こんばんは。主宰です。
南九州海洋生物研究会の終了後間もなく、ハダカイワシを採取するために南星丸に乗船してきました。ハダカイワシ科魚類は中深層に分布する魚類で、世界の海洋には食料となる魚類をはるかに上回る資源量が存在するといわれています。我々の研究室では、これらの資源を有効活用するための研究を進めており、鹿児島湾に分布するイワハダカという魚類をモデルとしています。
どんな魚類でもそうかもしれませんが、ハダカイワシ科魚類を効率よく大量に採取するのはなかなか難しく、これまでとても苦労していました。そのため、漁網を特別に製作して曳網することにしました。この乗船では、その曳網試験が目的です。この研究では、ハダカイワシ科魚類を音響装置で研究している北大水産学部の安間さんに協力してもらっています。安間さんは、久米さんの同窓であり、私も若いころに何回か学会などでお会いしたことがある人です。この乗船には、漁網の深度を測定できる装置をもってきてもらって、新しく製作した漁網が深層散乱層をうまく曳網できているかどうかを調べました。
これが新しく製作した漁網です。ステンレス枠に大型動物プランクトンが採取できるような網を取りつけているだけの簡単なものですが、予想以上にうまく曳網できました。
これが採取された標本です。表面に浮いているのがイワハダカ・ヨウジエソ・キュウリエソになります。赤色のものは、カイアシ類・オキアミ類などの動物プランクトンです。
この採取された標本を、みんなで分担しながら分けていきます。この乗船は、研究室に新しく配属された新卒論生の技術習熟を兼ねているので、新卒論生たちにやってもらいました。かごしま丸の乗船実習にも参加してくれてたので、たいへん手際よくやってくれました。ありがとう。
標本から分別したものがこちらです。イワハダカが綺麗に採取できてました。以前、トロール網で採取したことがありますが、こちらよりも状態はよいようにおもいました。枠が小さいので量的にはたくさん採取することができませんが、目的深度を正しく曳網できていることが確認できたので満足です。うちの研究室には深度を測定する機器がないので、新しく購入することを考えています。たいへん高額なので、安間さんに部分的に機器を借りながら、揃えたいとおもっています。
この乗船では、水中ドローンもやってみたいということで、安間さんの機器を持ってきてもらいました。かなりコンパクトで、軽かったです。安間研究室の学生さんに操作してもらったのですが、操作性も簡便みたいです。
こちらが水中画像です。いや~、かなり衝撃的でした。プランクトンネット曳網した標本を検鏡したデータでは、海水1トン(一人暮らしのアパートの風呂サイズ)あたり数千~一万数千個体くらいの動物プランクトン数になります。1リットルあたりに変換すると、数~数十個体ですかね。でも、水中ドローンの画像をみると、その数よりももっと多くの粒々が観察されたようにおもいます。遊泳パターンがカイアシ類と認識できるものもあったり、イワハダカと思われる画像も撮影できました。標本解析の末に可視化された図をみるより、はるかに衝撃的・印象的な動画でした。加工して、いずれこのサイトに掲載したいとおもいます。
かなり面白くて刺激的な航海でした。今後は、この高揚した感情が消えないうちに、中深層性魚類に関する研究課題を立案したいとおもいます。