【3日目】民事訴訟法過去問練習 | うんちくコラムニストシリウスのブログ

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第2問
(2)【XのZに対する貸金返還請求の訴えに対して、XのZに対する貸金債権の存在を肯定して、XのYに対する請求を認容した確定判決がどのような影響を及ぼすか】
 本問では、前訴で、保証人であるYに対して、Zへの貸金債務の履行請求を求めたXが、今度はZに対して再び貸金債務の履行を求めている。しかし、主債務者であるZに対して、Xが再び同じ訴訟物である貸金債務の履行を求めるのは、当事者は同一ではなく二重起訴の禁止(民事訴訟法142条)にはあたらないものの、前訴の基準時において確定された訴訟物の存在によって、Xはすでに有利な地位を得ているにも関わらず再び紛争の蒸し返しを認めることであり、実質的に考えていかにも不当である。そこで、Xの貸金返還請求の主張を遮断する必要がある。
 この点に関して、判決理由中の判断について争点効という拘束力を認めて解決する学説がある。しかし、判例・通説は、争点効の要件が不明確であり、判決理由中の判断に拘束力を認めると、裁判所の審理が硬直化し、訴訟が遅延することを理由に、争点効を否定している。思うに、判決の効力(判決効)というからには、その要件が明確でなければ法的安定を害するとともに、民事訴訟法は114条1項で既判力を認めている以上、あえて争点効という概念を持ち出すのは妥当ではない。よって、争点効による遮断は否定すべきである。
 思うに、民事訴訟法は、2条で信義則による遮断を認めている。民事訴訟法が信義則の適用を認めたのは、権利者の行為を信頼し、それに基づいて一定の法律関係が成立している場合に、権利者が先行行為と矛盾する挙動をなすことによって相手方の地位を脅かすことは許されないという訴訟上の禁反言の原則に基づくものである。そして、本問では、Xは再び貸金返還請求を行うことで主債務者であったZの地位を脅かしている。したがって、前訴による法律関係に基づき信義則による遮断を認め、XのZに対する貸金返還請求は棄却されるのが相当である。