小論文のウォームアップとして、「○○の告白」と題し、かつて弘前大学などでも出題された「なりきり作文」を書かせたことがあった。その中の1つである。
「チョークの告白」
僕はあるクラスの白いチョークだ。僕にはたくさんの仲間がいる。まず、黄色のチョーク。こいつはいつも元気なお調子者だ。そして、赤色のチョーク。この子はとてもかわいい。さわやか美少年の青色チョークはめったに現れない。たぶん、先生が知らないうちに持って帰っているのだろう。そして、次の授業で使い、そのクラスに忘れていく。そして、また違う先生が持って帰って使う、というように、青色チョークは全校を旅しているのだ。だから、青色チョークが僕のクラスに来たときには、他のクラスで起きたことをたくさん話してくれる。そんな青色チョークに、赤色チョークは惚れているらしい。でも、最近は半年近く会えていないから、何だか寂しそうだ。
そんな僕たちは、授業中によく活躍する。自分の身を削ってまで「授業」というものに貢献しているのだ。だから、背が低ければ低いほど、年季の入った、いいチョークになれるというわけだ。特に、僕、白色は、よく活躍するので、他の色のチョークに妬まれてしまうことが多い。僕にしてみれば、赤や黄色などの方がきれいでいいと思うのだが……。
僕たちチョークがこんなに授業に貢献しているというのに、そんなことを気にも留めず、寝ている生徒がたくさんいる。これでは、僕たちがいくら身を削っても意味がない。あるうっかりものの先生なんて、たまに僕の仲間を床に落としてしまう。そうすると、その仲間は骨折して悲鳴を上げるのだ。先生はそんなことにも気がつかず、そのばらばらになった、無残な姿の仲間を僕の前に置く。あまりにも悲しい。この床に落とされる事件はたびたび起こり、僕たちチョークに恐れられている。僕もいつか、あんなふうに床に落とされてしまうのだろうか。どうか僕たちを使うときには、くれぐれも注意していただきたいものだ。