「女の優しさと色っぽと雲助オジサンの恋と男らしさと」 | 色々、つれづれに時に女と男の事やらを、書いてます

色々、つれづれに時に女と男の事やらを、書いてます

色々、つれずれに書いてます が、
神経を ゆる~くして、つれずれに 読んでみて下されや
時に女と男の あんな話し、こんな話し いろいろにつれづれに
根っこには、読まれた方が元気になられたら 良かったね と!!
人間、元気が何より、 健康がなにより 、、

では、引き続き、のここからは短編小説となっております、長い、です

よろしければ、お付き合い下され、ませ

では、どうぞ・・ ここからです

 

 あれは・・
わたしが20代以前、そして以後、 と若い時分に勤めていた会社での 今回は実話、混じりで行かせてもらいましょう・・か


実話と言っても、もうほとんど忘れてもいますし、そのすべてを知ってる訳でもありません、から ほとんど想像も、脚色も入っています
でも、おおまかな人物像はこうですので、 また名前とか会社名とか地域名とか出て来たとしてもすべて想像の中での事、実在するそれらとは何ら関係もありません、のでよろしくお願い致します

 わたしは高校を卒業してすぐある運送会社へと就職、働き始めました、東京浅草界隈で・・
同じ様な同僚が10人前後も居りました、皆地方からの上京組みです 東北地方とか千葉とか茨城とか北海道もいたか


会社の近くにアパートを1軒まるまる借りて全員でそこで住んでいました
会社は我々含めの20人以上、30人近く居たのではないでしょうか 営業所ですから、そんなもんです


その当時、会社はかなり忙しい会社で、毎日毎日深夜まで全員が残業をしないと終わらない、始まりは9時からと少し遅いですが終り時間が遅いので皆ほとんど寝不足状態で頑張って居りましたねぇ


毎日、毎日の頑張りが要求されてる職場だと、いきおい息抜きは週末に、となりますよねぇ
わたしなんかはあまり当時からいわゆる夜の街へと出掛けて行くのは好きじゃなかったので、週末からの日曜日はほとんど寝てましたねぇ

(週末っても土曜日は普通に仕事、毎週が、休みはカレンダー通り)


その内には当時好きだったのでオートバイ、中古のやつを買いました 250ccの結構大きいやつです
買った当時はガンガン乗ってました、 日曜日しか休みはないので一人で都内のどこかを必ず走っておりました


たまに会社の同僚に走ってる所を見られたり、 「おまえオートレースの選手になれよ」、などとよく言われたりしてました
信号で止まってると青になった瞬間に競走の様にスタートして先頭切ってすっ飛ばしていたのがオートレースをイメージさせてんだろうなぁと思ったりしてました

入社当時はすぐには運転なんてさせてもらえません、からまずは助手からのスタートでした
誰か特定の人と組んだり、その日、その日で違う人と組んだり、仕事の内容次第で色々です
多人数が居ると、人それぞれに特徴があります

あれは・・
この会社でも、かなり の古参 たぶん現場勤務組では一番って言っていいくらい 最古参に属する勤続の長いおじさん、が居りました


仮に例えばAさんとしときますか  FやO さんだったら例えば福島とか、大林とか、変に推測を働かせる人も出て来るやも知れません、ので Aさん、 っても阿部や秋山とかじゃありません、ただのまっ
たく仮につけただけのAさん、です


Aさんは中肉、中背、 年の頃ならその当時で30代後半~40代前くらいだったでしょうか、二十歳前の若い人からみたらかなりの大先輩でもあります


性格は穏やかで、先輩風吹かせる事もなく、威張る事もなく、いつも静かな笑顔を浮かべている、不平、不満など言ってる姿なんぞ一度たりとも見たこともない、そんな感じの極めて温厚な模範的社員さんなのでした


そんな温厚おじさんとも、よく組まされて色々な取引先さんへと仕事で回りました、何なら一番多く組んだかも知れません、くらいです
大人しくて、真面目で、勤務にも穴を開ける事無く、 大人しいからと、時に後輩あたりからバカにしてる様な事を言われたり、

 

言われてる時でもけっして言い返したりも怒る事も無く、 ヘラヘラ・へへへ  と笑っている、笑顔を浮かべてる、ばかりでけっして何か、を発言したり、言い返したりする事も怒る事も無かった、ですねぇ

どんな業界であったとしても、よくある事なんですが
その業界、業界で仕事のしやすい、し難い 取引相手、とか お客さん ってのはあるもんですよねぇ


あそこへ行くと仕事を済ますまでの時間が掛かってしょうがないから 嫌だ、行きたく無い、から黙ってパスして、誰か他の人にやらせてしまう様に要領よく動く、あるいは誰かに直接押しつけたり、とかのやり取りって良くあるもんです


いつも自分が利する様に動き、立ち居振舞って得をする様に動く、人 逆にそういう事とは関心なくゆったりと構えていて、いつしか損をしている 気が付いたら押し付けられている

そういうある意味、見えない力関係が働いたり、 要領の悪い人はいつも、損な立ち回りばかりをやっていたり などはどこの職場へ行ったとしても、あるものです


この会社でも、まさにそんなある意味損な立ち回りばかりを受け持っていたのが、このおじさん、Aさんなのでした それでもヘラヘラ、エヘへと笑って居る、そういう人でした


ひとから嫌だと思われている、やりたくない仕事を押し付けられたとしても、ただ静かに何も言わず、淡々とこなして行く、のでした
その当時でたぶん30代後半あたり、で独身 けっしてすばしっこさの微塵も感じられないおっとりとした見た感じも、髭面の しかも髭のいかにもの濃い、鼻、口、周り、頬周りが真っ黒と言ったいかにもの
おっさん、風を醸し出して、も居る そういう人なのでした


それで上記した様な、ひとに何か言われたとしてもけっして言い返したりしない、ただ静かにへへへと笑って居る、だけと
なので、後輩らも普段から馬鹿にした様にして接している、見ている、そんな様な状況でしたねぇ


上の人らは、仕事は一番古いくらいだから、仕事は出来る、間違いが無い、人当たりがいい、従順に言うことも、ある程度の無理でも聞いてくれるし、で非常に使い勝手の良い、便利な存在でもあったのでした ねぇ


自分が受け持っている集配とかが一応終わるとそれで安心してとりあえずはゆっくり社内の食堂で寛ぎながら夕飯とか食べたり、それぞれにそれぞれが好みの時間帯で気持ちをゆるめてゆったりしてる、そんな時間帯でも顧客からの急な集荷とかのオーダーが急に入ったりもする、

 

そんな時でもすぐお声が掛かるのが間違いなく彼、なのでした 彼だって食事の時ぐらいもっとゆっくりしていたい、の思いは腹にあるはずだから言われて、声を掛けられたからと言ってもすぐには動きたがらないですよ


そういう時に あ~、やっぱり本当は行きたく無いんだな、と そういうこころの中まで想像できる人であればすぐ分かるのですが、そんな注文をつけてくる上の人たちはそんな忖度(そんたく)まで考えてや
っていたら自分の仕事にならないですから、そんなのむしろ分からない、 分かっていても分からない振りして半ば強制的の姿勢で、そんな気持ちが声にも出ている感じで押し付けてきます


そんな時でも彼は嫌だ、の気持ちが、すぐのどの所には持ってるんだろうな、な感じでも、へへへみたいな薄笑いを浮かべつ、ノソっと動き出して行きます、 きっと食事の後の食休み、くらいは楽しみたいはず、ですが


オーダーは一人だけなのでその場に居る他の人達にもそれは聞こえて、聞いていても、当然のごとくに俺には関係ない、的な雰囲気で無表情なままに黙々と食べてます、寛いでいます


見て、そんな風に捉えてるのも、考えているのも、たぶんわたし一人だけ、だったでしょう ねぇ
わたしは人のこころの動きは割りと分かる方だったのでその当時はそんな風にして感じ取っても、いました


彼ひとりで行く訳ではないので、助手も一緒にとオーダーされる訳です、一番この人と組んで仕事してるのは、たぶん わたし、ですのでこっちにも話しが来るかなと注目して見てると、例のへへへ、ヘラヘラした表情で俺の方を一瞥しつつ目で訴えて来ます、たぶん彼にはわたしも余計な事言わなくても、すぐ理解して着いて来てくれる、言う事を聞いてくれる、使いやすい存在だったろうと


