こんばんは。主宰です。
本格的な海洋観測が始まりました。幸運にも、天候・海況は非常によく、黒潮上流域から下流域に向かうラグランジュ観測なので、常に半袖で作業ができるほどです。2日目以降からは、観測班と作業班に分かれて生活します。観測班は観測点に到着するごとに海洋観測・サンプル処理作業に従事し、作業班は食事の配膳や片づけ・清掃などを行います。
観測班は、さらに作業を細分化しています。海面下の環境を測定するための機器を操作する班、プランクトンネット曳網とサンプル処理をする班、大型リングネット曳網とサンプル処理をする班、船尾で曳航観測する班に分かれます。
観測点到着後、最初に観測するのはプランクトンネット曳網です。到着してから準備していると無駄に燃料を消費するため、15分前に来て準備します。
プランクトンが採取されたら、ネットを綺麗に洗ってサンプルを回収します。また、プランクトンネットで濾過した水量を把握するため、濾水計の回転数を読み取ります。
回収したサンプルは、分割器を使って配分が均等になるように分割していきます。顕微鏡解析するための標本、生物量測定するための標本、遺伝子解析するための標本、酵素活性測定するための標本を作製します。
プランクトンネットの次は、CTD観測です。水温・塩分などを測定する環境センサーを海中に降下させるため、パソコンで操作しているところです。重機を使用するため、甲板で作業する船舶職員と無線で連絡しながら作業を進めます。
CTDを降下させている時には、水温計を使って表面水温を測定します。海面から出すと気化熱で水温が過小評価されるので、海水につけたまま、小数点以下1位までを拡大鏡を使って読み取ります。
CTDでは、採水することもできます。異なる深度から採水して、どれくらいの栄養塩が含まれているかを測定するためのサンプルを採取します。環境中に存在する栄養塩に、汚染物質が入らないように慎重に操作します。
CTD観測の次は、大型リングネット曳網です。船尾から降ろして斜行曳し、仔稚魚を採取します。船橋での操船、甲板とのネット降下を無線で連絡しながら慎重に進めます。船尾には推進器があるため、大型リングネットが推進器に巻き込まれないよう慎重に操作しなければなりません。
大型リングネット曳網が終わったら、コットエンドに溜まったサンプルを洗いながら回収します。大量の海水を濾過するので、回収するサンプル量も大量になります。
大型リングネットで採取されたサンプルから、研究対象となる分類群を識別・分別します。対象となる分類群は、動物プランクトンでは、カラヌス科・ユウカラヌス科・ユウキータ科・アエティディウス科・メトリディア科カイアシ類、端脚類、オキアミ類、十脚類、翼足類、頭足類、毛顎類です。仔稚魚では、レプトセファルス幼生(アサバホラアナゴ・ギンアナゴ・その他)とその他仔稚魚です。船体が揺れるだけでなく、対象分類群が遊泳するので、正しく識別・分別することはとてもたいへんです。しかし、一生懸命取り組んでくれて、大量の研究標本を確保できました。乗船を経験した水産学部生の強みは、こういった努力によって涵養されるものとおもいます。








