歯医者は新型コロナウィルスのワクチンを打てるのか? | こばやし歯科医院 web分院

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歯医者に関すること、庭で咲いた花のこと、鬘の話etc.etc.
役に立たない話が多いですが、気楽にお読みくださいm(_ _)m。


新型コロナウィルスのワクチン接種がようやく近づいてきたこの頃です。
それで問題になっているのが、注射を打つ人数をどうやってキープするかということです。
なにせ、日本国民は1億3千万人もいるのです。
注射を全てお医者様が打つとなると、どのくらいの日数がかかるか検討もつきません。



我が国の法律では注射を打てる資格は限られています。
その中で今回問題になっているのは歯医者にワクチン注射をさせたらいいんじゃないかという意見です。



私も歯医者で、日常的に注射を打っています。しかし、これは口腔内の粘膜に局所麻酔剤を打つだけです。新型コロナウィルスのワクチンは筋肉注射です。打ち方は大分違います。
それでも資格の問題として、注射を打つことができます。



ただ、体制としてこれを躊躇している状況です。その理由が色々と言われています。
聞こえてくる一番大きな意見は、『医師会が反対している』です。



歯医者の一人として言います。そんなわけあるかと(^o^)。



医師会というのは、医者の組合であり、互助会です。会社の労働組合と基本的には同じです。労働組合が会社の方針に文句を言えてでも、会社が決定したことを覆るのは困難です。
勿論労働組合の意向を経営者側が無視できないように、ある程度配慮はするでしょう。
ですが、国の存在に関わるような事態になった時に、国が躊躇するとは思えません。
それ故、国が命令すれば不満があっても基本的に従うしかありません。政府や国会議員に苦情を言うかもしれませんが、それ以上の真似ができるとは思えません。



だからといって歯医者がコロナワクチンの注射を打つ場合、問題があります。



まず、何処で打つかです。歯科医院でワクチン注射を打つのは問題があります。設備などで対応しきれません。注射器はディスポーサブルのものを使うとしても、滅菌体制一つをとっても難しいです。ワクチンを低温保存できる冷凍庫もありません。大体、歯医者は注射を打てても、歯科衛生士は注射を打てません。



となると、注射を打つ会場に歯科医師を派遣するという事になります。
この場合は、医師などからレクチャーを受けて注射を打つことになります。
それ自体はそれほど問題はないでしょう。



ですが、そうなると給料問題が大変なことになります。
通常資格持ちの人間を一日拘束するだけで、5万円ぐらいかかります。仕事をさせるのなら、その倍はかかるでしょう。歯科医師が派遣される場合、歯科医院を閉めなければいけません。となると、休業補償の問題があがってきます。



だから、歯科医院を閉めて歯科医師を雇う場合、1週間で百万単位のお金を請求されても不思議ではありません。高いと思われるかもしれませんが、歯医者側にも生活があります。幾ら非常時とはいえ、タダ働きはできません。



仮にそこまでやっても、歯医者の1割が協力したとしても、コストパフォーマンスが悪すぎます。



現実的な問題点を挙げていくと、厚生労働省のお役人や国会議員が頭を抱える事態になること間違いありません。というより実際なっているのでしょう。



そうなると、現行の法律内で行政側も歯医者も負担のかかり過ぎない範囲で歯医者に手伝わせるということになります。
具体的には週に1日とか2日といった感じで、歯科医院が休みの時に歯医者を手伝いに呼ぶぐらいが妥協点でしょう。週に1日と思うかもしれませんが、マンパワーが足りない所に僅かでも援軍があるとないでは大違いです。



これだと歯医者に日給を払うことになっても、休業補償はしなくていいことになります。勿論ワクチン接種の際に感染した場合などのケースもありますので、ある程度の保障は必要でしょうが、街中の歯医者が全部休業という事態はないでしょう。



それでは、歯医者を実際にワクチン接種会場に参加できるかというと、これも疑問符がつきます。現場が混乱するに決まっていますから。



医者と歯医者は別業種です。歯医者は注射を打てる資格を持っていますが、実際には粘膜注射しかしたことがありません。そんな人間に筋肉注射ができるかというと、未知数です。少なくとも、マニュアルを作って、ある程度教育をしなければいけません。



