ジョン・グリシャム著『自白』 | こばじぃのブログ

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三軒茶屋から山梨県上野原に転居した【ぢぢぃ】のアレコレ

2022/6/1:サイドバーに、
上野原情報メディア「めためたUENOHARA」による、
YouTube「八重山と、こばじぃ」をリンクしました

ほら見た事か、

読書物が二日間続いてしまったじゃないか。

昨日アップしたのは1カ月前くらいに読み終わったヤツなのに…


もっとも、今日のも1週間以上前の…


どうでも良いか。




本日の話題は、ジョン・グリシャム。


いわゆる“リーガル・サスペンス”である。


日本では“法廷物”などと言われる事もある、

法曹界を舞台にした小説で、

スコット・トゥローの「推定無罪」が先鞭をつけ、

ジョン・グリシャムによって切り開かれたと言われる。


グリシャムは、

1984年、12歳のレイプ被害少女の裁判をたまたま傍聴する。

陪審員がみな涙するような悲惨な事件で、

犯人を銃殺してやりたいと思うほどだった。

そこから、余暇を利用し、

もし少女の父親がレイプ犯を殺したら、という想定で創作活動を開始。

3年を掛け、『評決のとき』を完成し、上梓した。
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その後も、

『ザ・ファーム/法律事務所 The Firm』 (1991)
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『ペリカン文書 The Pelican Brief』(1992)
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『依頼人 The Client』 (1993)
『処刑室 The Chamber』 (1994)
『原告側弁護人 The Rainmaker』 (1995)
『陪審評決 The Runaway Jury』 (1996)
と、立て続けにヒットをとばし、

『評決のとき』を含め、これらすべてが映画化されている。
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それ以降も、だいたい年1冊のペースで書きあげており、

中でもお気に入りを紹介すると、

『路上の弁護士 The Street Lawyer』 (1998)
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『大統領特赦 The Broker』 (2005)
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『謀略法廷 The Appeal』 (2008)
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などがあげられる。


また、1982年の強姦殺人事件の犯人として、

唐突に逮捕された元野球選手の冤罪事件を追いかけた、

グリシャム初のノンフィクション『無実』(2006)というのもある。
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そのグリシャムの手による、久しぶりの『自白(原題:The Confession)』
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を、読み終えた。


裏表紙には、

男は贖罪のために現れた―のか?

その月曜日、カンザスの牧師キースのもとを訪れた

元服役囚の不気味な男ボイエットはおぞましい告白を残してゆく。

脳腫瘍で余命わずかな男は九年前、強姦殺人を犯したというのだ。

結果、冤罪の若者が死刑宣告されたとも。

刑の執行は木曜…四日しかない!

リーガル・スリラーの巨人グリシャムが満を持して放つ大型タイムリミット・サスペンス。

とある。


最近のグリシャム作品は、

法廷物と言いつつ、法廷シーンの描写は少なくなっており、

特に、アメリカ法曹界に対するグリシャムの疑問・疑念や、

人種問題、キリスト教内の教派対立などにも焦点が当てられており、

今回の『自白』にもこれらの諸問題がクローズアップされている。


アメリカの法廷物や刑事物に出てくる“ミランダ準則”ってヤツ。

なかなか全文を目・耳にする事が少ないだろうから、

ここで紹介しておこう。


1.You have the right to remain silent.

(あなたには黙秘権がある。)
2.Anything you say can and will be used against you in a court of law.

(供述は、法廷であなたに不利な証拠として用いられる事がある。)
3.You have the right to have an attorney present during questioning.

(あなたは弁護士の立会いを求める権利がある。)
4.If you cannot afford an attorney, one will be provided for you.

(もし自分で弁護士に依頼する経済力がなければ、公選弁護人を付けてもらう権利がある。)

自治体や警察機関などによって、内容はまちまちであるが、

概略はこんな感じだ。


そして、容疑者が逮捕される時にこれを読みあげ、

または、これが書かれたカードを渡し、

これらの権利を行使するかどうかを問われる。


小説『自白』のなかに、こんな件(くだり)がある。

無実の人間は、

往々にして尋問の最中に自分の権利を放棄してしまいがちだ。

自分が無実だと知っているうえ、

無実であることを証明したい一心で警察に協力しようと考えるからだ。

身に覚えのある被疑者は、

むしろ警察に協力しないほうを選ぶ傾向にある。

そしてベテラン犯罪者となれば、

警察をせせら笑ったあとは貝のように口をつぐむ。


また、警察などでポリグラフ(嘘発見機)検査をする場合は、

被験者の同意が必要になるが、

これについてもこんな件がある。

警察の尋問というストレスにさらされた場合、

無実の者のほうがえてして嘘発見器の検査に同意しがちである。

なぜなら隠すべき秘密もなく、

自分の無実を証明したい一心になっているからだ。

理由はいうまでもないが、

身に覚えのある容疑者はめったに検査に同意しない。


無実の者は、ミランダ準則の権利を放棄し、

ポリグラフ(証拠には採用されない)検査に同意し、

犯行のシナリオを作られ、自白を強要され、

冤罪に捕らわれていくのだ。


小説の舞台のテキサス州では、

容疑者の取り調べにおける“検察のウソ”が許されていると言うし、

犯罪の物的証拠が一つも無くとも(死体が無くっても)、

有罪は成り立つし、死刑を課する事も可能なのだ。


タイムリミットに向かって東奔西走する弁護士や、その関係者たち。

読んでる方も、ハラハラドキドキ…

だんだん腹が立って来る。


しかし、下巻の3分の1にもいかないうちにタイムアップ!


で、この先の300ページ近くに、

この小説のもう一つのテーマが書かれている。

(気になる人は読んでねっ)




さすがグリシャム。

読ませる。考えさせる。


アメリカではすでに2作が上梓されている。

『The Litigators』 (2011)
『The Racketeer』 (2012)

早いとこ翻訳・出版して欲しいなっ♪