スペクタクル・・・6 | ブログ連載小説・幸田回生

ブログ連載小説・幸田回生

読み切りの小説を連載にしてみました。

よろしかった、読んでみてください。

 6

 

 絵里はいなかった。
 老人が窓際のベッドに一人佇んでいた。 
 和夫は東京から絵里を尋ねて来たことを告げた。

 

 老人は咳を切り、応えた。
「絵里子は近くの店に行っています。

 じきに戻りますから、ここで待っていなさい」

 

 彼は要一と美紀の三人で絵里の帰りを待つ。
 侘しい狭い空間で待ち続けた。
 間が持てなかった。

 

 彼はニコチンが切れていた。
 ここで吸うわけにはいかないだろうが。
 無言のうちに時が流れた。

 

 それにしても、狭い部屋だ。
 噎せるように彼は時間を待った。
 4つのベッドが無造作にならんでいる。

 

 老人は窓の外を見つめ、寝返りをうった。
 痩せ細った木々が見える。
 彼はこの老人に目をやった。
 白髪の老人の頬は、石原老人の語った疾病兵より窪んで見えた。


 

 老人はどんな人生を送ってきたのだろう。
 アメリカさんに追われていた人生。
 峠の神主に身を隠し、絵里と過ごした人生。
 老人はここを終の住みかにするのだろうか。


 

 ビニール袋を提げた絵里の姿に気づく。

 

 彼の時間は止まった。
 あの時の絵里だ。
 あの、雨の日の絵里だ。

 

『シェルブールの雨傘』の絵里だ。

 言葉がなかった。
 固まったままだ。

 絵里が彼に気づいた。

「お久しぶりですね!」

 

 懐かしい声の響きに彼は我にかえった。

 

 

 絵里は老人の世話を終えると、和夫と旅館に入った。

 和夫は言葉も掛けず、絵里を欲っした。
 彼と彼女は言葉を交わさなかった。

 

 彼は彼女の体だけをもとめた。 
 豊かな胸は健在だった。
 その胸を揉み解す。
 乳首を舐めて、甘く噛んで吸う。

 

 右の指先は陰毛に達した。
 膣に触れた。
 陰部に顔を埋める。
 匂いを嗅いだ。
 絵里の匂いを嗅いだ。
 絵里の匂いがする。

 

 あの絵里の匂いがする。
 あの懐かしい匂いがする。
 舌が柔らかい毛に絡んだ。
 彼はピンクの襞を吸った。
 舌を絡め美しい襞を吸い続ける。

 

 彼女は彼を受け入れた。
 ぬるぬるした液体を感じた。
 愛液を感じる。
 絵里の体液を感じた。
 なまめかしい愛液を感じる。

 

 彼は硬くなる。
 なお、いっそう硬くなる。
 奥まで入れた。
 ずっと奥まで入れる。

 

 そっと動いた。
 ゆっくり動く。
 ゆっくりゆっくり彼は動いた。
 徐々にペースをあげた。
 奥まで入れる。
 ずっと奥まで入れた。

 

 彼は激しく動く。
 ピストン運動を繰り返す。
 彼女の両手が背中に回り、足を絡め、腰をふる。

 

 声が漏れた。
 大きく声をあげる。
 彼女は大きく声をあげた。

 

 彼の液体が迸る。
 体液は巡る。
 彼女の体内を。

 

 彼は彼女の肉体に留まっている。
 彼女も動かない。
 彼と彼女は3年ぶりの余韻に浸っている。
 重なり合ったままの姿で。

 

 彼は耳元で囁いた。

「愛している。愛している。今でも絵里を愛している」


 

「すごい声がするわね、あの二人はまるで動物ね」 
 美紀が囁き、部屋は軋み、喘ぎが聴こえる。

 

「あら、始まった。今日はここで眠れるかしら」

 

 裸の彼は目覚めると同時に彼女の乳房を弄る。
 彼女が目覚めた。
 乳房を揉み、乳首を吸う。
 揉み解し、ピンクの乳輪を舐めた。

 

 彼は布団に潜る。
 指は割れ目を裂く。 
 襞を舐める。
 愛液を吸った。

 

 口が彼をとらえる。
 それを奥まで包み込む。
 後ろから彼は彼女を愛した。
 激しく強く愛した。

 

「愛している。愛している。今でも愛している」

 彼女は甘い声をあげる。

 

「愛している」
 

 

 彼らの儀式は今終わった。
 彼は煙を燻らせている。



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