リスの物忘れ

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何も物忘れをするのは人間だけではないらしい。

あるテレビドラマを観ていたら、交通事故にあい、一部の記憶を失って苦しんでいる彼女に彼氏がこんな話を持ち出して慰めていた。

「動物のリスを知っているだろう。リスは冬に入る前に、松ぼっくりを二つ拾って来るんだって。

一つは今食べるために、そしてもう一つは冬に備えた備蓄用に…。つまり冬を越して春になったら食べようと土な中に埋めるらしいよ。

でも春になっても、埋めたはずの松ぼっくりを食べられないリスが結構多いんだって。何故だと思う?」

彼女は黙ったまま彼氏の話に耳を傾けた。

彼氏はこう続けた。

「リスは自分が松ぼっくりを埋めた場所を忘れてしまうからさ。でも、このリスの忘れる習性こそが、エサを絶やすことなく、自分たちの子孫繁栄に繋がっているんだよ。

何故なら、忘れ去られたどんぐりは、土の中で育ちまた木となって育ちまた沢山のどんぐりを実らせるからさ。

リスはそうやって、自分たち仲間のリスばかりか、他の森に住みつく動物や森全体を守っているんだから凄いよね。」

この話を聞いて彼女は、いく分安堵の表情を浮かべながらうなずいてみせた。

この「リスの物忘れ」は結構知れ渡っている話ではあるが、この厳しい自然界でリスが生存競争に勝ち残っている理由の一つは、物忘れしないリスではなく、物忘れするリスのおかげだとは何とも皮肉な話である。

そう考えると、リスの物忘れもそれなりの意味があり、未来への投資行動だともいえると思った。

このドラマを観終えて僕は、物忘れが激しくなったと嘆いている母にこの話を聞かせてあげようかと思った。

いや待てよ!その前に、最近物忘れが多くなってきた自分に言い聞かせて、前向きに考える事の方が先かな(笑)。

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