一年ちょっと前、足の骨を折りました

 

その時感じたことはこちら

 

とにかく「ちょっとのことができない」の一言で大変でした。

 

でも不自由さを自ら体験したことで介護保険改修にも役立つ経験をいたしました。

 

 

昔から新築・リフォームを問わず

 

「将来、車いすになったとしても生活できるようにしたい」と

 

よくお伺いいたします。

 

そこで、私の介護改修の経験から思うことを書きたいと思います。

 

 

 

まず、いきなりすごいことを書きますが、

 

車いすで生活する家を完璧に造ることはかなり難しいことです。

 

 

諦めてくださいという意味ではなく、

 

「完璧に計画することが難しい」という意味です。

 

なぜなら予想されることがものすごく多岐にわたるからです。

 

 

 

車いすが自分で操作できる方の自走式であるか、

 

それとも誰かに押してもらう介助型かにもよりますが、

 

一番難しいのは「スペースの確保」の考え方です。

 

 

車いすが回転するためには1.5m角程度が最低でも必要になります。

 

しかもそれには条件があって、1.5mの範囲に車いすが当たってしまうような

 

障害物が何もなく、しかも教科書通りの車いすの操作ができたとしたらです。

 

 

車いすに慣れていなかったら回転半径はとても大きくなるし、

 

自走式をお使いの方で手と足の片側が健常で、

 

片手と片足をうまく使って操作をされている方がいますが、

 

そんな場合も回転半径が大きくなります。

 

 

リビングなどではそのスペースを確保できても廊下や洗面脱衣室などでは

 

なかなか難しい。

 

 

そして、ご本人のこともさることながら介助者の方のことを考える必要もあります。

 

 

浴室に入る際には着替えが必要になって、

 

浴室用の車いすへの移乗も必要になりますし、

 

スペースを確保したから大丈夫というわけではないのと、

 

スペースの問題が一番大切と言いながら、同時にもっと大切なのが

 

介助する方の生活と両立させることでもあるんです。

 

 

それでも車いすの方を中心に間取りをするとなると、

 

健常な方にも便利なようで実はそうでないところもたくさん出てきます。

 

 

限られた敷地、建物の中で通路や洗面脱衣室を大きくするということは

 

他のスペースをどこか削るということになります。

 

そして、外出を頻繁にということになれば、スロープなども必要になりますが、

 

スロープは10センチの高さを超えるために

 

1.2~1.5mの長さが必要になります。

 

 

通常の家は地面から1階の床の高さまで50センチほどありますから

 

スロープだけで処理しようとすると

 

1.5m×5=7.5mも必要になります。

 

7.5mを処理しようとすると駐車場を一つ潰すことにもなりかねませんし、

 

車に乗るとなればドアを全開にできないと乗れないのでそのスペースも必要になる

 

すなわち、駐車場にスペースを取られて建物を小さくする必要がある。

 

その小さくした建物の中で車いすが動けるスペースを確保するという

 

ハードルの高い計画になります。

 

 

 

今すでに車いすでの生活をされている場合には、

 

車いすの操作にも慣れていらっしゃる場合も多く、

 

回転半径なども非常にコンパクトになるし、

 

動きの予測もできるのでプランニングはしやすいのですが、

 

「もしかして将来的に車いすになったとしたら」で間取り対応しようとする際には

 

体の状態がわからないままの計画になるので

 

「どこまで対応できるようにするか」がとても難しいです。

 

 

 

そこで、私はいくつかの対応で将来的な予測にも対応できるようにしています。

 

できるだけ動線を直線的に。

 

そして、できるだけ引き戸を使用し、

 

トイレを横入りとする。

 

 

他にもいろいろありますが、

 

「曲がる」があればあるほど車いすの通るスペースが必要になりますから

 

廊下などはできるだけ直線的に使えるように配置。

 

 

また、ドアだと外開きなら自分の体をバックさせて逃がさないといけないし、

 

内開きだったとしても室内に入ってから

 

体を反転させてドアを閉める必要がありますから引き戸をできるだけ使う。

 

 

トイレは便器に移乗しないといけないので、誰かが介助できるように

 

横入りの位置に入口を設けます。

 

便器の真正面から入ると、本人がトイレの中に入れても介助者が入ることができず

 

介助ができないからです。

 

 

真正面から進入の場合には介助者が便器横に立てるスペースを設けますし、

 

ご本人にとって、真正面から便器へのアプローチをするよりも健常なほうの手足で

 

移乗しやすい斜め使いも予想されるのでそのスペースを確保します。

 

 

そして、もちろん段差などは室内に置いてはゼロ

 

玄関なども一段あたりができるだけ小さくなるように高さを調整します。

 

 

これらを意識するだけでも「もしも」の際には生活がかなり楽になります。

 

 

無理なくご本人とご家族が楽しく生活できるように

 

完璧を目指すよりも上手に間をとっていくことが大切と思います。

 

 

「一日に一回だから深く考えなくても大丈夫」なこともあれば

 

「一日に何度もあるからしっかりと計画をしなけれべならない」こともある。

 

 

そして、それらが苦でない場合もあれば、たった一回でも苦になることもある。

 

 

たとえば、体の大きなご主人様が介助者の場合と、

 

体の小さな奥さまが介助者の場合では大切にすることがガラリと変わります。

 

奥さまが介助者の場合には「たった一回」ではなくなることも多いので

 

介助用の機器を使うことも視野に入れます。

 

 

 

ひとことで車いす対応と言っても

 

さまざまなケース、そして対応の方法がありますので、

 

いま車いすをお使いでも、将来的なことをお考えの場合でも

 

完璧を目指しすぎず、かつ、中途半端なことにもならないように

 

しっかりとした提案ができる会社に相談することがとても大切と思います。