女性の、女性による、女性のための小説
と言える一作
先日、何気なく、NHKの「カレ、夫、男友達」を見てて、そのタイトルに惹かれて読んだ作品
タイトル「思いわずらうことなく愉しく生きよ」は登場人物である犬山家の家訓である
うん、素晴らしい家訓
さて、本書では、犬山家三姉妹である麻子、治子、育子のそれぞれの生活が書かれており、読者によって、「私、この人の生き方にちょっと似てる」と共感できるようである。
三姉妹の生き方の象徴が次の場面
―誰かのものになりたいの。
姉妹でお酒をのんだ新年会で、自分(育子)がそう言ったことを思い出す。
―誰かのものになんてなれないのよ。
怒ったような口調で、香水のきりっとした匂いの中心で治子が断じ、とりなすように麻子がにっこり笑みを浮かべて
―そうなりたいなら、自分でなるよりないのよ。
と言ったのだった。
(304、305頁)
そして、本書では、とにかく登場する男にろくでもない男、俗にいう「ダメンズ」が出てきており、本書の解説に至っては、「気の毒なくらい蚊帳の外」と一蹴される(笑)
うちの中では、登場人物の1人である正彰は、そんなに悪くないと思うのだが。
で、三姉妹みんなフォーカスするのも字数オワタになるので、次女治子に焦点を当てる。
次女治子は、仕事にも恋にも自分の意志を貫く外資系のキャリアウーマン(本書あらすじより)として描かれる。
この治子、とにかくベッドが好き(笑)
セックスなんて所詮レクリエーションという信念の下(笑)、恋人熊木がいながら、元の恋人河野と関係を持つ。
そして、治子は結婚というものを強く拒絶する。
やがて、治子と熊木は河野の件で喧嘩になる。
だが、治子負けない。
そうして、治子に馬鹿にされたように感じた熊木は部屋を出る。
治子らしさが出るのが次の場面
熊木圭介が大好きだった。もし熊木が戻ってきてくれるなら、なんでもするのに、と思う。
でも「もし」は役に立たない。治子は後悔が大嫌いだからだ。
鍵を替えよう。治子はそう決心する。これから部屋に帰るたびに熊ちゃんが帰ってきているんじゃないかと期待してしまうから、それは苦痛だから、鍵を替えよう。
(282、283頁)
改めて、治子は強い女性である。後に、熊木との喧嘩の原因を作った女に対しては、「おなじ土俵におりて喧嘩をしてはならない」と、恥辱が降り注ぐ一言を放つ。
そして、言うまでもなく別れた恋人熊木でさえ治子には叶わない。
本書で描かれる熊木は、私も含めて男特有の「女性観」で治子を理解しようとするいわば「頭の悪い小動物」であり、そんな熊木を理解しているからこそ、治子は熊木の「新しくやり直そうメール」を消却する。
最後に、治子はまた違う男といつも通りセックスする。
そして、本書はそんな治子のセックスを書いた後、こう締めくくる
思いわずらうことなく愉しく生きよ
と