18
次の日、8時過ぎに病院の外来で静かに待っていた。
名前が呼ばれ、担当医と言葉を交わす。
「検査結果は良好です。
もうここに来られるのも最後ですね」
医師は数ある検査から、データや写真で詳しく説明してくれた。
「最後のお薬を1週間分だけ出しておきます。
体調に変化がありましたら、すぐに来てください、遠慮なく」
僕は、若い担当医に丁寧にお礼を述べると、会計を済ませ、
最後の薬を受け取り、思い出の詰まったこの病院を後にした。
バスでターミナルに向い、S署の彼女を訪ねた。
彼女にあいつの免許証に記載されていた住所の件について説明を加えるために。
すべてを正直に話した訳ではない。
あいつの父親や姉さんについては何も言わなかった。
それでも、彼女は納得してくれた。
あいつの行き先と時期をメモして、
もう一度、あいつに会いに行った。
あいつに、手を合わせ目を瞑った。
これで、良かったと。
家に戻りケイの帰りを待った。
ケイに検査結果が良好で病院通いが終ったことを伝えた。
「本当に、おめでとう。
でも、わたしにはあなたが無事なのは解かっていたの。
あなたに盛大なお祝いをしてあげる。
わたしは、あなたの子供を生みます。
これから、わたしたち夫婦は安心して子作りに励める、
子作りに励むということよ」
「失業中の夫と、学生妻の夫婦が?」
「そうよ!
お母さんと同居すれば何とでもなるのよ。
やはり、子供は若いうちに生むべきね。
あなたはそう思わないの?」
「5年待ってもらえないか?」
「待てません」
ケイのペースに乗せられ、ベッドで愛し合ったのは事故以来
これで2度目になった。
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