Mr.インクレディブル -その2 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

「ヒーロー不用の時代」がやってきたせいで、
居場所がなくなったミスター・インクレは、
はからずも身から出たサビが いつしかヒョウタンからコマ、
まんまと実力を発揮できる場を得、世間を悪の手から救う。
そして? この物語はヒーロー待望してるのだろーか?
それとも、いつものピクサー作品と同じく
「いかなる異端な者でも、その者がその者らしく生きられるよう、
 柔軟性のある世の中であれ」と結んでいるのだろーか、
‥‥うーん、どーもハッキリしない、この映画の意図するところ。

これまで、「おもちゃ」「虫」「モンスター」「熱帯魚」と、
まるでそこから逃げるかのごとく
人間以外のものをモチーフとして選んできたピクサーが、
ついに人間を描く! と あたしは ちょっと
『インクレ』に期待したりなんかした。
でも結果は、どこか遠い星に住んでいるかのような超人が主人公。
『インクレ』で、もっとも人間臭かったのは
生まれながらにして強靱なパワーを持ったヒーローファミリーではなく、
執念で甦った悪役のシンドロームではなかろうか。
凡人(シンドローム)が天才(ミスタ-・インクレ)に憧れ、
その人に少しでも近づこうと必死でもがき、やがて憎しみに変わる。
人間ってインクレ一家のようにさわやかではないはず、
もっと嫉妬深いし、弱い、
“ヒーローは用無し”となった時代や世間を
もっともっと疎んでくれた方が、あたしは共感するだろうし、
シンドロームが人間臭く思えたのはそこ。

世界を自分の手中に納めようと、
ムダな発明を繰り返すシンドロームの愚かな姿、
これを人間と呼ばずしてなんと呼ぼう。
空を飛べない人間が、必死にあがいて飛行機を発明したように、
体力ではかなわないシンドロームは、
頭を使って兵器ロボットを発明、インクレ一家に対抗する。
そうそう、いっそインクレ一家が盗賊となって大暴れ、
こちらの方がおもしろかったかも。

それから気になるのはキャラクターの後始末。
エドナ・モードとミスター・インクレの上司の“ちっこいオッサン”、
このふたりには映画の後半に もう一度 現れてほしかったナ。
だいたい、大騒動のタネをまいたのは こいつらなのに、
その後どうなったのか、きちんと結が語られないのは惜しいと思う。

ピクサーの絵について。
どこを切り取っても問題なく、計算され尽くした優等生。
背景の処理もキャラクターとの分量もうまくいってる、
でも、あたしの好みは荒削りでもいい、
どこかで絵的にハッと息をのむような
「これぞピクサー」というハイライト・シーンがほしかった。
そう思うのは贅沢な話だ、きっとあたしは
ハヤオの『ハウルの動く城』の予告編を観たときの、
あまりに強烈で色鮮やかな芸術と比較してしまってる。
ついでにいうと、シンドロームが発明したタコみたいな兵器ロボット、
あいつのデザインを もうちょっと垢抜けさせてもよかったのでは。

くどくど書いたけど、間違いなく
あたしは『インクレ』で楽しんだ。でも、
おそらくこの映画の印象は頭の中から だんだん消えていくだろう。
といっても、映画とは娯楽なのだから、
その場限りの笑いが全てだとすれば、
あたしのように深く考えることはタブーだ、けど、
今の あたしにとって『インクレ』は
もはや過去の遺物となったアメリカンコーヒーのようなもので、
薄くて物足りない。エスプレッソまでとは言わないが、
せめて もう少し、苦味が欲しい。
★★★★☆☆☆ 7点満点で4点。人に すすめやすい映画です。

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相方へのツッコミ
『ベルヴィル・ランデブー』も たいがい覚えにくいタイトルやな。
フランスの映画と違ったっけ? センスええなぁ。
予告で観ただけやけど絵が好き。
でもアニメはもうごちそうさま。イブは『春夏秋冬そして春』を観た後、
オッサン数人とおでんで乾杯してた。映画はなかなかよかった!

ちがうて、でこよ。
あたしの友だちも『シンドローム=堀江社長』やと断言しちょる。
そもそも、あたしがジェットなんて、
カタカナの名前を覚えて映画を観に行くわけないやん。
堀江社長に似てる何かが映画の中に出てくる~ワクワク!
そう思って映画を観てただけで、
ジェットくんが出てきても何も思わんかった。可愛いコと思っただけ。
堀江社長は絶対に悪人顔やと思ってたから、
シンドロームが登場してドンピシャリ。

●相方・でこのブログ http://koma-inu.ameblo.jp