2枚の仏像を描いて |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

◆ cinemazoo-ダンボール地の菩薩様
段ボールに描いた如意輪観世音菩薩さま
金やパールのパステルを使っていますので、
原画とはかなり違っています。

◆ cinemazoo-パステル菩薩様
同じく如意輪観世音菩薩さま。
こちらはキャンソンボードに蒼系のパステルで。


さて、どちらを先に描いたでしょう?


同じ如意輪観世音菩薩さまを
同じ人=私が描いていますが、
明らかに違いますよね。

先日の菩薩さまの話の続きなんですが、
仏像を描こうと思ったことは、
これまでになかった5*です。そんなところへ、
去年の秋の終わりのことでした、
ある殿方がコノヨウナモノを
アトリエにお持ちになりまして・・・。

◆ cinemazoo-金塗り菩薩像
「描いてほしい」
というご依頼をいただいたのです。
ちなみに写真は制作中の様子です。

お持ちになったものは、
中宮寺・如意輪観世音菩薩さまのレプリカでして
昭和の初めに ある作家さんが作られたもの。
木彫ではなく漆箔の菩薩像です。
中宮寺の菩薩さまとは仕草は同じなんですが…
ちょっと表情には“丸み”があるような?

それまで中宮寺へ行ったことのなかった私は、
当然、如意輪観世音菩薩さまも拝んだことがない。
そこで、ご依頼主が資料としてお持ちくださった、
如意輪観世音菩薩さまの写真集をパラパラと見ました。
すると、実像は漆黒、レプリカは金塗、
どちらを描けばいいのかココロが迷ってしまい、
描こうとしても描けない。
そもそもレプリカにしても、写真集にしても、
すでに、どなたかの作品ですし、
それを模写したところで、
ご依頼主さまは満足くださるだろうか。

悩みに悩んだあげく、年が明けてしまい・・・

結局、年明けすぐに
実像を拝観すべく斑鳩へ参じたわけです。
すると、想像していたよりも菩薩さまは お小さい。
しかも漆黒のお姿ゆえ、
薄暗い本堂では輪郭がボンヤリとしか見えない。
けれども私は、かつて菩薩さまが
極彩色だったという遠い昔には、
暗闇の中でそれはそれは際立っておられただろう。
当時はロウソクの ほのかな明かりに包まれて、
鎮座なさっていたのだろうな、と
いにしえに想いを馳せたのでございます。

“現場”へ参じたところ、
私は“実際の像”ではなく、
心の中に残っている菩薩さまを描くことにしました。
それはたぶん、いにしえ人が
極彩色の菩薩さまを薄明かりの中で、
拝み敬っていた心に似てたと想像します。

依頼主さまのレプリカ像はスケッチの参考として、
お借りした写真集も同様に資料として傍らに置き、
ひたすら菩薩さまの“印象”を蒼い世界に写し、
出来上がったのが『蒼 如意輪観世音菩薩』。
そう、青い色のパステル画を先に描いたのです。

あとは、これを額装するのみ、となった時点で、
依頼主さまに「もうすぐ絵をお渡しできますよ~」と
お伝えしたところ、なんと、依頼主さまがこんなことを。
「楽しみですな~
 あの、金の菩薩さまが、どういう絵になったのか」
・・・・え"。
ちょっとちょっと、依頼主さまはもしかして、
金塗のレプリカをズバリ描いてほしかった…?
黒い本像はもしや、お好みでない…?
蒼い絵では満足いただけないかも…?

慌てて私はもう一枚描いたのでした。
今度はレプリカ像を目前に置き、
金塗のザクッとした質感を再現しなければと、
段ボールを画材に選びました。
また、立体感を出すべく、段ボールに凸凹をつけたり、
部分的にボールペンを使ったりもしました。
この時はもう迷いはなかったですね。
レプリカを私なりに描けばいいんだと
着地点がはっきりしていたので。

はたして、2枚目の絵が完成しました。
レプリカ像に比べると、
ザックリした感じはあまり出ませんでしたが、
絵の大きさが葉書2枚分と、さほど大きくないので、
これはやむなしということで。

こうして、2枚の絵を額装し、
依頼主さまにお見せする日がやってきました。
「どちらかお好みの方をよかったら」
おずおずとこう言いますと、
依頼主さまが選ばれましたのは…?

言わずもがな、2枚目の絵。
ありがとうございましたっ!

かつて、最初に描いた『蒼 如意輪世観音菩薩』の絵は、
一路、東京へと旅立ったのです。
『お守り展』を経て、今もなおアートラッシュさんにて
展示いただいております。

一方、2枚目の『如意輪観世音菩薩』の絵は
依頼主さまのお店で大事にしていただいています。
奈良は下御門商店街にある『町屋空間』内の、
お面屋さんです。近くを通られましたら、
ひょっこり見てやってくださいね。

2枚の仏像絵を描いてみて、
5*らしさというものを思い直した気がします。
今後、仏像を描く事は積極的にはしないと思いますが、
仏像の手や表情などは、
今後も「私らしい表現」で描くでしょうね。

繰り返しになりますが、
仏像って、やはり誰かの作品です。
私に限っていうと、
描くためにはすっごいパワーが必要なんですね。
これらの大事なことを
きちんと気付かせてくれたのは
如意輪観世音菩薩さま。
苦行ではありましたが、
心から感謝しております。有り難や。

合掌。




クローバー 中宮寺 如意輪観世音菩薩

クローバー『お守り展』好評のうちに終了しました
ありがとうございました。


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ただいま3月末まで冬休み中です。

やぎ座5*SEASON's サイト
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