デッドマン |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー


Dedman


弾丸を一発、胸に撃たれ、
虫の息となった男が痛みと共に旅に出る、
一風変わったロードムービーを観た。
『デッドマン』。死にそうな男が主人公。


【あらすじ】 Amazon.co.jp
『ナイト・オン・ザ・プラネット』以来3年ぶりとなった、ジャームッシュ監督作品である。 舞台は19世紀の西部。とある町を訪れた会計士のウィリアム・ブレイクは、ある娘を助けたことから胸を撃たれ、瀕死の重体のまま町を出る。しかし追っ手に後を追われ、森に逃げ込んだ彼は1人のインディアンに助けられる。胸に銃弾を抱えた瀕死の男と、彼を助ける無口なインディアンの不思議な旅を描く異色ロードムービーである。主演のジョニー・デップをはじめ、ロバート・ミッチャムなどの脇役陣も豪華。ロック界のカリスマ、ニール・ヤングが即興演奏したという音楽も聴きどころの1つだ。


生への効力がなくなった男の、
死出に つづく旅を描いたのはジャームッシュ。
この人は変わらない、ずっと、はぐれ者を描く。
本作の主人公もやはり塊に溶け込めず
ぽっかり浮き上がった はぐれ雲、というか
所在なげに細く立ちこめる煙に似た男。演じるのは、
このとき演者の頂にいたジョニー・デップ。
その出で立ちときたら、
山高帽にオカッパ頭に丸眼鏡、
洋服は可愛らしいチェック模様、と、
あたかもサーカスで懸命に動く道化師のようで、
私は自分にも似た可笑しさを感じ、強く同情した。
やはり私はジャームッシュが好きで、
この世とは思えぬ異次元映像が好きなのだ。

道化師に対し、西部の とある町の人々は
冷ややかな視線をジロリと送って寄せつけない。
おまけに男は、不幸にも殺人を犯し、
懸賞金付きのお尋ね者へ 堕ちていく。

弾丸を胸にした殺人犯、その残り少ない命を
通りすがりのインディアンが ぶっきらぼうに支え、
さりげなく幸福というものを差し出し労る。
「NOBODY ~誰も~」と名乗るインディアンは
馴れ馴れしく ベタ付いた優しさではなく、
見ようによっては乱暴なほど距離を取り、突き放し、
息絶え絶えの男を旅へと導いていく。

男がたどり着いた場所、そこは原始の土地。
アメリカと称する国が生まれる前からずっと
原住民として暮らしていたインディアンの村へ
男は巡り巡って たどり着くのだ。
インディアンたちは突然やって来た道化師を
部外者に注意を払うべく、
好奇の視線を浴びせるが、なぜだろう
私は そこに母体に似た あたたかな空気を感じた。
男は見知らぬ土地に到達したのではなく、
ようやく還っていった、追憶の原点へ。

このクライマックスを観たとき、
私は胸が絞られたように切なくなり、
大きな感動の渦に巻かれ、涙した。
胸に弾丸を受け死を背負ったとき、
男は初めて生きる実感を味わったのだ。

忘れ難い名場面。

デッドマンとして旅をつづける途中、
子鹿の死骸に出くわした彼は、
子鹿にそっと寄り添い寝転び、
いたわりながら目を閉じる。
デッドマンは このとき、
自分の人生を初めて受け入れたのだ。
死出へつづく旅は
言い換えるなら生への讃歌だった。

映画を観た当日よりも、日を重ねるごとに
沸々と込み上げる あたたかい感情がある。
そこで想う、私にだって弾丸が いつ
この胸に飛び込むのか分からないのだ。いいや、
もしかしたら、自覚していないだけで、
すでに弾は埋まっているかもしれない。
死は、誰にだって いつしか訪れる、
もしかしたら、それは5分後かもしれないし、
50年後かもしれない、場合によっては
今晩、寝床に就いたまま
二度と還らぬ人になるかもわからない。
それはわからない、誰にもわからない、
ただこの世に生まれた以上、
誰にでも平等に与えられるのが死という区切りであって、
ただ、その有り様と時期は自然に、
そして天命にまかせるしかない。

年を重ねるたび、強くなる想いがある。
生きるということは
何かによって生かされる、ということでもある、と。
それが宇宙の仕組みではなかろうか。

最後に とびっきり美しい水辺の場面が待っている。
デッドマンの旅の終わりを観たとき
限りある命に感謝してた。いい映画だった。



★★★★★☆☆ 7点満点で5点
ジョーニー・デップが最高!!!!!
旬より美味しい、奔りのジョニデ!!!
イギーも いいー!! ミーハーな私も いい!!

しかし、ジャームッシュのファンである私なのに、
どの映画でも必ず睡魔に襲われる、事実、
『デッドマン』でも前半コックリ~コックリ~。
いつもいつもジャームッシュの映画は
クラシック音楽を聴いているときの、
あの居心地の良さに類似する。ゆりかご にいるような。
それくほど無駄を省いた枯れた表現が続くのだけど、
最終的には強い印象を与えられ、
忘れ難い作品になることが多い。本作もそう。
しかも詩人の頭の中を旅するような映画なので、
全体的に漠然としてる、眠くなって当然といえば当然。

ジャームッシュの映像はモノクロが断然いい。
カラー作品も悪くはないけれど、
過去と現在を うつろう彼の世界は
郷愁の白黒表現がマッチする。
死と生の境界線を描く『デッドマン』も、
モノクロ映像が冴え渡る。ホント よく撮れてる。

ニール・ヤングが即興で弾いたという音楽が、
しびれるほど(古い表現⋯)良い。
たぶん即興演奏にしたのは、
作り込まれたメロディーを使って
映画全体を華美にしないということと、
感情のままに動くアメリカ西部の人間と西部の風景、
それにインディアンの野生を印象付けるため、
素朴なエレキギター音を組んだと私は思う。
西部名物のカントリーミュージックではなく、
ロックが流れるのはクールだし、
反骨精神を表すのにもピッタリだけど、
原始であるインディアンが要の作品なのに、
泥臭さが乏しいのは いかがなものか、とも思う。

『BOW30映画祭』にて観賞~






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