この人の性格が分かっているからネガティブ発言したら可哀想でもあるのでわたしも割と何も言わずに従っておりました
だからと言っても、トラックの中で二人っきりになったとしても、特に話がはずむわけでも無かったですが 向こうもあまり余計な事はしゃべらない人、だしこっちも同じく、余計な事はしゃべらない、むしろ
黙っている方が好き、だったので こころの中ではあらゆる事を理解しながら、出来ながら・・も、ね


だから、自分も行くのが嫌だからと下を向いたままに、彼と目を合わせない様にしていたなら、その時に
 そしたら彼は誰にも声を掛ける事無く、一人で急なオーダーな集荷へと向かって行ったでしょう 俺だって皆と同じ様に食事と少しの寛ぎを味わって居たいと、素直なこころには思います、けどそうする事は彼に可哀想過ぎて、それはわたしには出来ない、でした  ねぇ

そんな感じで、よく言えば性格がおっとりしていて、間違いが無い、まじめ、温厚、 悪く言えばクソ真面目、自分のスタイルが変えられない、融通が利かない、おっとりし過ぎていて面白みも何も無い人、のろま、何事に対してもすばしっこさがない、見た目もいかにものおじさん、だし となるでしょうか


そんな、彼が ある時期から徐々に、徐々に・・ と変化して来るのでした
そんな変化のきっかけ、 一番最初、 の原点、はたぶんこうなんじゃないかな とわたしがその当時で感じたなりにこれから描いて行こうと思っています


ある意味、人は幾つになっても変れる、変る事が出来る、 という意味合いでもとても重要、なのではないでしょう か

が、これは多分にわたし個人の見解、私情も、想像も脚色も入ってる、ものとしてお読み頂きたいと思います
結果はわかっているので、身近で見て来た身として始まりから、そしてその後を想像も交えて描いていきたいと思います

 今日は土曜日、いつもの様にいそがしく、週末だからと言っても世間は、取引先さんは全然手を緩めてはくれないのでした むしろ休日が入る分もまとめて出されてたり(集荷・発送の荷物)もするのでいつもの様にと忙しく連日、深夜までと及んでおりました それから慌てて風呂に入ったりして皆は急いで夜の街へと各々に消えて行くのでした


例のおじさんも同僚からの「たまには一緒に飲みに行こうぜ~、 ええっ、Aさんよぉ~!」との声で何度も誘われて居るし、何度も断っても来てるしで、たまにはいいかとある日はこころ変って誘われるまま
に一緒に飲みにも出掛けて行く様にもなって行くのでした


根が飲め無い人じゃないので、例の へへへ、ニヤニヤとした薄く笑った笑顔を浮かべながら、いかにもの着慣れていなさそうな余所行きの衣装に着替えて


そして、自身が飲め無い訳じゃないから、それは徐々にと出掛ける回数も増えて行くのでした
皆に連れられて、ハシゴして、あちこちの店をフラフラしている内に その内には馴染みの店も出来てきたりもして来ます


そして、飲みに行く回数も増えて行くに従って他の人と群れて行くのでなく、一人でと行く様にもなって来ます
それは、自分好みの店へは一人で行って、自分の都合で飲み、その時の自分の気分でまったりしたりして
楽しみたい、 し帰りの時間は自分で決めて、自分のペースでと飲みたい、からでした

 

それはごく当然の成り行きなのでしょう もともと群れるのがあまり好きじゃ無い人にすれば
こうやって、この人らしい自我、自己、自分 を主張する気持ちが、 このおじさんにも、徐々にも芽生えても、 来たのでした


今までは、あんなに・・も 他人の言いなりで、自己主張する事など一切無かった人だったのに、いったいどうしちゃった・・の、でしょう  か


わたしにすれば、 人間 って、一様でない、から面白い・・のですが
ですが・・、 今まで自分たちとつるんで一緒に行動していた従順な男が、ある日 気がついたら居なくなってた

 

「あっれぇ~・・・? あいつ、どうしたぁ?」

年上であっても大人しいからと下に見ていた、飲み屋などに関しては俺の方が上だと上から目線で接して来た、割と考えが単純にしか考えられない連中、自分がメイン・・な連中らは、そうなるとすぐに敵視した考えとなって言葉も攻撃的にとなったりする連中も居たり、して 腹に不満を抱えつつ見る様にもなって、も来たり

「あらぁ~! 今日は一人、なの?」 「う・うぅ・ん・・」
「そぉ~! 他の人たちは? 一緒じゃなかったの?」  最初の内は店のおかみにも、こう聞かれていました・・ が、もう一人が2回目、3回目となって行けば 店の方もこの質問は野暮だと分かってきます もう、しません


「あら、いらっしゃい! いつもので、いいの?」  と、こうなってきます そうしたら、変な質問もされなくなって来ますし、余計に居心地、行き心地が良くなっても来ます  から勢いづいて、も来ます、行きます


いつもだったら多人数とハシゴもしてから、もっと遅い時間にと行っていたのが、もう早い時間から来てもくれてますし、自然と他所へは寄らずに、まずは此処へと来てくれたのだとも分かっても来ます 余計
に嬉しくなって、より一層に愛想も良くなって たまには料理の一品もおまけしてくれたり、もして 向こうも良くなれば、こちらもより一層にと嬉しく成って、より一層に居心地の良い店へとなっていくのでした

「あれぇ・・、Aちゃんもう来てたんだぁ~! 何ぃ・・、一人で来たんかいねぇ、俺達を置いて・・」 などともたまには言われたりも、して そして「エヘ、エヘヘ!」 と薄笑いの愛想わらいも浮かべて、ヘラヘラしてそっち見たり、下向いたりソワソワと所在無げにしつつスルーするのみ

最初の頃こそ、この店へは皆に連れられて、何軒目かのハシゴのうちのひとつの店として来ていたのですが、何回か来ている内に気に入ってしまったのでした、 この店の料理にも、そしてこの店の主人 おかみにも


それはちょっとした小料理屋で飲ん兵衛が好む様な一品料理が多種類ある、そしてお酒と、がそして、の
店のおかみさんがちょいとした美人・・ と、言うほどでも無いがやはり店をやるくらいだから人から好かれる様な愛想のいい、そして料理も美味しい、

 

座敷テーブル席が奥に2つ、あとはカウンター席で10人も座れればある程度一杯、となってしまう 様な そんな広くなく、狭い空間が逆にいい、落ち着いて飲める、そんな雰囲気の店なのでした


何回か通っている内に話しの流れで同県人だと分かり、一層お互いの距離が加速したのでした
「あんた前浜の?」 「う・うん・・」 「わたしは後浜の、よ お隣同士でねぇか、ねぇ~! きゃはぁ・はぁ~!」 「う・だなぁ~!」 

 

「ハハハ ァ~! あんた、年はいくつねぇ?」「う・うぅん・・ 37、 だ」 「あん・ら そうかいねぇ・・! じゃ、わたしよりは少し、あんたの方が、 はっ! 若いわぁ・はぁ~っ! あんらぁ、嫌だわぁ~! キャッキャァ そうかいねぇ!?」


「わたしは40になってしもうた、し ついこの間、ねぇ・・ 今までは30代とまだ言えてたのが、もう~ 言えんがねぇ~! ほうかい、ねぇ~! あんたの方がわたしはいくつかわたしの方が若い、のかな・・って思ってた・んだぁっ キャッ ハッハハハァ~!」
「何だぁ、 そっかいねぇ~ぇぇ・・!」 「わたしは人を見る目は確かだと、思ってたども、そっかい、ねぇ~ぇぇ・・! キャッァ、ハァ~! もう~・・、 いん やぁだぁ・わぁ~!」


「そっかい、そっかい・・、 あんた、も 苦労してるみたいだねぇ~、 ここへ初めて来た時から、 はぁ・・ わたしは思っていたんだぁ、 こん人は苦労を溜め込むタイプの人だなぁ・・と、 皆からも受けがあまり・・ みたいだしぃ・・、 ねぇ」
そんなセリフを聞きながら ただいつもの様に エへ、エヘヘ・・と薄笑いを浮かべながら何か言うでもなく静かに聞いている、のみ  なのでした


そんな様子から、さらに質問は続いた 「あなた、あの会社にもう何年勤めてると・・ な?」
「う・・ ん・・ もう十年以上・・ には、なるか・なぁ・・ うん」
「そうねぇ~・・ 、ん・だろうとわたしも思っとったよぉ~ 」

 

(この思っとった、の中にはその割には・・ の思いも入っていた、あんたの後輩みたいな若い人らもあんたの事を言いたい様に言ってるのも実際に見て、聞いて知って、る、し

 

