いつもハートウォーミングな作品で楽しませてくれる森沢さん。今回も間違いない。本文が487ページと、かなり長くて、読み終えるのに手間取ったが、後悔はないな。

倒産間近なバス会社、唯一人気なバスツアーが、失恋バスツアー。

失恋者を集めたツアーで、ひなびた旅館や寂しげな観光地を巡り、食事も質素なもので、落ち込んだ気持ちを底まで落ち込ませることで、最後には上がるだけの心境に至らせることを目指したツアーバス旅行。

企画の発案者である添乗員龍太郎も、今回はなんと失恋者。このツアーにフリーの心理学カウンセラーとして同行していた小雪と、恋人関係だったが、ささいな言葉のやり取りの行き違いから、失恋してしまう。この旅行の最終日が、小雪の誕生日とあって、指輪を用意し、最終日の夜にプロポーズする予定だった龍太郎にとっては、なんとも悩ましい。

しかも、意地悪な上司が選んだツアー客は、一見、一癖ありそうなおかしなものばかり。はたして、無事にツアーはできるのか?

いくつものハプニングにより、戸惑いながらも、進むツアー。龍太郎が気づかない小雪の秘密に気づいた客たちは、意外にも小雪を守るように行動し、最後には二人を結びつけてくれる。

なかなか読みごたえがある楽しい作品だった。

明治維新から10年、西郷隆盛の西南の変が鎮圧された後に、起きた内務卿大久保利通の暗殺事件。そんないまだ治安が安定していない時期に、日本を訪れた英国の女性旅行家イザベラ・バード。彼女は都会や名所をみたいとは言わず、辺地を探検したいと希望する。

英国では有名な旅行家であり、旅行記も人気な作家とあり、日本政府も断ることもできず、苦慮する。大勢の人間をつれていくのも嫌だと拒否され、仕方なく、ボディガードを兼ねた通訳を雇うことにした。

それに選ばれたのが、当時上野の西洋料理店で、外人客の世話係をしていた伊藤鶴吉。神奈川の出身で、度胸もあり腕っぷしもある上に、通訳としても優秀だった。

東京からまずは日光へ、そこから新潟まで足を伸ばし、船を乗り継いで、日本海岸を北海道まで行く旅だった。  この作品では、新潟に着くまでの旅が描かれる。

著者はその旅にバードを狙うものがいるという設定をもうけ、鶴吉の助っ人として、別に政府から金銭で雇われたものを登場させる。

刺客となるのは、反政府活動をする自由民権運動論者と、それに金銭で雇われた不平士族たち。政府の客人に事故などかあれば、政府と外国の対立を招き、政府を慌てさせられるというもくろみ。

話は、鶴吉らと刺客たちとのやり取りが主として描かれ、いわば明治冒険物語とでも言えるものと言える。

とはいえ、バードの旅行記「日本奥地紀行」から、とられたと思われるバードの感想や鶴吉とのやり取りがユーモラスに描かれていて、なかなか楽しいし、興味深い。

バードの旅行記には、以前にも別の小説で、バードと通訳のやり取りを読んで、興味を覚え、旅行記を買おうかと思ったが、読み通す自信がなく、いまだに果たしていない。

バブルの頃にもてはやされたものの、中年を迎えた今は、不遇な生活を送っている人々が集まり、人生の敗者復活戦に挑むまでを描いた連作集。

最初に登場するのは、大学時代にスカウトされ、テレビ番組で冒険の旅をして有名になった立花浩樹。旅をしながら撮影をしていた。ブームが終わると共に、所属事務所の多額の借金の連帯保証人として、一人借金返済をするはめにおちいり、やっと返し終えたら、四十代。なにもする気になれず、故郷でぐうたら生活を送っていた。

そんな彼が変わるきっかけは、毎日見舞いに行っていた母親がいる病院 。母が息子が写真家だったと自慢したことがきっかけで、同じ病院にいた老女を携帯で撮った写真だった。老女の気持ちが素直に出ている写真は、老女ばかりでなく、その家族にも好印象を与えた。

老女の息子で映像会社に勤めていた宮川。半ば婿養子の妻と、会社をリストラされたことがきっかけで、喧嘩し家を出たものの、いくところがなく、 浩樹のもとに居候し、撮影助手をするようになる。

さらに、浩樹が住んでいたシェアハウスに前からいた美容関係に詳しい女性、寛子。浩樹が撮影する女性に、化粧のアドバイスをしたことがきっかけで、仲間になる。

さらに、浩樹の大学時代の友人や、落ち目の芸能人らが知り合い、一緒に撮影したり、ネットにあげて、評判となり、新たな道が開けていく。

そんな彼らのサクセスストーリー。