貴婦人と一角獣/白水社

トレイシー・シュヴァリエ 著
木下 哲夫 訳

貴族のル・ヴィスト家が、タピスリー(貴婦人と一角獣)を発注をし、パリの絵師ニコラが図案を描き、ブルッセルの工房で下絵が描かれ、タピスリーを織り、ル・ヴィストの屋敷の部屋にそれが掛けられるまでを描いています。

フィクションだが「タピスリー〈貴婦人と一角獣〉に関する妥当な推測に基づいている」物語。

7月に「貴婦人と一角獣」展を見た時に、この本の存在を知り、図書館に予約し、順番が回ってきました。(私の後にまだ3人予約してます。人気です。早く返さなきゃ。)

とても面白かった
初めは、絵師のニコラがひどい女たらしの上、下品なので、どんな物語やねん?と思いましたが、逆にそれによって、ひたむきにタペスリーを織る職人たちの勤勉さが浮き彫りになっています。そして、このタペストリーによって、ニコラを初め、ル・ヴィスト家の人々、織物工房の人々の人生が変わっていく様子、この時代の女性たち、織物工房の生活が生き生きと描かれています。

また、タペストリーが出来上がる過程の様々なこと
・最初の下絵(貴婦人と一角獣、ライオン、旗等だけだった)に、侍女や木、色とりどりの千花文を書き足してバランスの良い下絵に仕上げる
・タピスリーは、裏から表に向かって織るので、下絵は完成図の鏡像になる
・糸の量を計算する
・機に経糸を張る作業
・織り終わったあと、縁かがりをする
を知ることができて、一段と「貴婦人と一角獣」のタペストリーが好きになりました。

トレイシー・シュヴァリエの本、他にも読んでみたいな。