ラミアの白い凧 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

警備塔


国境警備塔の側を白い凧がバサバサと。
まるで鳥のように、自由に羽ばたいて。


空想好きで、時に寓話を所望する、
一面では現実派でもある、そんな貴方へ。


『アラブ映画祭』で観たレバノンの映画。
レバノンという国のことも、
『ビバ! アルジェリア』のアルジェリア同様、
名前ぐらいは耳にしたことがあっても、
なかなかすぐに思い浮かぶ土地柄ではなく‥‥。
けれど、レバノンは今後のアラブ映画界の
鍵を握る存在となる、そんな言葉を
映画祭のフライヤーで見つけた、
なるほどなるほど、レバノンの映画『ラミアの白い凧』は、
詩情豊かな 素晴らしい作品で、
今後は、この国の事情なり映画なりを
ちょっと気にしてみたい、そう思うのだった。

本作は2003年のベネチア映画祭で賞を授与され、
国際的にも評価は高いような感じで、
日本でも地方の映画祭で上映されたらしい、
でも今後、日本で公開されるチャンスは少なそうなので、
あらすじを ここに書いておこう。
つまり、あたしの好きなタイプの作風だったので、
今後、共感者が表れることを切に望んでおるのだ。
簡単にいうと国境を挟んだ、切ないラブストーリー。
言っとくけど、静かな淡々映画どすえ。

舞台はレバノンとイスラエルとの、
国境にまたがっているドゥールズという名の、
有刺鉄線で分断された小さな村。
この村に暮らす者の悲劇は、国境の向こうとこちらで
親戚縁者が離ればなれになってしまったこと、
狭い村だけに、互いの姿は肉眼で確認できても、
自由な行き来は 滅多に許されない。
ゆえに、離ればなれになった親戚縁者を気づかい、
女たちは拡声器を手に、互いの安否を思いやり、
そして「身の回りの事件」を報告し合うのだった、
いつもいつも国境警備隊の視線に怯えながら。

主人公はラミアという10代の女の子。
ある日、ラミアは国境の向こうに、
白い凧を不注意で落としてしまう。
だから超えてはならない鉄条網を
凧を拾うため、ためらうことなく越えたラミア。
ラミアに向け、国境警備隊の銃口が音を放ち、
そのためラミアは問題視され、長老たちの話し合いの結果、
国境の向こうの隣村へ嫁がされることになる。
顔も知らない、親戚の男の元へ。

そんなラミアに、ひとりの若者が恋をした。
彼は国境警備塔にいるイスラエル兵で、
連日、女たちが拡声器で語るラミアという少女のことを、
若き兵士は切ない想いで、そっと見守っていた。
来る日も来る日も、
ラミアが真っ白なドレスに身を包み、
隣の村へ輿入れする日も、
若者は監視塔から望遠レンズで見守るのだった。
そして、ラミアの方も嫁ぐ その日、
自分を見る若者の視線に気付き、
嫁いだ先の村で、いつしか兵士に淡い恋心を抱く、
やがて‥‥。


うっうっうっ、ラストシーンを思うと、
今でも涙がツツーッと溢れてくる。
ハッキリと結末は描かれておらず、
観るものに委ねた形。でも辛気くさいことはなく、
溜息がでるほど綺麗なラスト。ラミアが美しく、
イスラエル兵も惚れ惚れするほど凛々しい
しかも最後の最後で、ラミアは愛の告白をするのだ、
青年がいる監視塔へ突如として現われて。
その告白の言葉が、
あまりによく出来た一編の詩のようで、心に沁みた。

結末を幾通りにも想像できるという秀作は
世の中に たくさんあれども、これほどまでに
イマジネーションを刺激してくれる作品も少なかろう。
いったい、ラミアは爆撃に合って死んだのか、
それとも想いが成就して幸せになったのか、
それとも‥‥すべては夢だったのか?
おしまいまで、ここに書いたとしても、
差し支えないようにも思うけど、
いつかどこかで、この映画を観るチャンスがあったとき、
最後の最後はナゾのままの方が素敵なので
秘密にしておこう。

監督が女性だから、でしょうか。
どの場面も、小物から衣装からアングルから、
実に細かい気配りを感じた。
また、レバノン映画とはいえ、フランス映画の濃度が強く、
呆れるほど洗練された色彩感覚と画面構成
国境の小さな村を、あそこまで美しく映像に残せる力量は、
すごい! なんだか知性を感じるわぁ。
けど、懸命過ぎてユーモラスでもあるし、ともかく、
戦火の元で暮らしながらも「今日」を精一杯生きる女達の姿に、
映画を観終わったとき あたしは、
レバノンから忘れ物を届けてもらったような
すがすがしい想いで帰路についたのだった。

この『ラミアの白い凧』が、
『アラブ映画祭2005』のクロ-ジング作品で、
それに ふさわしい余韻をくれた
まさに有終の美、だったと思う。
★★★★★★☆ 7点満点で6点
ラミアもイスラエル兵も、かわいいでー。
ふたりとも すっきゃわ~っ!

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相方へ相づちを打つスペース
福井さん、もう80歳を過ぎたはって大往生とはいえ、
天然で仕事熱心で、真面目一筋で、
ウケ狙いでない人(コマ犬の2匹と正反対の人)は、
他人を和ませる匂いを持ってはる、
それがテレビで伝わる人ってなかなか いいひんもんや。
今後は なかなか そのテの素人は現われそうもないし、
もっともっと長生きしてほしかったなぁ。

うちらコマ犬は憎まれ犬、世に はばかって仁王立ち、
平成の次の世まで見届けようぞ。いわずもがな、か。
●後ろ攻めが得意な相方・でこのブログ