愛の神、エロス |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

愛の形


三世代の映画監督による、
三つの愛のオムニバス。はっきりいって、
カーウァイのひとり勝ち。
邦題の『愛の神』が いらん!


くぅ~~~~~~っ!
ウォン・カーウァイ最高! 参りました! 号泣!
久々に満点! ★★★★★★★!!!!
7点満点で7点! ばんざい! カーウァイ!
これまでに観たカーウァイ作品の中で、
あたしにとっては最高の作品! いっちばん好き。
でも満点はカーウァイだけ、他のふたりの監督は、
巨匠だか、かつての時代の寵児だかわからんが、
よくない、まったく よくなーーーーーーーい!
『愛の神、エロス』という一本の作品としては、
頭でっかちの尻すぼみ、バランス悪すぎ。

といっても、カーウァイ有利なのは コレ仕方ない、
だいたい三編の映画をつなぐネジになっているのが、
端的なイタリア人作家・マットッティの絵と
耽美なカエターノ・ヴェローソの音楽で、
ふたつの世界が合わさり、かもし出されるアート世界は
カーウァイの「ムード演出」にピッタンコ。
マットッティの絵については、中国の水墨画家が
カーウァイに感化されて描いたのかと思ったほど。
てなわけで、三編の構成と編集が間違ってるし
(カーウァイは2番手ぐらいが適当かなぁ
ソダーバーグ→カーウァイ→ミケランジェロの順)、
せめて作家それぞれの作品への導入部は
音楽ぐらいは違うものにすべき。

とにかく三つの短編、それぞれの感想を書いておこう。

一番手のカーウァイ作品『若き仕立て屋の恋』。
原題は『The hand』ということで、主題は手。手のエロス。
手なんて、あーた! あれほどエロチックなもん、あらへんし。
人間にとって罪悪の象徴である手、
愛するものに触れることができる手。
その手を通じた心と心の交わりを、
狂おしいまでの究極の純愛に押し上げた
カーウァイのおっさんの感性と手腕は凄い。
そもそも設定からしてエロいし。
高級娼婦に恋した 若き洋服屋は、
他の男のために装おう女のチャイナドレスを、
何着も何着も、丹精込めてこしらえる、
それゆえ、男の指先は愛する女の身体を知り尽くしてる、
けれど そこから先は進めない。
押し殺したエロ、滑稽なエロ、狂おしいエロ、
カーウァイが描いたエロスに
胸がギューーーッと締めつけられ、
ただ号泣するしかなかった 間抜けなあたし。
しかもカーウァイ、「三作品の中の勝者」を狙って、
勝ちパターンに持っていってるのが見事に決まってる。
お得意の1960年代の香港ものということ、
作り慣れた短編ということ、そして
カーウァイ作品の中の同じ傾向である『花様年華』と
『2046』の間のワンクッションということで
精神的にもリラックスして作れたのだろう愛の世界。
削ぎ落としたセリフと、
見せずに「隠す」ことこそ、究極のエロなのだ。
あと、娼婦役のコン・リーが良いのはいうまでもなく、
仕立て屋のチャン・チェンが 良い~。タイプ♪


2番目のソダーバーグ監督の『ペンローズの悩み』は、
スベリまくりの★★☆☆☆☆☆ 2点!
こりゃ、エロスではなくて、「エッチなコント」やんか。
ベローソの音楽より、どちらかというと、
ジャズが似合うかな。都会派は都会派で痛快風なんやけど、
この人の「ジョーク」は まるで浮きまくってた。
なんだか、カーウァイの世界が頭から離れず、
小ギャグが ほとんど頭を素通りし (半分 イラついてた)、
もろに裸が現われるのが、まったくエロくない。
ただ本作で、ひとつ利口になったことがあるとすれば、
あたしとソダーバーグは相性が悪いかもしれんということ。


最後のミケランジェロ翁の『危険な道筋』においては、
貫禄が物を言って寄り切りの ★★★☆☆☆☆ 3点。
音楽でいうと、ウ~♪ マンボ♪ ってとこか。
あきらかにベローソではない。
はぁ。エロスと自然をリンクさせたのはグッときたけど
なんせ太陽の下でオールヌードで踊られても‥‥
スヶスケのブラウスで乳首マルミエされても‥‥
女がベッドで大の字になって、
ひとりで抜くところを見せられても‥‥
あたしが西欧人だったら、
もうちょっと理解できたかもしれんし、80歳ぐらいになったら、
翁の「エロスという寓話」を受け入れられるのかもしれない。
ただ、この前に観た『Shall we Dance?』や
『ビバ! アルジェリア』で思い知ったのだが、
アジア以外の地域って、女の人が あからさまに誘うのだ、
それがどうも、あたしには いただけへんのだわ。

★★★★☆☆☆ 作品全体としては7点満点で4点。
あたしのようにカーウァイ・ノワ-ルにハマらなければ、
もっと楽しめるかも。でも、これはあくまでも
アート作品であって、ピンク映画ではござらん。
辛気くさいのが駄目な人はパスしてください、
で、カーウァイ・ファンは必見だと思いまする。

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相方へ問いかけるスペース本日分
『花様年華』はイマイチでも『2046』で、
そこそこ楽しんだキミなら、『~仕立て屋の恋』は
けっこうイケルかも。最後の話『危険な道筋』は
つっこみどころテンコ盛りやし、ちょっと観てほしいかも。
あたしもキムタクで遠慮してた『2046』が観たくなってきた。

●エロスをどう受け止めるのだろう、
相方・でこのブログ