ルワンダの涙 |  ◆ R I N G O * H A N

 ◆ R I N G O * H A N

歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー


『A DOG』



『SHOOTEING DOGS』。
この映画の原題。
邦題で『ルワンダの涙』としたのは、
ある意味 観客への気配りと
商業的安心路線を選択した企業映画の
賢い選択だろうか。
けど、この映画は涙という
センチメンタルな一文字で表せる程、
生易しい類いのものではない。
とても残酷で、とてもリアル。
私が邦題を付けるとしたら、
『ルワンダの地獄』。

『SHOOTEING DOGS』とは
直訳すると「犬を撃つ」。
映画ではフツ族に虐殺されたツチ族の死体の山を
生きるために貪る犬を撃って
始末してしまうことを意味する。
犬たちの行いが、あまりに無惨で正視できないから、
始末してしまおうと提案する人物が 映画の中にいる。
それはベルギー平和維持軍の大尉で、
彼は悪魔に憑かれ、鉈で虐殺を繰り広げるツチ族については
ただ傍観するのみだった。
ここに矛盾がある。

狂気のフツ族に向かって、
ベルギー平和維持軍が銃でもって応戦するのは、
けして正当だとは言い切れないが、
せめて、威嚇のための発砲ぐらいは
犬を銃で撃つぐらいならやるべきではないか?
地獄絵図そのものの殺戮シーンを目の当たりにして
私はそう思ったし、そんな苛立ちの感情を
ほとんどの観客も、当時、虐殺される側だったツチ族も
いだいたのではないだろうか。

『ルワンダの涙』はルワンダ大虐殺の惨劇を
リアルに映像化することに成功している。
ただし登場人物は架空だそう。
また、欧米各国の勢力闘争が大虐殺を肥大させた、
このことへの悔恨が強烈に込められている。
よく出来ている、と思う、けれど、
映画を「作品」として捉えられたなら…。

本作は同じくルワンダ大虐殺を描いた
『ホテル・ルワンダ』と対をなすものだ。



★★★★★☆☆ 7点満点で5点
完成度という意味で この『ルワンダの涙』は
『ホテル・ルワンダ』を凌ぐのかもしれない。
けれど、この映画を人に薦めることは難しい、私には。
あまりに描写が生々しく、リアルで、しかも救いがない。

『ホテル・ルワンダ』は 視点をかえると、
単なる お化け屋敷からの脱出劇と捉えることもできる。
エンタメ色が強いのだ。
が、恐怖だけでなく、人間の素晴らしさと
最後に残される希望を しっかりと描いていた。
対して、『ルワンダの涙』に希望はない。
生き残った者にすら、悔恨の念が強く投影されている。
観ていて辛い、辛すぎた。
ただでさえ、戦争の映画を観るのを敬遠する人が多いのに、
(私も本来は そうだ)
どうぞ『ルワンダの涙』を観て、
不条理と血生臭さの中から何かを感じて、と
薦めてもいい相手、それは私の場合は 限られる。

ルワンダ大虐殺を描いた
『ホテル・ルワンダ』と『ルワンダの涙』。
9.11を捉えた『ワールド・トレードセンター』と
『ユナイテッド93』。
ふた通りの「真実の映画」がある。

まずは ふたつの表現が、
国家の圧力を受けずに創られ、劇場公開された
このことを良しとしたい。

~2007.2月 TOHOシネマズ六本木にて観賞~

●『ルワンダの涙』公式サイト

●私の『ホテル・ルワンダ』の感想
 ・3度目に観た『ホテル・ルワンダ』
 ・2度目に観た『ホテル・ルワンダ』
 ・ 最初に観た『ホテル・ルワンダ』

*Home*