平安時代に、ひらがな、カタカナができるまで、日本語特有の文字はありませんでした。
しかしそれでは、後世に何も残せないので、古事記の頃から万葉仮名(まんようがな)が使われるようになりました。
万葉仮名は、日本語の音を表記するために使われていた文字です。
本来、漢字には意味がありますが、万葉仮名は、主に漢字の音読みを利用して表記したものです。
その名残りが、「亜米利加」のようなものです。
ひらがなは、万葉仮名の草書体をくずして、「安」から「あ」、「以」から「い」、「宇」から「う」のように作られたものですが…
万葉仮名の「あ」は、「安」だけではなく、「阿」「愛」「亜」「悪」なども使われていました。
「い」は「以」「伊」「移」「意」、「う」は「宇」「有」「雲」「憂」「羽」というふうに…。
「心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどわせる 白菊の花」(百人一首)の作者、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)の和歌に、
「塵(ちり)をだに すゑじとぞ思ふ 咲きしより 妹(いも)とわが寝る とこなつの花」があります。
これを三蹟の一人、藤原行成が書くと、こうなります。(『関戸本古今集』〔伝藤原行成筆〕より)
このままではほとんど読めないので、解読して楷書に直していくと、こうなります。
「遅(ち)利(り)乎(を)多(た)尓(に) 須(す)恵(ゑ)しと曽(そ)おもふ 散(さ)起(き)しよ利(り) いも登(と)わ可(か)ぬ累(る) 東(と)こ那(な)つの花」
最後の「花」だけが本来の意味、まるで暗号の解読ですね。
仮名の書を鑑賞するとき、せめて何と書いてあるか読めるようになりたいなぁ…と思います。
本日も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。