が、この言葉は言わずに飲み込んだ さすがにそこまでお客さんを追い込んだ物言い、は・・   と のブレーキがかかった  な、ままに、続けた・・)


「この間ぁ~、あんたがまだ来る前にちょこっとだけ寄ってくれた子らが居たんさぁ~・・  あんたが一緒じゃなかったから、つい聞いてみて、言葉がつい出ちゃったぁ、 さぁ~・・」


「したら・・ ペラペラ、ペラペラと聞いてない事まで軽口叩いてたぁ・あ~さぁ~ ねぇ、大先輩に対して、あんたそこまで言うかねぇ  って、ちょっと聞いてて イッラァッ! って来ちゃったぁ~さぁ~、 ねぇ~・・」


「先輩として世話になった事もあったろうに・・ ねぇ~! そこまで言わんでもってちょっと思ったぁ・・  さぁ・・ から さ」
「わたしもぉぅ~・・ つい、負けん気が強いきぃ~にぃ~ ・・ なぁ

真面目に、静かに生きてる・・  あんたが、 事

可哀想に、も、ちょっと思えて・・  なぁ~」


「その時、何か言い返してやろうかと・・も 思ったども・・ なぁ~

こっちも客商売やろぉぅ・・  よう・言い返せんだった・・  あん時、 やっぱり言ってやってた方が良かったんやろか・・  とも、あんたの事こうして見てると・・ 思っても しまう

 

けど、余計な話し・・やろ! 女のわたしに助けられんでも、 返って男のあんたん事わたしまでもが、軽く見てるって事に、なるかって ごめんな、の意味も込めて今わざわざ言うたんやけど・・  なぁ」

・・・と、もう大分長居もしていて遅い時間となっても居た 客はこの男一人となって、も居たので、割とモードが二人だけモードともなっていった

「そこまで、自分の事を気遣って、気に掛けて居て、もらえてる

・・・ 、のかとの思いと、 それが、そうと分かった事の驚きと、 このままじゃ・・ ぁ、居られない、との思いとが一緒に  ガッ~ ッ! とやって来た

いつもおっとりとしか、動いた事のない ある意味、鈍いこころにも 瞬間にもやって来、響いた


 「う・うぅぅん・ん・・・・」 と相手を、ただ無言で見つめ返し
そして、おかみも 静かに見つめ返す・・ の、だった

そうして、この後も 何度となく、男は足繁くこの店へと通った もうそれは 定期便だった
毎週末となるともう必ず、それはいそいそと もうこの店ただ一ヶ所、他の店には一切、もう行く事もなくなって、ただただ・・  と通った

 

だから今度はその事で同僚たちは噂をし、言葉で囃し、遊んで
時に・は うす汚い、口の悪い物言いでも 囃し立てる 同僚もいたり して、それは、やはり若い、だけが取り柄の口さがない、自嘲する気も心もない、若いからと、単なる無知さ加減から怖いものの無い、


そんなただ軽口を叩いてるくらいにしか本人的には受け止めてない、受け止める事しか出来ない思慮も何も無い 己らの馬鹿さ加減を体現してるだけの物言いでしかないのだった


が、時にはそんな馬鹿な物言いに引き連られ、てしまう輩もこの世の中には少なくなく居たりもする、往々にしてそれら、物事の表面でしか捉えることの出来ない、考えることの出来ない、そういう人たちはこの世の中には大勢居る、し それらはどんな所であっても大概が多数派なのだった


だから、今までこれと言って反応して来なかった人たち、同僚たちまでもがこの男の事を馬鹿にする様に、もなって行った   のは何ともこの会社の人達の何ともレベルの低さ・・をある意味、表しても い
る・のか  と嘆くしか、ない の、だった

そんな、こんな があった
ある日・・
「いいから、そんな・こんなは気にしないで、 今日は何もかんも忘れて、飲んでぇ・・・ ! ねっ!


 こっからのはわたしからの今日はお近づきの印の、わたしのおごりでいいから、 ねっ!

何も気にせんでぇ・・  ええ!!」
「さっ! お食べ、うん、 おごりだから、気にせんでええから

さっ・・ お酒も温かいのに替えてあげるから、 まだまだお銚子漬けてあるから さっ グイッとおやりぃ なぁ」


男は、すっかりと無口になってしまっていた もう、おかみとの 目を合わせる事もなくそんな男に、と 気にやる、でもなく 普通にと 声を掛ける  さ、も何も気づいて 居ませんよぉ~! オーラを全開にして
「あんたの好きなゆで卵、ほら・・ 大根と、 うん、あんたちくわぶも好きよね はいはいっ!」


「遠慮せんでええから、 ねっ! 今、巾着も取ってあげるからねっ、 これ食べて力着けてぇ また、明日から元気で働くんだよっ!
うん、男は元気で仕事してなきゃぁ・・ 男じゃぁ ないぞぉ!

 

せい!せい! 頑張れぇ!」 と言いながら最後に巾着が入ったお椀をカウンター越しにそばに置きながら そのまま伸ばした手で バン!   と肩を叩いて元気付けてくれるのだった

元気が無いのが見え見えなのだろう と、それにここへ初めて来た時からそんな風に思われていたなんて・・ とも、両方でも恥ずかしく て、おかみの顔が見れないのだった

 

それに、こんなにも言われて、心配もしてくれてて、気を使ってくれても居て 嬉しくって、ももうしょうがないのだった  ぁぁ・・ 思わず即、涙が出そうになって、も来るのだった、がこんな所で涙を流す訳にもいかない、男だし、プライドはある

そんな風に励まされてもただ下を向いたままに いた
目頭が濡れ、ポタリと涙がこぼれそうにもなってる自分をごまかす意味でも、注がれた一杯の盃の酒をわざと音を立てて ズズ・・  っと飲み干すのだった
そんな様子を見るでもなくおかみはそっと手にもったままに置いてある盃にとまたお酒を  黙ったままに注ぐのだった

ジッと下をむいたままに動けないで居る、そんな男に無理には声をかけない  ただ静かにカウンターのこっちから見守った

そばではとろ火に掛けられているおでんの鍋が美味しそうにグツグツと、静かに、優しく、出しゃばらないで  ほう~ら、もっと食べてよ、まだまだたくさん ある・からねぇ  とお出汁の効いた煮汁の、
 い~い匂いと音を 温かい、そしてやさしい湯気もしっとりと そんな二人だけの空間に漂いままに 誘って  いる


静かに あたたかくやさしい空間となって おかみの眼差しとも相まって 二人しか居ないせまい空間を演出して  いた

そんな所へとおかみが前もって予約プログラムで入れて置いたカラオケの音楽が、 何故か、その時すぐに掛からず、 にかなり時間遅れて 今、掛かるのだった

自動演奏の複数オーダープログラムが最後の1個だけ中途半端なまま宙ぶらりんとなっていたのが今になってかなりの時間差が空いて後やっと今つながった  の、 か


歌のない、伴奏だけの音楽が 音量も控えめに静かにと流れ始めた  毎度、お馴染みの  あ・の 伴奏が
♪♪ラララララ・ ♪♪ララララァ~ 

 

そして、たちまち演歌の世界の様な空間となり 涙あり、お酒あり、人情あり そして少しの 切なさ と・・  で
 二人だけの空間は 満たされ・・  て  いった


男は相変らずピクリとも動けないで居た

頭(こうべ)を垂れたままに  女も相変らず・・に そのままにそばを離れようとは し・ない そばでやさしい眼差しなままに
そして、ややあってから音楽に合わせて静かに・と 口ずさみ、 始め・・  た

「  ♪♪ お酒はぬるめの燗がいい ・ ・ ・ ♪♪ 」


それはまるで 男には子守唄 な様にも心地よく こころの内、内へ・・ うつ向いたままに温かい太陽の温もりがごとくに沁みて、 も来る、の、だった


それでも、とにかく男はその場では、涙を流す事だけは こらえ・た いつまでも下を向いたままに ちょっと気を許せば、もう・・ 大泣きをする所まで、感情は来て、いた、  が堪えた
こんな男でもプライドは  ある、から まだ泣けない、のだった

 

ただ、女にすれば、それはちっちゃい、プライドでしか、ないのだったが  男には何故かこだわってしまう、そんなマインドが古の  太古の昔から持たされて いた
それが、はたして いい事、なのか? 悪い事なのか・・?  は・・ お互いにしか分からない