ですが、そんな余裕はあるでしょうか?
動員された医師やスタッフが疲労している横で歯医者に筋肉注射のイロハを教える。
それもズブの素人ならまだしも、他業種で活躍している人です。



たとえるなら、人手不足でブラック勤務になっているところに、素人を導入するようなものです。それも若人でなはく、他業種で部長ぐらいになった年配者が。
頭ごなしに教えられるわけがありません。凄く面倒な状況が予想されます。
ノートラブルと考えるのは、よほどの楽天家でしょう。実際はトラブルが山ほど発生するでしょう。そして、その責任は誰が、どうやってとるのでしょう。そのあたりを明確にしないといけません。



……現場からは苦情が出るに決まっています(^^;。



少なくとも、現実問題として現場レベルでは歯医者の動員は、短期的にはメリットよりデメリットの方が大きいでしょう。これを乗り越えるには、色々と問題を洗い出して、マニュアルを作って……と、延々と作業が必要でしょう。



緊急時にそんなことをする余裕があるとは思えません。それ以前に、この状況を調整する行政側に、そんな真似をできる余裕があるとは思えません。



それなら、ズブの素人に臨時資格を与えて兵隊として使った方が、トラブルが少ないでしょう。



『歯医者にワクチン接種の注射を打たせる』というだけでこれだけ問題があるのです。
実際に歯医者を現場に動員して、トラブルが起きた時の保証問題とか考えると、更に問題が増えていきます。



……関係者の誰もが及び腰になるのは無理もないかと。



言い換えると、反対しているのは、医師会だけではなく、歯科医師会や行政側など関係者全員だったとしても不思議ではありません。というより、そうなのでしょう。
えぇ、『医師会が反対している』だけでなく、関係者全員が余計な仕事やトラブルを増やしたくないので、反対しているのが、実情なのではないかと。



つまり、ワクチン接種で注射を打てる人が足りないから歯医者を動員しようというアイデアは、素人考えであり、これを行政が実行するためには、様々なハードルを超えなければいけないということです。



現実的には、行政側がそのあたりを対策を必死に検討している段階だと思います。
いや、本来ならこの種の議論はパンデミックが発生する以前に議論し、法制化し、体制を整え、定期的に訓練をすべき案件です。今回のコロナのパンデミックは予想できないという意見は同感ですが、新型インフルエンザなどパンデミックが予想される事態は幾つもありました。その為に、非常事態には国民の主権をある程度制限して、対応するという体制を作るための議論は、当然ながらありました。



……主に野党が潰しましたけど(^^;。



あの人たちは、戦前の日本をを連想させる事態は、脊髄反射レベルで反対します。
与党側もそれがわかっているので、あえて深入りしませんでした。
というより、この議論は最終的に憲法改正まで行きつくので、皆逃げるんです。



そんな事なかれ主義が横行した結果が今日です。
法体制はこれから準備する。
体制が整わないまま、現場に責任を押し付ける。



……そりゃ、誰だって逃げますよ(^^;。



それなので、『医師会が反対している』というのは、上がすべきことを放置したのに、その責任を現場に押し付けるんじゃないという怨嗟の声の現れだと思います。実際に医師会側がそんな発言をしたというのは、問題じゃありません。医師会のみならず、現場の医師、歯科医師会、お役人、関係各位の拒絶反応の現れなのでしょう。



それなので歯医者が新型コロナウィルスのワクチン接種をできるようになるには、上記した問題点の解決が済んだ後のことでしょう。そのために国会で法案可決が必要か、政府の決定で押し切るかはわかりませんが。



……普通に考えて数か月単位の時間が必要ですね(^^;。



そして、準備が整ったころには、ワクチン接種のピークが過ぎている可能性が高いと思います。



それなので、以上に話した理由で、歯医者がワクチン接種に駆り出される可能性は低く、あったとしても限定的なものになるだろうと思います。



一応私としては、そういう要請が来た時には、立候補するつもりでおります。
そんな日が来たら、こちらで報告します。





写真は撫子<テレスター>です。
去年植えてそのままにして置いたら、また咲いてくれました。
ただ、去年は白い花だった記憶があるのすが、今回は紅色です。
不思議です。

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