ジェフリー・ディーヴァー著『静寂の叫び』 | こばじぃのブログ

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三軒茶屋から山梨県上野原に転居した【ぢぢぃ】のアレコレ

2022/6/1:サイドバーに、
上野原情報メディア「めためたUENOHARA」による、
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先日の『青い虚空』に続き、

ディーヴァーの古いヤツ『静寂の叫び』(ハヤカワ文庫)を入手したが、

Amazonの中古で、1社で上下巻が揃う所がなかったので別々に注文した。


届いたが、上巻は
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下巻は、
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なんて事だ。

表紙(というか、カバー)が違う!


版を見ると、上巻が4刷(2008/9/15)で、

下巻が3刷(2004/11/15)だ。


念のため、最新刊はというと、
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何刷なのかわからないが、

またしても表紙が違う。


オイラのように、おっちょこちょいでアワテンボウで、

おまけにジャケット買いするようなヤツは誤解して2度買いしてしまいそうだ。

(ヒョットすると、それが狙い?)



原題は『A Maiden's Grave(乙女の墓)』
これがどうして『静寂の叫び』なのか。


そもそもこの物語は、

聾(ろう)学校の生徒と教員を乗せたスクールバスが、

三人の脱獄囚に乗っ取られた。

彼らは、廃屋同然の食肉加工場に生徒たちを監禁してたてこもる。

FBI危機管理チームのポターは、

万全の体制で犯人側と人質解放交渉に臨むが、

無残にも生徒の一人が凶弾に倒れてしまう。

一方、工場内では教育実習生のメラニーが

生徒たちを救うために独力で反撃に出るが…

緊迫の展開に驚愕と興奮が相次ぐ、

読書界で話題独占の作家の最高傑作。
(裏表紙より)

というもので、

聾者の叫び、すなわち『静寂の叫び』となるわけだが、

では、原題は?


それは、聾者の女性が、「amazing grace:アメイジング・グレイス」を

読唇術で、「a maiden's grave:ア・メイドゥンズ・グレイヴ」と読んでしまうことに由来しており、

“a maiden's grave”、すなわち『乙女の墓』となるわけだ。


小説としては、さすがディーヴァー。

古い作(原著は1995年)ゆえ、まだまだ拙さは有るものの、

細かいネタが満載で、

特に聾唖者内部のヒエラルキーなど(生来の聾唖者の方が尊敬される:後述)、

よくぞここまでつめこんだものだ。

また、この作品から読者をひっかけるテクニックをディーヴァーは会得したらしく、

つまりはディーヴァーらしさはこの作品からスタートしたのだ。

ネゴシエーターの数多いタブーもお勉強になる。

例によってプロ対プロの激突のストーリーはひたすら読ませる。

(一部パクリ)




例によって、気にいった一節。(一部要約)


野ウサギは、自然界でもっとも攻撃性に欠けた動物だ。

守りに徹して生きることを運命づけられている。

(中略)

いったん窮地に追いこまれ、

逃げ場を失ったとなると、

驚くほどの獰猛さを見せて反撃にでる。

目を潰されたり、

はらわたを抜かれて死んでいるキツネや山猫が、

ハンターたちに発見されている。

それは、愚かしくも野ウサギを洞窟の奥に追い詰めたり、

相手をみくびって油断したまま強引に襲いかかった

おごれる肉食動物のなれの果てなのだ。


我々庶民も、追い詰められた野ウサギのように、

“おごれる政府”に反撃する時が来たかもしれない。




次のフレーズには考えさせられた。(前述の下線部の内容)


聴覚障害者の世界では、

同じ障害をもつ両親から生まれ、

言語能力を一切もたない人が一番高いステイタスを得る。

健聴者の両親から、正常な聴覚をもって生まれ、

しゃべることや唇を読むことができると、

同じステイタスは与えられない。

そして、障害者でありながら、

正常な聴覚をもつ人たちに受け入れられようとする人は、

さらにステイタスがさがる。


思うところはたくさん有るが、コメントは避けよう。




そして物語の中に数回出て来る“ギャローデッド・カレッジ”という名の学校。

「世界で唯一の聾者のための総合大学」という注釈が付いている。


調べた。

ワシントンD.C.に在った。
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ギャローデット大学は、すべてのプログラムやサービスを

聾者、聴覚障害者の学生のために設けた世界で唯一の大学である。

連邦議会制定法に基づいて1864年に設立され、

設立許可書はエイブラハム・リンカーン大統領によって署名された。


http://admissions.gallaudet.edu/international/japanese.htm


聾者や聴覚障害者のギャローデット大学の学部生は、

修了時に人文科学、または自然科学の学士号が授与される39分野の中から

専攻を選択することができる。

また、単位取得を目的とした聴者の学部生の履修を

全学生数の5%まで受け入れている。


2010年の秋学期の入学生数は1,793人で、

ギャローデット大学の卒業生は世界中に18,000人以上もいるという。


こんな大学が有る事を知らなかった。




上巻を読み終わり、ほとんどノンストップで下巻を読み始めた。


裏表紙には、

ポターの懸命の交渉とメラニーの奮闘の結果、人質解放に光明が射した。

逃走用のヘリコプターと引き換えに、

犯人側が人質を何人か解放すると約束したのだ。

だが膠着状態に焦った州警察が独断で工場内への突入作戦を開始してしまう。

犯人側は作戦を事前に察知しており、

最悪の事態を恐れるポターは、一縷の望みをかけてふたたび交渉に挑む。



なんだかんだと物語は進み、

とうとう犯人が投降し、事件は解決する。


あれっ、まだ100ページも残ってるけど…


そう、ここからがディーヴァーお得意の…


ただ、ディーヴァーの近刊を呼んでる人には歯がゆい所があるかもしれないが…




危険な橋(ネット購入)を渡って入手した『静寂の叫び』だが、

危険を犯すだけの価値は有った♪




P.S.

今朝の外気温は、

今年初の零下、マイナス0.7℃。

今年2度目の氷、
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霜、そして霜柱(まだ背が低い)。
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今のところピーカン!