こうしてますます・に  男はこの店に、 このおかみに と入れ揚げて行った
もう、誰が何を言っても、言われても、噂されても、暴言を放たれても、関係無いのだった


こうして、おかみに会う時間が増えるがごとに、この男もますます に変身して行った
自我を持ち、プライドを持ち、生きがいを見出して真正面からちゃんと自分の事を見つめ直し
  て


こんなにも、温かく自分の事を照らしてくれるおかみの前で、二度と自分の事を恥ずかしいと思わないでも済む様に と、気を張って、頑張る事をこころにひそかに、誓ったのだ   から


こうして、男は その風貌に合った様な   いかつい髭面の、

パッと見のいいシュッとしたいい顔とは反対側にある、その風貌に似合った男へと少しずつ変身して行ったのだった


自信なく、ヘラヘラしいつも薄笑いを浮かべて周りに迎合して、わたしはあなたの敵ではありませんよ・・ オーラをいつも醸し出している(気を使っている)様な仕種(しぐさ)を止めた


そんな一歩目を踏み出す事は彼にはとても勇気が要る事だった はず、  だがそれでも彼なりに頑張った、 少しずつ と
頑張って、そうしなきゃ・・ ぁ もう自分の中には出来てある、新しく生まれた 新生の自分像に怒られてしまう、から 新しい自分の中の底の精神には、もうすでに変身なった、強くなった自分が 自画像
がすでに住んであったのだ から


その自分に今までと同じ事をやっていたら  それは違う! と怒られてしまうのだ もう頑張って、その自画像に沿ってそれに近づいて行く、 もう彼にはそんな気持ちしか 無い のだった


それは日々に、と 彼を見る度に変わって行った、 分かる人には分かる、その言葉の使い方も、間の取り方も、早さも、 そして一番変わったなぁ、と思えるのは話している時の態度がもう、目が泳がなくなった事、 か


もう二度とヘラヘラとしなくなった まだ人と話す時に瞬間気弱になりそうな表情を一瞬だけ、見せる時があったりしてる、  がそれも、一瞬でももう許されないのだから、自分の中で

そして、おかみの店には相変らず、に毎週末にと行っていた、勿論、他の店になんか寄らない、同僚らの話題になってる、若い女子が居る様なそういう店には関心も無いし、彼には無駄でしかない
彼にはそういういわゆる助平ごころで飲みに行ってるのではなかった、おかみの人と接する時の温かさが、いいのだった


そして、そんな変化は店でしか見てないおかみにもすぐに分かるのだった 長年この商売もやって来た、大勢の人間にも接して、見ても来た ある意味、人間の欲望を満たす、 欲望が出る、 欲望と接する商売でもある


そうと分かっていても、でもべつに知らんぷりをしていた まだ彼には今は言う時期じゃないと思っていたから
男の方も、まだ それと触れてほしくはなかった
だってまだまだ、もっと、もっとと変われる自信が彼にはあった、から まだまだ今は入り口、まだそんな変化している自分像の外郭にしか来ていない、 のだと  もっと、もっと、もっとと強くなって、中身がもっと詰め込まれてからと その時が来てから と


そうやって、いつものこの店へとやって来ては、おかみのいつも自分を温かく迎えてくれる笑顔に、ちょっとした会話に出会えるのが唯一の楽しみとなっていた

そうして、ここへ来た時には一瞬の笑顔を浮かべる、このおかみに会えるのが、少しだけど会話出来る事が嬉しいから、会社で居る時の様に気を張って難しい顔なままで、ムスッとしたままでは居られようはずが無いのだ から


それに、気を抜くのが、リラックスするのが、出来るのがここへ来る最大の理由なのだ、から
行くと、いつもの入ってすぐの右側の隅の方、カウンターのあまり目だたない席に座る 他が空いていても それはいつも変わらなかった 

 

おかみが笑顔で 「こっち空いてるから、もっとこっち座ってもいいわよ」 と言ってみても それは一人で初めて行った時から変わらなかった もはやその場所が定番の席となってしまって一番落ち着く場所なのだ った、から


誰もが来たらすぐ座るだろう入り口とその近辺の席には決して座ろうとはしないのだった 強く生きると決めてはいても、まだ世間的には、そこまで強気には、まだ成れていないのだろう

そんな、内に秘めてあるのだろう気持ちが 見る人が見ればすぐに分かる、まだそんな状態では、あった


だから一応そうと言って見るが無理には勧めないのだった そんな風にやんわりと気持ちを察してくれて いい様 にしてくれる、そんな気使いも感覚的に分かって安心感を与えるのだろう


いかにもの、日本のお母さん、和服を着て、割烹着、白い袖口の閉じてある、腕周りが膨らんだ、昭和な時代までのいわゆるお母さんスタイルでいつも迎えてくれていた
言うほど、の美人じゃないにしても、ちょっと見、美人な よく見ると普通な、庶民的な、そこがまた安心感を、人当たりの良さにとつながっているのだろう

おしゃべりで人の気持ちの中へずかずかと入って来るでもない、会話はするが出しゃばらない、控えめなその様子もこの男が心地良くて、ここで安心したひと時を過ごせる要因にもなっている
                                               
そして、の・・・


「あら、いらっしゃい! こっち席空いてるわよ」

「う・うん・・、こっちで・・」
「外はもう少し寒いでしょ! いつものお酒、お燗してあるわよ、でもまずはビールからいくの・・ よ、ねぇ?」

「う・うん・・ビールで」と言いながらいつものその場所へと腰を落ち着けた


そして寒くてもよく冷えた大瓶のビールと一皿の、その季節らしいちょっとしたおつまみと、をすぐに出してくれて 「はい!、今日もお疲れ様でした!」と目をちゃんと見ながら相手の在り様を即、うかがいつのビールを注いでくれる


あまり話したくない様子だったら、その様に 話しかけても良さそうなら相手の気をうかがいつつ控えめに会話をして 決して過ぎない様に、と あくまでもお客さんの寛いでもらえる様に、料理を美味しく楽しんで頂ける様に そんな気持ちが見る側からも分かるのだった


和服を着て、割烹着を着て、静かに一心に働く、そんな楚々とした姿にちょっと見、美人なおかみがお客に好かれない訳がない 少なくてもこの男は、すぐに好きになってしまっても 居た


が、そんな気持ちはすぐに出す訳はない その代わり、足繁く通うようにとなって行く、会える事が嬉しいから、少しの会話を交わす事が楽しい、から
そんなこころ温かく接してくれる、おかみさんに会いたいから、言葉交わしたい、から

やっと出会えたそんな雰囲気を持った女性、 への憧れも有るからこそ 今ある自分から変ってもっとこの女性に相応しい、 とりあえずはそう成りたい  そういう気持ちがこれまで生きて来て 初めて自分の中に、 と生まれた、 の、だから

もう薄笑いの曖昧な表情を浮かべるのはこのおかみの前でも止めていた でも、やはりいつものその隅の席へ、と今は甘んじて 居る、

それは今現在の自分の在る、世間での立ち位置でもあった、から そう自分では認識していた


そんな彼の以前の様な半笑いの様な、いかにもの自信の無さそうな、気弱な、あいまいな笑顔はしなくなった彼に
「いつものビールでいい?、 かしら・・?」 「ううん・・」

いつもだったら半笑いの笑顔を浮かべながら返事をしていた、 見ていた 今は 無い


彼のペースに合わせて、何も言わないでも頃合を見ながら と出して料理を、お酒をその絶妙な調子の良さに  も、この店が いい、と思わせている、その部分なのだろう、それも言葉を必要とそれほどしなくても いい様に数時間を、と過ごさせて もしてくれる


時におかみが勧めてくれるメニューがそんな隙間にと入り込む もっとお野菜を・・とほうれん草と胡麻のお浸しはもう定番中の定番

筑前煮やら、にんじん、大豆、や こんにゃくのひじき煮、など
彼も子供の頃から普通に食べて来ていた味なので嬉しくもあり、懐かしい味でもあった


がっつりと量も食べられる もやしレモンのモヤシ多めにして、ガッシ、ガッシと食べ 量もたちまち減って行くそんな食べている姿も楽しそうにと、彼女の甲高い声がせまい店中に今日も 響く・・


「わぁ~! 嬉しいわぁ~ そんなに食べてもらえて、あんた、ほんとに作り甲斐のある人やぁわぁ~! 嬉しいわぁ~ 美味しい!?」

「うん、うまい、うまい・・」、とこの店でしか見せないこぼれんばかりの笑顔で 目もなくなってしまって答える


バリバリ、モグモグ・・と 「ひゃぁふぁ~・・ あんなに、大皿に山と盛ったのにぃ~!、 もう~・・すぐに、ペロリとたいらげちゃってぇ~! 嬉しいわぁ~!、ほんとにぃ~ あんたにはただでも作って上げたいくらいやわぁ~!! キャッ・ハァァ~ う~~んん・・!!」


