A君が「志望理由書を見てやってほしいのですが」とB君を連れてやって来た。
見たらこれがとにかくひどい。志望理由書の何たるかをまるでわかっていない。しかし、これはいつも言っているように、彼のせいばかりではない。教師の側が書き方を指導していないからである。そこで、対話型指導を始めたが、イマイチ〝ノリ〟が悪い。
「本当に受験する気はあるの?」
「実は、国公立推薦の校内判定会議の前日、深夜に担任のC先生から電話がかかって来て、『M大の教育学部に出願する気はないか? 合格の可能性もあるから』と言われました。本当は受験する気はなかったんですけど、断りづらいし、合格できれば儲けモノかなって……」
「センター試験がないってことで飛びついたんだろけど、M大教育は小論文が難しいし、グループディスカッションもあるから大変だよ。特に集団討議はいったい誰が指導するの?」
「そんなに大変なんですか! 志望理由書や自己推薦書でここンところ一般入試の勉強が全くできてないんです。これ以上面倒なことになったら、どうしましょうかねぇ……」
「どうしても推薦で合格するんだという強い気持ちがないんだったらやめるんだね」
「辞退できるんですか?」
「校内判定会議で出願を認められているんだから、辞退したら大問題だろうけど、大学に迷惑をかけるわけじゃないしね。でも、担任のCさんは怒るだろうなあ。2、3日よく考えてごらん?」
「はい。わかりました。受験することになったら、志望理由書見てもらえますか?」
「Cさんの尻拭いは嫌だなあ。またチャーシュー持って来るのかな(笑)」
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〝チャーシュー大王〟の恣意的で乱暴な進路指導には昨年も振り回されたが、今年も10月1日(記事参照)に続いてやらかしてくれた。皺寄せはみんな生徒のところに来る。
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B君が帰ったあとA君と話す。A君が29日の書類提出について(10月7日の記事参照)進路に質問したら、「トラブルがあって出願締切までに届かないことがあるかもしれないから大事をとっているんだ」と答えたという。詳細は後日書くが、最後に「お前は教員志望のくせに〝学校のルール〟を破るのか!」と言われ、「生徒にとって明らかに不利になるとわかっているルールなら、どんなことをしてでも改善するのが教師だと思います。もしそれができないというのなら、僕は教師なんかになりたくはないです!」と叫びたかったのだそうであるが、できなかったという。
「腹が立ちました。堂々と自分の気持ちが言えなかった自分自身に腹が立ちました」
A君の涙を見た時、考えた。〈学校のルール〉? 生徒をここまで苦しめる〝学校〟って何だろう?と。