『走れメロス』は小説読解の基本形 | 神戸国語教育研究会カプスのブログ

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中2の定番教材と言えば『走れメロス』。どの会社の教科書を採択しても、必ず載っている。おとなになってからも、どんな話だったか、だいたい記憶していることだろう。

 

『走れメロス』は、小説の読解法を学ぶために、とてもオーソドックスで、いい教材だと思う。

 

まず、場面分け。

 

小説の場面分けは、1.場所、2,時間、3.事件の発生、4.新たな人物の登場を基準にして分けられる。シラクスに買い物にやってきたシーンで始まり、次に王城に入る(場所)。セリヌンティウスを身代わりに預けたメロスは、村に走って帰り、疲メロスは妹の婿を説得し、半ば強引に結婚式を挙げる(時間)。メロスは故郷への未練を断ち切って走るが、途中で川の氾濫に遭い、山賊に襲われ、試煉を乗り越えるうちに疲労感に襲われて、諦めモードになる(場所)。湧き水の音を聞き、それを飲んだメロスは回復し、再び王城に向かって走り出す。途中でフィロストラトスからセリヌンティウスの状況を聞く(事件の発生・新たな人物の登場)。最後は王城へ入り、セリヌンティウスとお互いに殴り合う。その様子を見た暴君ディオニスは改心する(場所)。

 

このように、基準に当てはめれば、きわめて簡単に場面分けができる。

 

小説の登場人物の心情が、最初から最後まで一転もぶれずに続く、ということはない。途中でいろんな心情変化を見せる。心情は、何らかの出来事が発生すると変化する。メロスの場合、村から王城に戻るシーンで、未練を断ち切るために走るが、もう間に合うだろうというところで歩き出す。そこへ、前述の3つの試煉に遭う(川の氾濫・山賊・疲労)。この試煉によって、これまで「信実」の存在を証明するために走っていた緊張の糸がプツンと切れる。「もうどうでもいいや」と投げ捨てるような言葉を発する、そこへ、山の湧き水の登場だ。これを手ですくって飲んだ瞬間、希望の光が見えてくる。メロスの心情変化を折れ線グラフに表すと面白い。高低差がかなり大きい。

 

情景描写が今後を暗示している。妹の結婚式を挙げている最中、ずっと雨が降っていった。翌日からこの野外活動のための下見やウツあわせがあるのに……。

 

「人を疑うのは最も恥ずべき悪徳だ」とするメロス VS 「人の心はあてにならぬ」ディオニス。全く正反対の価値観を持つ2人。小説も、評論文で言うところの「二項対立」が用いられている。

 

セリヌンティウスを人質にして村に向かって出発する際には、好天である。ところが、妹の結婚式の最中には「車軸のような大雨」が降る。再び、走り出すシーン以降は、夕日がキラキラと輝いている。メロスの心情変化と、今後の展開を予期させる情景描写がある。

 

このように、小説を読む際のポイントとなるものが凝縮されている。中3や高校の授業でも「ほら、これって『走れメロス』でこうだったよね。あれと同じ読み方をすればいいんですよ」と説明すれば、みんな納得顔になる。

 

『走れメロス』は誰もが内容を覚えている。それだけに、小説読解の際に『走れメロス』に戻れば、生徒にとって分かりやすい。

 

小説読解のありとあらゆるポイントが凝縮されたのが『走れメロス』だ。

 

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