自分はただうまい、うまいと食ってるだけなのに・・  と、こんな風にして喜んでもくれている彼女の事がますますに好きになってもしまう


それまでは  ただ生きて、 息をして、 腹が減る からそこにある物をただ 食べる、だけ ただ 食べて働いているだけ な生活だった

それで何の支障もなかった、感じなかった、しそれで何の不足も感じなかった・・
 と言ったら言い過ぎかも知れないが まあ、そんなもんだった のだ、これまでの生活は

それまでと同じ様に、
何もしなければ、何も起こらない、 し平々凡々としてそれでも暮らして行けただろう、 自分を抑えて生きている・・、  とも気がつかずに・・  も


でも、もう・・  彼女の存在が少しずつ、と自分の生活の中にと入り込んで来て、 そしてだんだんと広がって、行った
そして初めて今までの自分のそれまでの生活が・・  味気の・無い ただ生きている、 ってだけの生活だった  と30年以上、40年近く、 も生きて来て、初めて知る事が出来た のだ


知ってしまった今では、もう・・ 後戻りは出来ない、 それはもう絶対に 出来ない、しする気も もう勿論、無いのだ から


「どう・・? このお酒も美味しいでしょぅ? だって故郷のお酒なんだもんまずい訳がないわょ~ ねぇ~」、と言いながら日本酒のラベルも見せてくる

「ええっ、何ぃ~・・!、 名前が、 あ・・ ある、ことは ある・・ ?」

「うん、そうよぉ~ ある、ことは ある  ない、ことも ない」
「えっ・・へぇぇ~・・!」

 

「うん、変ってるでしょ、でもこれも古里の だから、ねっ!」
「ふ~ん・・」 「美味しいでしょっ!」

「うん・・、うまい、うまけりゃいいか、何でも、名前なんか」

「そうそう、そうよ・ぉ・」 

「ソダ・ねぇ~!」(カーリング女子のまね) と軽い冗談も言える様に、もなっていた


「あんたこの頃、よく ソダ・ねぇ~ って言うようになったわよねぇ?」 「う・ぅん、 そうかい? う~・・ ま、いいか・・!」
「じゃぁ、そろそろお愛想してもらうかな」

「あらぁ、月末にまとめてでもいいわよ、 でもどっちでもいいけど、 どうする?」


「う・・ん、ん・・、じゃそうしてもらう、か・・ な、

あ、でもまとまっちゃうと額が大きくなっちゃうから・・ 

やっぱり、いいや、その都度払います、借金もあまり好きじゃない、し」


「そぅ~お、じゃ、え~と3300、いえ3000円でいいわ、お釣りが無い方がお互い楽だもんね、 お・ま・け・・! さっ 外は寒いから、前もちゃんと閉じた方がいいわよ」 といいながら薄手のブルゾンのジッパーを合わせてくれる、そんな当たりも柔らかい仕草からも女性を感じて一瞬でこころに刺さってくる


お金を手に取り出しながら、そんなおかみの手に自然と目が行く

肌の肌理(きめ)の細かい、見るからに綺麗な女の人らしい手が・・ 指の細い長い、女性らしい華奢な白い手が瞬間に、も目に飛び込んで来て

 

ウッ ・ ツクシ ・ イ!(美しい!) と、お金を握った手が中空で一瞬にして止まってしまうのだった
ちょっと前かがみになってジッパーを閉じてくれているそんな柔らかい雰囲気の、そしておかみの髪を後ろでまとめ上げた髪留めのすっきりとこざっぱり清々しい様子といくつかの短い後れ毛の細いうなじ との有り様 ・・ が目に飛び込んで来た

 

大人の女性の醸し出して ある魅力と甘やかな色っぽさと、に瞬間にも引き込まれそう ・・ に、 な空気に   もう この年になって、 も初めて 接し・・  た  しかも、 こんな・・  にも、  の間近、で

女性らしい・・ ほのか・ にも 香 り 来て  る  し

 

すぐに、気持ちが フッワァ~・・ っとなってしまい  来 ・ た

焦点も合わなくなりそうな、 グイグイ動いている内なる感情
目をパチクリ・・  と、突っ立って・・ る しか、なかった


おかみにすれば、気がついた、から普通に、した ただの行為、 でしかなかった、 が・・
男にとって見れば、今まで一瞬たりとも感じた事も無かった ひとからのやさしい、気持ちを含んだこんな自分に対する・・だ、 こんな見た目、も悪い、 雲助みたいな

 

(と、自分でも思っている、その顔、風貌で)、  な、の、に

こんな俺に対しても、こんな・・ やさしく 自然に 平等に、 振舞ってくれている  んだ・ぁ・・ と、感動も、してしまうのだった

 

それほどにひと様からのやさしさ、や 気使ってもらえる、俺の事も同じに考えてくれる、入れてくれている そんな・・ それだけでも
それは瞬間にも味わった事も無い事だった、のだ

 

そして・・の、おかみの 女の持つ自然な色っぽさ ・ に、も

やら ・ れ ・ まくって ・ ・  った、から ・ ・

瞬間フリーズして、も ・ ・  しまって居る のだった、

 

が、おかみのやさしい、ひとをふんわり包んでくれる様な、その仕草や、気持ちの在り様も表に出ている、その表情のやわらかい明るさ、 も有って固まってしまっている男に目を移した瞬間にも、もう ・・ 

ほぐれて、  行く


おかみの笑顔に救われ、て固くしてしまった男は一方の表面上のだけは瞬間にも笑顔を取り戻せて、固くなるほどにも感情も高ぶって、もしまった

固くなった男の、を今はダメだと瞬間言い聞かせ、て辛うじて平静を、そのままで威厳を保たせるのだった

「あなた、最近明るくなって来たわねぇ~ぇ!」

「う~ん、そう・かい? う~ん、誰かの影響、か、な」

「えっ? それって、誰・・   な、の?」

「う~ん、また来た時に、  じゃねぇ~」
「う・ぅん・・! はい、それじゃぁ、またね、気をつけて帰ってね!

元気で! また来てねぇ~!」

「うん、そいじゃ・・!」

「は~い、気をつけてぇ~! 帰ってねぇ~! お休みなさ~い!」

「うん、わかったぁ、 それじゃ・・  また!」


こんな会話をしての別れ方なんて今まで人生の中で、した事もない・・  無かったなぁ・・   しかも 好きな・・  女性と・・ だ  よ

こんな ・・  に   とこころが高ぶって  るし

こころが温まる感じがして、何だかホッとして・・ 気持ちが内側で はずんで、しまって、  若やいで  嬉しい気持ちで満たされて・・  て

 

気持ちも、体も 何だかホットで   すごくしあわせな気持ちなままに  もう、すっかり夜中で少し寒くもなってるいつもの街の空気を感じながら帰り道へと歩みだした

少し歩いてから肌に夜気を感じても来ながら も酔ってしあわせに緩慢となってる脳みそに刺激を与える気持ちでもと意識して

歩 い  た


いい様に頭が痺れ、体もぬくぬくと暖かいので少しだけ、カ~ンとキ~ン、となりたいのだった、もうすでに 1ヶ所はカ~ンとギ~ン、となってはいた、の だが  ね ・・
タクシーも拾わずに気分いいままに 歩いた 余韻にひたり・・ なが ら 今は、まだ 静める意味で  (頭と・・ ) も・・ と

こうして社内でも評判となっている、 「あいつ、はこの頃どうした・・ ぇっ! すっかり男らしくなってしまって  ええ、どうした んだぁ・・」  といろいろな人から色々な情報が入ってくる


「あいつはいつも飲みに行ってる美人おかみに入れ揚げて、るからその影響じゃぁ ねぇ~のかぁ??!!」
「いや、あいつ、あの若い子が居るトルコ(今で言う所のソープランド)でいつも抜いてもらってる、からこの頃元気一杯なんだぜぇ、よぉぉ!」


「へぇぇ~・・、それで最近あんなに垢抜けて来てんのかい、あのいつも黒々としてあったあご髭も良く剃ってある様になったし、なぁ~ぁ! たいしたもんだぜぇ~、よぉ~、それにしても、ぉ~ぅ?!」

