「なりきり作文」をもう1つ。
「鏡の告白」
僕はA子のお気に入りの鏡。毎朝、A子の化粧を見ることから僕の一日が始まる。僕の生活はだいたい決まって同じだ。A子は高校生なので、僕は学校へ一緒に行く。そして、A子は休み時間ごとに僕を見る。たまに授業中にまで僕を見ているんで、先生に怒られている。家に帰ってきても見ている。
もう、うんざりだ。A子の顔ばかり見たくない。そう思っていたある日、学校でA子の友達が僕のことを見たい、とやってきた。A子と同じクラスのS美さんだった。S美さんは、このクラスで一番かわいいといううわさの人で、僕は初対面だったので、とっても緊張した。S美さんが僕を手に取った。いよいよだ、僕は思った。S美さんと目が合った。うわさ通り、とってもかわいい。その瞬間、僕は恥ずかしさのあまり、曇ってしまった。大失態。
「この鏡、曇ってて見えないじゃない。」
とS美さんに言われてしまった。僕の印象は最悪だった。僕の恋は、あっという間に終わりを告げた。
それからは、何の変化もない同じ生活の繰りかえしだった。僕が、新しい出会いがしたいと願っていたある時、A子の足が僕に迫ってきた。
パリッ。