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ばなな先生とよかよか学院校長。
お母さんを応援プロジェクトとして、
元教師の僕が日本中のお母さんに
「それでいい」
を届けています。
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あなたの仕草が好きなんだよなぁ その1
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先生をしていたときの教え子に
谷ちゃん(仮名)がいました。
谷ちゃんは、水泳が得意でした。
得意というレベルどころのさわぎではなく、
所属しているスイミングスクールの強化選手で、ジュニアオリンピックを目指していました。
「何の泳法の選手なの?」
ぼくが聞くと
「ば、バッタ(バタフライ)」
とおずおずと答えます。
簡単な質問にもはにかんでうつむいて絞り出すように答えます。
ぼくはそのしぐさがとっても大好きでした。
授業中に「谷ちゃん」と突然指名してもその反応は同じでした。
とっさに右手を後頭部のあたりにあてて
「でへへへ」ってうつむくのでした。
答えるのは苦手でも、何事にも真剣に取り組んでいました。
ポートボールでのボールをカットする素早い動きや、
理科の実験器具を丁寧に運ぶところなど一枚の写真を見るように思い出せたのでした。
それから、20年近くが経ちました。
ぼくは息子が通うスイミングスクールに定期的に泳ぎに行っていました。
保護者だと格安で大人会員になれるのでした。
フリースイム、という自由に泳げる時間帯があり、
ぼくは我流で泳いでいました。
すると、選手コースの子ども達とシャワーの水をひっかけあっているコーチがいました。
見かけない方でしたので、新しい方が入ったんだ、くらいに思っていました。
じつは、それが谷ちゃんでした。
そんなあるとき、ぼくは水泳指導回数券というのを購入して、
インストラクターに教わってみたくなりました。
バタフライをマスターしたかったのです。
準備運動を終え、シャワーを浴びようとすると、せんせい、と声をかけられました。
「覚えていますか、た、谷山です」
そう言われて、最初は誰なのか分からなかったのですが、
ぼくと目があったら右手を後頭部に当てたので
「あっ、谷ちゃんだ」
と思い出したのでした。
「まだ泳いでいたんだ?」ぼくが尋ねると、あれからずっと、と。
大学までずっと泳いでいて、こちらの系列のスイミングスクールに就職し、転勤でここにやってきたそうです。
念願だったジュニアオリンピックにも出場していたそうです。
一度記憶の糸がほどけると、あとはずるずると思い出されるもので、
あのころからバタフライが得意だったこと。
兄弟関係や家族構成が次から次へとで出来ました。
「よく覚えていますね」
谷ちゃんの方から感心されてしまいました。
レッスンが始まりました。インストラクターはもちろん、谷山君です。
列になり、谷ちゃんの提案するメニューを次々こなします。
谷ちゃんは、生徒さんが自分の所まで泳いでくると、手を取ったり足を取ったりしてその方をサポートします。
列を見渡すと、ぼくより年配の、そして常連らしい方ばかり。
数人のペアでお話をしています。
そして、谷山君は、と見ると
説明の度にそんな常連の方にいじられて右手を後頭部にあてて笑っています。
その笑顔は小学校の時のままでした。
「あ、こちらの方、ぼくの小学校時代の先生です」
突然ぼくをみんなの前で紹介しました。
一斉にコチラを向いたので
「谷山をよろしくお願いします」
とボケてみました。
つづく