「うん、そうだ、そうだ・・ 」 ・・ とすっかり一目置かれる様にもなっていた


仕事は今まで通り、十分すぎる程にもこなしている、何も言わずに 相変らず周りにはブ~ブ~言いながらしか仕事しない輩も決して少なくは無かった・・ 中で、 もだから上の連中にもすっかり彼を見る目も変り、 相変らず何も言わずに言う事を聞いてくれる、がすっかり今度はこっちが腰が引けてたり、もしながらの緊急時などの仕事の依頼したり など、など


だって、他の連中は相変らず・・に、も全然動こうとはしてくれない、のだから 依頼するにしてもある程度、粘らないと「うん」と言う返事は言ってはくれない、のだった、から
余計に、も彼の存在はやや頼みずらくなったとは言っても、相変らずに、も貴重な存在なのだった

 

しかして、今ではすっかり上から目線でなくなって、同等な感覚として、のそれなのだった

だから、「悪いねぇ、ちょっと行って来てくれるかいねぇ」  と、悪いねぇ~  の、言葉が先に入る様にもなっていた


そんな現金な対応な周りの奴らには彼は全然関係ないのだった、あくまでもいつもの様にと仕事をし、いつもの様に、の言葉使いで、対応で、 それは仕事をしているのだった 周りの人らがどう変ろうとも、自分は自分、だから もう二度とヘラヘラする事無く、ウヘヘと愛想笑いもする事も無く、もうそれは、これが彼の平常心、日常、なのだった


ひとの事を馬鹿にする事無く、持ち上げて何か利、しよう、得しようとする事無くただ一生懸命にと日々の仕事に取り組んで、ただ励んだ
彼にとってのお金を稼ぐと言う事は、あのおかみに会いに行く、行けるため であり、それはお金だけで無く、日々労働をして、そしてのやすらぎを求めても許される、働くからこその節目としてのやすらぎの  場所なのだった

そして、そんな中の ある日 彼は連続で店へ顔を出さない日が続いていた 毎週末、土曜の夜から日曜の深夜にかけての時間帯には必ず来てくれていたのに急に来なくなっていた 今週も、そして今週も・・


と2回続いて、3週目になるとさすがに心配に、もなって来た
どうしたんだろう、 あの・・ 髭面の、顔の正面も、横も黒い、真っ黒な髭に覆われた面積の方が多いんじゃないかと、も思える様な、あの髭面も恋しくなって来た


おかみは大いに心配した 何か体こわして寝て居るんじゃないか、入院でもしてるんじゃないか、  と

そんな所へ・・


「今日はお客さんもあまり来なかったわねぇ、 何か、もう店も閉めちゃいましょう かねぇ」と店の入り口から見える外の暖簾(のれん)の方へと何気に目をやる、 もう深夜も翌日に回っていて外を走る車の音もあまりしなくなって来ていた

 

しん・・ として寒そうにも感じさせて
ふと・・ 人の気配かなんかしたので何気なく入り口の方へと目が行った  ら・・
何気に暖簾をめくって店の中の様子をうかがっている様な感じの人の影、 「う・う~ん・ん・ん?」っと無意識にも注視して台所の水仕事の手を、水もそのままに見つめる


外の人の影も暖簾をめくったまま、中をうかがってる様なしばらく静止したままに居るのだ、何の動きもせずに  じっ・・っと
「うん・・? 何・・、何・・? う・う~んん・ん・・?

もう1回 何・・?? どうした・・??」と、瞬間やや怖くもなって来るのだった


外の影・・ もやっと意を決したのか、動いた  暖簾を上げていた手はそのままにもう一方の手でだろうガラリと入り口のガラス戸が開いた


おかみも瞬間怖さもあり、ずっと目も反らす事も出来ずに見つめ続けていた

ガラリ開けて入って来た中肉、中背な 全身真っ黒な・・ 影、それは
「何ねぇ~! なぁんだぁ~ Aちゃんやないのぉ~!!

もぉ~っっ(怒りが少し入ってる)!! 誰・・?、 何・・? って、怖くなってた所やないの~ぉぅ~! もぉ~!! ほんとにぃ~ぃっ!! 


「何ねぇ~、どうしたんねぇ~  ねぇ、ねぇ~ どうしたとぉ~! 」

しきりに感嘆の嵐を浴びせられてるのに 小さい声ですいません、すいません・・としきりにペコペコと返して・・いる、のみ
おかみは一旦背筋をシャンっと立て、大きく一呼吸して、 から

「どうしたん・・??」と、続けた


相手をしっかりと見て、冷静になってるいかにも、の風情で
「ふぅ~・・」とこころの中で無意識にも男も一呼吸を・・ 置いて、から  「う・う・・ん・・」 話しずらい、んやなぁと咄嗟に受け取ったからおかみの方から振った

 

「何ねぇ・・、どうしたの?」 やや詰問調かと感じ、すぐに言い換えた
「Aちゃん、とにかく・・ 元気そうで、良かったわぁ~  ささっ、いいから、そんなとこに突っ立てないで・・  はい、とにかく座んなさい、ねぇ・・」  と、優しい口調を意識しながら促した


おかみが入り口正面の椅子へと促しながら、もう椅子も引いて座りやすい様にもして見せても居る
その椅子はいつもの場所の椅子ではないので、男は一瞬にもいつもの端っこの椅子の方へと無意識にも目が行ってから、一瞬ためらいも入りながら・・  とやっている

 

そんな様子もすでに織り込み済みなのか、おかみはすかさず

「今日はそこにお座りや・・ あんたはそこでいいのっ!! ねっ! そこでいいんだから、あなたはこれからはそこがあなたの定席として下さいっ!」 と、ややきつめな口調で言い放っても いた


そこまで言われ、椅子まで引いてくれてあったのでは、もう・・ 逆らう訳にも行かない、 し、気持ちはあっちの椅子・・にも、まだ・・ でも、逆らう気もないので大人しく素直にそうするのだった


座って見て、初めて気がついた・・ ぁ・・、 これって、おかみとぐっと、近づける・ぅ、位置だったんだ・・ぁ、 と  何で、今まで自分はあんな遠い位置に、いつも座っていた・の・かと  ここに座って初めて、そう感じた すぐにそう思ったのだった

やや後悔も入りながら、の気持ちで・も あらためて、そう、思ったのだった

 

そんな感想をも抱きつつ、目を正面に向けると、おかみは一心に支度を始めていた 店ももう閉めようかとも思っていた所だったので、もう火も落としちゃって有ったし、色々ともう仕舞いこんでもあったので、それらを全部頭に浮かべながらもう一回、とりあえずは・・と、あれと あれ、と 一時的に無言にも


「さっ、まずはビールがいいのよねぇ」とコップとよく冷えた大瓶を用意してくれる、 「さっ、どうぞぉ」と注いでくれる

一緒に、さっと出してくれた一碗は長ひじきと大豆、こんにゃく、にんじんのひじき煮、甘じょっぱい、そしてある程度噛み応えのある、昔から日本の家庭でよく食べられて来た

一口 くちに入れると何故か落ち着く、おふくろの味なのだった

 

男もやっと喉を潤し、口に何か食べ物が入って来た事で急速に気持ちが和んで行くのだった


それまでは、あれほど毎回欠かさず通っていた、の、に

が  何の連絡もせずに居た、 から とても男は後ろめたい・・ 気持ちでもあった


それならちょっと一手間電話を入れる事ぐらい、 を と冷静な目では思うのだったが 男というものは、そんな一手間が、おうおうに し、て出来ない、  生き物なのだった

そこが女性には何を言っても受け入れがたい事でもあったりしてる、のだが

いつも、 のおかみの手料理をやっと食べられた事で気持ちが一気に落ち着いて、も来た 男は無言にもなっている空間にもと言葉を足した
「あ~・・、うまい、なぁ・・」いつものおかみの料理がこんなにもうまいと久し振りに感じられた、 こころからの感想を述べた

「ずっと食べたくて、食べたくて・・ でも、来れなかった、から」
「あら、そうな、の ・・、 どうしてたの?」
「うん・・、俺、 実家へ帰ってた ・・ ん、だ ・・ 」 
「あ・らぁ~、そうだったの? あら・あら そうなんだぁ~ ・・ 」


「久し振りに実家へ帰ると ・ ・、 色々とやる事がぁ、あって、ねぇ」

「 ・ ・ ・ ・ 」 とやや口ごもる様子なのも、おかみはこっちで感じ取って、もいた だから、 「それで・・」、 とは聞かないでいた

「あなたは・・、 長男  ・  なの?」
「う・うん・・、 一人っ子 ・ ・ 、だからお袋にとっては手元に置いて置きたくっていたらしい、  けど だから、しきりに地元の会社に勤める様にと促されていたんだけど ・ ・  ねぇ ・ ・ 」
「 ・ ・ ふ~ん ・ ・ 、  そう  なんだぁ・・ 、それでも、こっちに出て来ちゃった ん、だ ・ ぁ ・ 」

