《春野家最恐の恐怖が襲う!》
これは小学校低学年時のある日曜日のこと。当時、我が家は二代目の家の時代で、敷地内には祖母の家が建っていた。
私はその日の朝、祖母の家に行き、祖母の毎朝の神仏(神棚と仏壇)へのお勤め(供え物をして読経する)を座って見ていた。
祖母は仏壇・神棚とも、それぞれお供えをし て、それぞれのロウソクに火を点けると、いつものように読経に入った。
何分位経っただろうか。私は何か周囲の気配が普通とは違うことに気がついた。
目に見えて何かが違う、というのではないのだが、部屋の「空気」がどうも可笑しい。
そのうち、風も吹いていないのに、仏壇と神棚のロウソクの炎が揺らめき始めた。
そして徐々にそれぞれのロウソクの炎が上に伸び上がって来たのである。
炎の高さが通常のそれをはるかに超える、十数cmまで伸び上がったその時、信じられないことがロウソクに起こった。
なんと神棚の炎が中心部から徐々に裂け目が入り、花弁の如く、縦に二つに分かれ始めたのである。
そしてパチンコのチューリップのように、完全に二つに分かれたその時、いきなり仏壇から「ボッ!」という音が聞こえた。
その光景は最早人知を超えていた。何と仏壇のロウソクの炎が一瞬消えたかと思うと、瞬時にロウソクの上、20cm位の高さで打ち上げ花火のように弾けて、また消える、そして再びロウソクの芯の所で「ボッ!」と火の玉が出現し、20cmほど上で弾ける。この行為を繰り返し始めたのである。
私は完全に身体が固まっていたが、祖母はいつものように平然としており
「神さんや仏さんが喜びゆうがやろ。」なぞと呑気なことを言っていた。
が、「喜び」を表現するのに、こんな恐ろしい光景を見せることがあるのだろうか。
何分その光景が続いただろうか。仏壇のロウソクに火の玉は上がらなくなった。
神棚の炎も今度は徐々に、二つの炎が閉じ始めた。そして数分後、一つの炎に戻った。
やがて神棚・仏壇、双方の炎も徐々に元の高さに収縮し始め、ほどなく、通常の炎になった。
この時も、こんな恐ろしいことがあったからと言って、特に家族の誰かが病気や事故に見舞われる訳でもなかった。
いったい、あれは何だったのだろうか。
~休日の朝に起こった不気味な現象。それは春野家に巣くう「不可解な存在たち」によってひきおこされた現象である、とでも、言うのだろうか。byほん呪委員会・中村義洋~
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