいくかに見えた中国は、大躍進、文化大革命を通して鍍金が剥がれていき、

 そして、林彪事件が起きた。
 

 

 こうした時代を背景に、アメリカの影が忍び、

 田中政権のもう一つの柱、『日中国交』の動きは、首相就任直後に表された。


 

 角栄は日中国交を急ぎたいと漏らした。

 

 大平外相は、

「首相または外相の訪中」
 を示唆した。

 

これに対し中国側も、
「これを歓迎する」
 

サインを送った。


 

 就任2ヶ月後、
 角栄は大平外相、二階堂官房長官を伴い、北京の地を踏んだ。
 

 

 

北京空港には、周恩来首相ら中国要人が出迎え、角栄は周首相と歴史的な握手を交わした。

 

 角栄は外相、官房長官と共に周首相ら中国側と首脳会談に臨み、

 

『小異を残して大同につく』

 基本線が確認された。

 

 このあと、周首相主催歓迎晩餐会が行われ挨拶の中で田中・周、

 

 両首相はいずれも国交正常化への確信を表明した。

 その後、双方の事務レベルによる共同声明の案文作成に入った。 

 

 角栄は、北京市内中南海の私邸に毛沢東中国共産党主席を訪ね会見した。
 二人は、にこやかに話し合ったといわれている。

 

人民大会堂で、田中・周の両首脳により、

「日本国政府と中華人民共和国政府との共同声明」の調印式が行われた。

『日中国交正常化』は実現した。

 

その結果として、日台断交となった。
 なお、今日においても、日中両国の軋みは依然として残っている。
 



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