磯貝探偵事務所シリーズ。

もと警官で探偵業を営む磯貝のもとに、旧知の小樽の料理旅館の女将の青河文から、依頼が来る。彼女の幼馴染みで、今は人気女優の西條真奈の姉の失踪を調べてほしいと。

商社勤務から北海道知事の特別秘書になっていた姉、紗理奈。数ヵ月前に、辞職を申し出てやめ、住んでいた部屋も引き払い、以後連絡がとれなくなっていた。

調査を引き受けたものの、はじめはまるで手がかりがなく、五里霧中。真奈は二歳の時に母親に死に別れたと聞かされていたが、実は違っていた。三十年前に、ファッション店の店長だった母親は、仲間とフランスから帰国した羽田空港で失踪していた。しかも、その後に薬物の運び屋の疑いで、警察か来ていた。結局失踪したまま。

その母親が使っていたスーツケースのことを紗理奈が友人に聞いて調べていたことがわかる。似たスーツケースを見たことがあるらしい。それがどうやら雇い主の知事らしい。薬物を運んでいたのは昔の知事か?真奈の母親は同じスーツケースを持っていたために、間違えられてさらわれ、始末されたのか?

とんでもない事件が浮かび上がるも、いまさら証拠もなく、迷う磯貝だったが。

頭がいいと言われていた姉だし、もしかして失踪ではなく、自ら身を隠した可能性もあると考えた磯貝は、ついに姉を見つけ出す。

公には知事の悪事は暴けないが、次の知事選では現在の知事を引きずり下ろして、自らが立候補すると宣言する姉。

まあ、あり得ない話だが、なかなか面白かった。

間借り鮨まさよ、シリーズ第二作。

やっさんシリーズのやっさんのようなまさよ。自分の店を持たず、他人の店の昼時だけを間借りして、握り寿司を開くまさよ。

今回最初の話は、ベトナム人の母親と二人暮らしする小学五年生の舞依。本国に帰った母親が予定通りに戻らない上に連絡とれず困っていた。偶然入った子供食堂で間借り鮨を開いていたまさよと知り合う。心配したまさよがあれこれと面倒を見る人情話。

第二作は、今は落ち目のロックスターの最後のツアーに同行して、鮨を握るまさよ。ひとりよがりなスターを襲う困難に首を突っ込み、彼の再生の手助けをするまさよの活躍。

第三作は、まさよが修業時代の先輩が故郷の山梨で開いた鮨店。息子夫婦があとを継いだものの、脳梗塞で倒れ、間違った方向に進もうとしてもそれを止められず、まさよに頼ってきた。みかねたまさよは、二階に間借りしなから、寿司屋の本分に目覚めさせるために、若夫婦を再教育して手助けする話。

まるでやっさんと同じだが、それでも楽しめた。

事件の舞台が私がすむ岐阜県の郡上だと知り、読んでみたくなった作品だが、なかなかよかった。

冤罪被害者支援のために、アメリカの制度を真似て作られた弁護士や各界の学者らにより結成された団体チーム・ゼロ。彼らのもとに、死刑囚宮原から、私は無罪だという手紙が届く。平成八年八月に郡上躍り最中の米穀店で、一家四人が殺されてるのが見つかる。手提げ金庫が奪われ、近くの川の橋の下で見つかる。

現場に残された凶器の台所の包丁の柄にあった指紋が、前科のある宮原のものと一致したため逮捕された。躍りながら酔って寝てしまった宮原には記憶がなかった。指紋が決め手になり、ついに死刑宣告された。

いくら冤罪かもしれないとはいえ、真犯人の当てもなく、証拠もないことから、チームは扱うのを渋るものの、チーム代表の弁護士東山が、自身の進退をかけても無罪だと主張して、ともかく扱うことになる。

しかし、どうやって無罪を勝ち取るのか?

自供供述書に不審があると指摘した東山。他にもなにかを知っているようだが、明かさない。のちに、少女時代に偶然犯人を見かけたことがあって、宮原が犯人ではないとわかっていたらしい。ただ、無実を実証しないと、再審もされない。やがて、彼女の記憶にある特徴をもつ真犯人が浮かび上がるも、事件直後に事故死していた。

東山が隠し持っていた秘密兵器は、現代の科学捜査では常識である指紋鑑定に間違いがあったというものだった。そんなことがありえるのか?

当時の鑑定官の一人にそのおそれがあるときき、再審にもちこむが、誰かの妨害により、証言を覆されて失敗。

さらには東山までもが殺されてしまう。チームが再審不可能として拒否したあとに自殺した遺族に恨まれての殺害で、誰かが東山を陥れたらしい。

東山の死を乗り越えて、チームは捜査を続け、ついに凶器の指紋の際鑑定に持ち込み、宮原よりも一致する別の指紋があることを立証し、再審を勝ち取る。