グレゴリー・コルベール |  ◆ R I N G O * H A N

 ◆ R I N G O * H A N

歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー


『蒼い空ろい』



グレゴリー・コルベールの映像を初めて目にしたのは、
つけっぱなしにしていた深夜のテレビだった。
ニュース番組の特集で、あの時、
ほんの わずかに紹介された彼の世界に、
ひどいくらいの郷愁と共感を覚えた。
野生動物と人間が同じ目線で
ひとつの枠に収まっている、
神秘としか例えようのない表現。
動物とヒトの垣根はなく、
空気で会話するかのような生命たち。
動物と人間の驚異の交流だと絶賛するテレビ。
そこにサーカス的な調教の跡はまったく見えない。
いったいどのようにして“複種の生”を捉えたのか、
作家の手のうちを想像するも解明できなかった。

グレゴリー・コルベールの名を知ってから、
彼の作品を生で見ることができたのは、
ずいぶんと年月がたった今年のこと。
映画を観に行った六本木ヒルズで偶然、
彼の作品展を開催中で、嬉々として足を運んだ。
感激。
セピア色の映像の中で見事に調和する生き物。
想像力を掻き立てられ、ため息とめまいを繰り返す。
その空間には映像だけでなく、
和紙に焼きつけられたセピア色の大写真もあり、
それらは映像とは別の強い伝言を見る側に残す。
全ての写真は空中に吊られて展示されており、
床には写真の影が細く長く伸びていた。
“神秘”は影があってこそ、
私たちに光をもって届くのだ、と感じた。

そうして、感激と同時に驚きもあった。
コルベールが私と同じルールをもっていたこと。

私が絵を描く時に よく使うルール。
人は目を閉じ、動物は目を開ける。
これは人が肉眼では見えない“自然の気”を
「心の目」で感じることを含んでいるが、
コルベールの作品も そのほとんどが
人は目を閉じ、動物だけが目を開いている。
コルベールのルールの意図は
私とは違うものではあるとしても
人は神秘を描こうとするとき、
同じことを考えるものだ、と思った。

六本木ヒルズで観た展覧会は、
現在お台場で開催中のコルベールの移動美術館
『ashes and snow 』のプレ・イベントっぽく、
コルベールの世界を堪能するには
やや物足りなかったけれど、あの時点では
海の向こうのお台場まで出かけるのは おっくうに感じた。
が、しばらくして、
一緒に観ようと言ってくれた友人がいたので
4月の初めに はるばるとお台場まで遠征しきた。

六本木ヒルズのあれは、
コルベールの入り口でしかなかったのだ。
世界中を建物ごと移動している美術館で、
地球の神秘を充分に堪能することができた。
クジラと泳ぐ男性、象の前で踊るダンサー、
オランウータンに手を引かれる女性。
輝く大地、光る水辺。
刺激もあった、掻立てられる想いもあった、
けれど・・・キレイすぎるかもしれない、
泥臭さや影の部分も欲しいかも、
こんなクールな感情も同時に湧いて来た。
きっと、私の目がクールになったのだ、
コルベールが創作した神秘図を
平然とアート作品として受け止めた。

あー慣れはコワイ、不感症になるのも嫌、でも、
コルベール信者ではない自分に気付けたのは有り難い。

いじわるな視点がもうひとつ。
ショップで売ってたコルベール商品が
高過ぎやっちゅうねん。
いくら手作りといっても東南アジア製。
う~む、売上金の一部を どこかに寄付でもしてるのかなぁ…
などと首を傾げながらも
お手ごろ価格のスクリーンセーバーとシールは買うたがな…。


*Home*

●『ashes and snow グレゴリー・コルベールの世界 』サイト
建物自体もアート。6月24日までお台場にて開催中。おススメ!