「うん・・、あっちじゃ、どうしても、色々と面倒くさい情報が入ってくるし、人とのお付き合い、関係もうるさいし、面倒くさい、 しねぇ・・」
「ふ~ん  ・ ・ 、 確かに ・ ・ それも、 あるわよねぇ」
「う・ん ・ ・ 」 と言ってコップの残りのビールを一気に喉へ

「ふ~っ、ぅぅん ・ ・  何か、ビールの味もこっちの方がうまい様にも感じるなぁ~ ・ ・ 」
「そ~ です・か!、 はい、とりあえずはおでん・・、食べて」
「お~っほほぉ~・・、来た、来たぁ~! ずっとここのおでんが食べたくって・・、居たんだぁ~ う~んん」 とビールを飲み干した

「あっ、今度は日本酒、行く?」 「うん・・」
「リクエストは何か、ある?」
「う・うう~  ん・ん ・ ・、 おかみにお任せ・・ でいい・ですか?  食べる方も ・ ・ 」、

まだ少し遠慮の気持ちが入っているのが分かるのだった

「はい・はい・・」 任せられて、おかみも久し振りに嬉しい気持ちが、内に ふつふつ と湧いてくるのを感じ て、いる

こうして、久し振りの二人の会えない期間が空いてしまっていたが再び・・  の、 二人の らしい時間は始まって行った

それは二人お互いが、お互いに、安心しあい、信頼して、またこれからの二人の時間を紡いで行く 二人の物語がスタートして行く事を確かな感覚として感じ取って、感じ合っていた


こうやって、おかみの忙しく、立ち居振る舞い、動いている姿を目の前にした すぐ近くで見える位置に今回は座らせてもらったので、飲みながら、も自然と無意識に ・ ・  も、 ちょくちょくとおかみを求めて目が行ってしまって いる

総じて細身な、おかみの シャキ っとした美しい、和服姿に、 白いシンプルな割烹着姿に、もある種、 色気も感じて  も
男はそうとは意識していない でも、女の、そんな無意識で働いている姿に
も どこかに、女らしさを、感じる様に ・ も 作られて ・ いた

帯で締まったなだらかなお腹周りと ピタリ巻きついた布の体なりに表れてある女なれば、のらしい腰周りやお尻の柔らかにボリューム の、量感も感じさせて ある女らしい曲線の やさしく、にも 温かく、 にも感じ、て

そして愛おし く  も目に もやさしく入って 来 る

肌の露出の無いならば無いなりに なればこそ、の昔の男たちもこうして目の前の和服をまとった女たちに 癒されて、 も来たのだろう
女らしい部分を探して もしまう、無意識に  しまうのは男なれば、 ゆえに

おかみの後姿なればこそ細い首の襟足の 辺りの後れ毛の
何とも色っぽい様子 にも男は自然と目が行ってしまうのだった
前からはおかみの目と合ってしまいそうにも思え、まだ平気ではまともには見られないで、 もいた

このおかみに対しては、まだ強気にはなれないのだった今現在、この男にとっては 憧れ の人   だ、  から


だから、こそ  として簡単な気持ちにもなれず、勢い・・ 軽い気持ちでも、すぐには電話も出来ない、 のだった


が、女にすれば、それは・・ 
大した裏切り、行為、 ではあるのだった、が しかして、そうは思っていても

 

今度は女の方が、男に対して、 簡単には 「何んで ・ ・ ?」  とは言えないのだった
勢い・・、いざ、そんな男を目の前に、としたら それは黙っては、居られない、 除々にと、それは匕首(あいくち)を相手の喉へと突きつけて・も 行く のだ (意識の内、で・・)

「さぁ~さ・・、ごめんねぇ~、忙しくしちゃって、てぇ・・ 用意が出来たから、 はい! どうぞぉ~! 」

飛びっきりの笑顔を沿えて 徳利をと傾け 促す  そんな何気ない仕草にも 柔らかい雰囲気なままに 促され、自然と盃を傾けて、いる  無意識なまま、に 

 

そんな笑顔にも男は弱い、 女の色んな意味を含んで、ある笑顔に、も男は単純にも ただ単純に、も受け取って喜ぶ、 嬉しがる、 のだ そう言うもの、 だ ・ から

古 ・ ・ の  昔 ・ ・、 昔 ・ ・ から

「う・う~んん」と言って、クイッと盃を傾け、飲み干す
さぁ~・・ 男と女の化かし合い、の始まり ・ ・

とは、この場合にはならない、のだった もうこの二人にはしっかりと、した信頼関係が こころの内では出来て、いたから

「はい、じゃ、わたしそっちへ行くわね もうお客さんも誰も来ないでしょうからっ!

今夜はあなたと <二人っきり> で、飲みましょうねっ!」
「そう、そう・・、 もう暖簾もしまっちゃいましょうね 今夜はあなたと<二人っきり> で飲みたい気分だから」

 

「勿論 ・ ・、 いいわよ、ねぇ??」 ・・ と、やや詰問  調かぁ?

わざわざ二度繰り返して言ってる、  し 


「う・うっ・・」と思いつつも、男には断る理由も根拠も、立場、 それが出来る、では ・ ・ 無かった
 即、 「うん!」  ただ、それ、だけ、しか吐けなかった  おかみの迫力にも負けて、 る ・・  し


立場 弱い・感、あるままな中・・  で、応じない、 を表明する、出来る、 訳がないのだ、 から

そう言っておかみは小走りに後ろ手で割烹着のヒモもほどきながら、の外へと出ると目を辺りに散らす事なく暖簾を外して、また小走りして入り、 閉め、 鍵もついでに掛けて、 しまって、それが一連の流れの様な作業で、

 

それが男に対して、のどんな 意味あいに もなるのか、 取られるのか、 も  眼中に もう無いのだった

女にすれば当然、考えに入れるかも知れないのだったが、今のおかみにとってはどうでもいい事なの、 だ・ から

「さっ、飲むわよ! 飲み物も、食べる物もいっぱい用意してあるからねっ! 今夜は覚悟して付き合うの・・ よ!」 

しっかりと目を見つめながら言われてしまう 男は本気に気合を入れる気持ちへとなって ・ ・  行く

行かざるを、 得ない、 じゃぁ ・・ ない、かい、 なぁ~・・

男は、ここへ今夜来た事が 吉だったのか、はたして・・ 凶、だったのかとの意識がふと瞬間には よぎった  が、そういうどうこうする、出来る 雰囲気ではもうなくなっていた のも瞬間にも感じとった


明らかに俺は圧倒されてしまってる ・・  う、  かっ ・・  と
どっちが、 男らしい の か と、瞬間 頭をよぎった くらいに

「あっ、あなた! あなたが好きなもやしレモンもい~っぱい作ったからね、おでん、から今度はこっち食べましょ わたし、あなたのもやしレモン、もりもり食べてるとこ見るのが だぁ~い、好き、なの!!」

そう言うとすぐに立って取りに行く パタパタと小走りにして、そんな様子も、しゃっきりと和服とマッチして 女らしく、 て可愛らしくも、 あり、 色っぽくも あり


「そう・・、それよぉ~ぅ! その食べっぷりが見たかったのっ、よ!! わたしの料理をこれだけ美味しそうに、しかも ガツガツと食べてくれるお客さんは他には ぁ~居ないわぁ~、これだけでも 惚れ惚れしちゃう・・ ぅぅ~!!」

「俺だって、このもやしレモン、食べたかったぁ~! 早く帰りたくて、帰りたくてぇ・・!」
「じゃ、何故・・、 早く帰って来なかったのぉ~よぉ~ ほんとに、もぉ~!  あなたが急に来なくなちゃった、から わたし作り過ぎちゃってぇ~てぇ~・・ 大変だったんだからぁ~ ねぇ~!」
「う・うん ・ ・ ごめん、  う・う ・ ごめん ・ ・ てぇ~ ・ ・」
「俺だって、大変だったんだ、からぁ~ 」

「そう・そう・・ そう言えば、まだ一番肝心な事聞いてなかった、 わよねぇ・・ どうしたの?」
「う・う ・ ・ ん ん ・ ・  じつわぁ ・ ・ 」とやはり、まだスラスラとは言い難い・・らしい


間があいて・・  それでもおかみはジッと黙って次の言葉を真剣な表情なまま・・ に、待った

しかも、 彼は・・ えっ! 涙・・ぁ、 ぐんで、る、か・・ ぁ・・
本当に・・ 彼の話さんとしてる、その表情は・・ 今にも、 もう・・ 鼻水が・ぁ・・ 少し見えてる、では・・ ないかい、なぁ~  ・・  とと


などと思いながら、見つめながら・・も もうおかみは無意識に、も 自分が使ってあった1回少しの鼻水を拭いて和服の袖の中へといれてあった、それを取りに、と手を突っ込んでいた

男は・・
 もう 一言、話す・・ 前から、すでにその表情は 泣き顔 へと変化して・・ 行く
そんな、こんなな内に、もう涙の第一滴は左右の目に、と 潤み始め・・ て、 も ぉぅ ある、し


「じつは・ぁ ・ ・  おふ ・ ・ 、 おふ・く・ろ、 が・ぁ~・・ 

ぁ~~ ぁ~~ 」と、ついに・も泣き始めて、もし まった・・ ぁ・・  すかさず、おかみが聞いた

「まさか・・ 亡くなった・の・・?」   「 ・ ・ ・ 」

そして、の 静かに と うなずいた もう目には涙があふれ、ボタボタと落ちも、し  て、カウンターに着いた肘の横へ・と 落ち、広がりはじめ、て・も  すかさず出したおかみの一回使い古し、のを使ってまずは鼻先へ、 拭いてあげて、の すかさずティッシュの箱を探す
「え~・・と」


目を四方へとやって、 ちょっと、待っててね」 ちょっとでも離されるのは、この場合には寂しい、のだった が、すぐに箱ごとティッシュを手にして戻って来てくれ  て、そしてかいがいしく拭いてくれ  た

一応、顔を全体的に(涙は濃い髭周りにも、落ちずに着いて、るから)と拭いて、から  そして最後にカウンターもと手を移して、から 今度はゆっくりとした、口調で言った
「ごめんねぇ わたし・・ 気がつかないでぇ  あんたの様子、から少しは気ぃ~ついても良かったんやけど、 ごめんなぁ~ ほんまにぃ もう・・」

(何故か 関西弁 が入ってる し)

「そう言えば、ここへ もう、入って来る前から そう言えばあんたおかしかったんやもんなぁ そ~かぁ~ だから、元気が無いから 無かったから、こそすぐには入って来れなかったんや、なぁ~ 
気ぃ~付いて上げられんでぇ~ 悪かったなぁ ほんにぃ・・」
「あんたも、色々 苦労を溜め込む人やから 色々大変やった、ろ ぅ~ よぉ~!」

「いいでぇ 遠慮せんでも、泣きたい時は泣きたいだけお泣きぃなぁ そうだよぉ~ 男だからってぇ~ 泣いたら え~ がだよぉ~ 」 と、そっと手を伸ばし、て男の肩へとやさしく 置いた
うん、うん・・ その手を離さず、に くっとこちらへと力を少しだけ 入れた

男の体はすかさずに 動き、倒れ ておかみの胸へと顔をうずめて、そしてさらに と静かにないた
「う ・ ・ んん よし、よし ・ ・」と 肩から背中へと手を そして、ポンポンとまるで赤子をあやす様にして静かに、と気持ちで包んだ

女のやさしい気持ちに抱かれて、彼は遥かな 赤子の時以来のやさしさに、と包まれるのだった
そして、ことさらに、もっととやさしさの欲しくなった男は あの髭面に、も似合わず もっとと甘えてしまうのだった
それは 母に対する子供の様に 古の昔から変らぬ 母の愛を求めて甘える様に


 それはとても安らいで、安心して甘えさせてくれる、心地の良い瞬間でも、あるのだった

ここ・・、しばらく、の 気持ちの落ち込み、と 亡くしてしまった喪失感と、 一人残された寂しい やり切れぬ思い
しばらくはどうしたらいいのか、分からなかった故郷での あの・・ 自分の存在の 虚しい、寂しい・・ 消えてしまいたい、 感じと、がおかみの胸に抱かれながら、も甦って来るのだった

が、今は、もう
 また、こうして歩み始め・られて こうして、大好きな女性に、こんなにもやさしく抱かれて、も居る 自分があって 嬉しくてそれでも、また泣けて、来るのだった

「うっ、うっ・・」 と嗚咽が出るほどに、も泣けて、泣いて・・  声を出してなくたびに顔は下を向き、頭は下がって おかみもなるがまま に、彼の肩にあごを置いてただやさしく抱いた
涙を拭いて上げようか、と肩から離れた  ら、そのまま男の顔は下へと落ちておかみのひざへと突っ伏して、いた

肩よりも、胸よりも柔らかい太ももの、弾力のある、でも和服のあのごわごわとした感触なままに顔に感じながらも突っ伏したままに泣いた
「これなら涙を拭けるわ」、と彼の頭に触れて横にしようと、 が彼はそのままひざに突っ伏したままに居るのだった

おかみはそのままにして手を頭に置いてままにやさしく撫でた
男はそのままやさしく、柔らかく受け止めてくれている太ももの 愛しくも柔らかい、やさしい感触を顔に感じながら もう離れる事など出来ようはずもないのだった

腕をいっぱいに伸ばし両側からも挟んでおかみの太ももの柔らかい感触を顔を埋めたままに両の腕に、力を込めて両側から抱きしめつ そして顔も押し付けたままにゆっくりと左右に振り、 つ愛撫 に  と

後ろまで回した手はおかみの量感も感じながら 意識しないでも自然ともっと上へ、もっと上へ、と顔を密着させたまま力を込め、て 顔を振りつ、 愛撫しながら、 ずらし、 股間方向へ と 寄せて 上げて行く

男はもう・・ 愛撫 する動きをやめられる訳もなく、本能に導かれるままに おかみのやさしい、柔らかな太ももをがっしり、と押さえ込み愛おしい感情なままに ゆっくりとした動きで 左右に うねる様に し、て、 顔で、鼻で、口で、押し付け

お腹で行き止まった ままに さらに高まる気持ちの力を込めて愛撫、 し、 た、

もはや、男も女も離れられ様 はずもなく 女もたまらなくなって背を立ててる事もままならなくなって男の背中へと倒れ込む
グイ、グイ、と後ろ手から、 前から、 力強く、 押し付けられ、 湧き上がる愛撫の快感にそのまま身をあずけ   た

そのまま両の腕で答える様に女は上から力を込めて抱きしめ、密着させ て
抱きしめて蜜なる感情なままに男のなすがままに身をあずけ る
 

女を愛する、男の原点 古の昔から 綿々と続けて来た男と女の
深まれば深まるほどに もっと  と一体を 望む それが男と女の 
<真理>  そして、 自然 なる姿 ・・


もはや止められる訳もなく、 男だって、女だって・・
一心同体を と望み、 なって、 究極の <理> となって 二人 昇華 して、 いく  のみ

男と女 一旦抱き合ったら、もう・・ 離れられない、のだから


そして、自然と二人 そのまま一番奥の座敷の席の方へと何事も語らずとも移動して と、そのまま一瞬たりとも離れる事無く、 熱く、 熱いままに朝までの数時間を 濃く、濃密  に、過ごすのだった  男と女 の燃え上がる 激情のままに
 

放し、 放れ がたい  ・ ・ 悦楽 の 波  に ・ ・ ゆられ 
漂い 浮遊 まま  うつ  ろ   う  ・ ・
 

二人はもう ・・ けっして離れられなくなって行った
男は より男らしく、と なって、  女は より女らしく  なって
そう・・ 二人が  望んだ、 から
望み、 そして 歩み、 そして 二人となって あるべき姿に と 歩み そして 歩んだ
 

自分を 飾る事 無く 諦める 事、 無く  生きた
ただ 生きたい、から 笑いたい、から 喜びたい、から ただ生きた

「自分 を、 生きる を、 諦めない」  で


長々とお付き合い下さいまして有難う御座いました
お疲れ様、でした
じねんくろまめ でした。。 おやすみなさい。。。

 

後日、加筆、修正、を加えました

尚、文中の 「もやしレモン」は実際に売られてもいる料理です

使わせてもらいました、ので 一言、加えて置きます

自分も、一時期 うまい、うまい、と食べておりました

が、某通販会社 ある理由で嫌いになって 以降食べてません

(アフィリ、には関係してません、ので念の為、一言加えて置きます)