【2日目】商法(会社法)過去問練習 | うんちくコラムニストシリウスのブログ

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【問題1】株式会社の資金調達方法と、その場合の株主保護制度について論ぜよ。
・株式会社の資金調達方法
→①企業間の消費貸借、②募集株式の発行、③社債の発行、④新株予約権の発行、⑤自己金融

【①について】
→日常の業務執行であれば、代表取締役がなし得る。
→「多額の借財」にあたる場合は、意思決定の慎重さを確保するため、委員会設置会社以外の取締役会設置会社では取締役会の決議事項としている(会社法362条4項2号)。

【②について】
→募集株式の発行=株式会社が成立後に株式を発行すること
→メリット:長期的かつ大量の資金調達ができる
→デメリット:①持株比率の相対的な低下に伴う会社の支配的地位の低下、②第三者に対して市場価格よりも有利な金額で募集株式が発行された場合、株価が低下し剰余金配当も減額されるため、経済的利益も害される→株主の利益の保護が必要

●公開会社
→株主は募集株式の引受権を当然に有するわけではない(会社法202条)
*既存株主の持株比率維持の利益より、機動的な資金調達を図るため
→募集株式の発行は、原則として取締役会の決議による(会社法199条2項,202条1項)

●非公開会社(すべての株式に譲渡制限がついている会社)
→原則として募集株式の引受権を付与される(202条1項)
→募集株式の発行は、原則として、募集事項の決定は株主総会決議による(199条2項)
→ただし、株主総会の決議によって、募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社では取締役会)に委任することができる(会社法200条1項)

●株主保護のための事前的手段
・発行事項の公告または株主への通知
→株主が違法な募集株式発行に対して事前の措置を講ずるため
→公開会社では要求されている(201条3項・4項・5項)
*非公開会社では不要

・会社が株主以外の第三者に対して有利な払込金額で募集株式を発行する場合
→デメリット②の理由から要請される
→事前に株主総会の特別決議を必要とし、株主総会でその理由を説明しなければならない(199条2項・3項,会社法309条2項5号)
→公開会社、非公開会社どちらも認められている
→「特に有利な払込金額」=公正な発行価額に比して、株式引受人にとって著しく有利な価額(通説)

・募集株式発行の差止め
→法令定款違反もしくは著しく不公正な方法による発行である場合認められる(会社法210条)
→「著しく不公正な方法」の判断基準
→判例(忠実屋・いなげや事件):募集株式発行の主要な目的が支配権の維持・獲得にある場合は、資金調達目的があっても新株発行を正当化させるだけの合理的な理由がない限り、不公正発行にあたる
→学説(通説):資金調達目的がある限り、既存株主の持株比率が低下しても不公正発行にならない

●株主保護のための事後的手段
・取締役と通じて著しく不公正な発行価額で株式を引き受けた者への差額支払義務(会社法212条1項)
→株主代表訴訟も認められる(212条1項,会社法847条1項)
・取締役・執行役の財産価額填補責任(会社法213条1項,2項,4項)

・募集株式の発行の無効の訴え(会社法828条1項2号)
→募集株式の発行が、株式の譲受人や債権者等多くの利害関係人を生み、また新株(募集株式)はすでに流通しており、無効主張の提訴期間や提訴権者を制限する等して、取引の安全・法的安定性の保護を図っていることを考えれば、募集株式の発行等の無効原因はできるだけ狭く解するのが相当である。
・株式発行不存在確認の訴え(829条1号)
→出訴期間の制限はなく、かつ確認の利益が認められる限り原告適格に制限はない

【③について】
 社債とは、会社が行う割当てにより発生するの会社を債務者とする金銭債権であって、会社法676条各号に掲げる事項についての定めに従い償還されるものである(会社法2条23号)。会社は社債発行により債務を大量・長期にわたって負うことになるため、会社の財務状況を悪化させ、剰余金配当金の減額・会社の倒産により、株主の経済的利益を害するおそれがある。
 そこで、社債発行の場合における株主保護を図るために、まずその発行の慎重を期すべく、委員会設置会社以外の取締役会設置会社においては、募集事項の決定は取締役会の専決事項とされている(362条4項5号)。しかし、社債は会社に対する債権であり、企業の資金調達にとって必要であることから、厳格な規制までは設けられていない。
 もっとも、社債権者に新株予約権を付与した社債である新株予約権付社債(会社法2条21号)については、潜在的には新株であるから、新株(募集株式)発行に準じた発行手続が要求される(会社法238条以下)。

【④について】
 新株予約権とは、新株予約権者が会社に対して、これを行使することにより、その会社の株式の交付を受けることができる権利である(2条21号)。新株予約権は、発行することによって、募集株式の発行と同様、既存株主の利益に影響を与えるので、株主保護の規定が設けられている。
→募集株式の発行の審査基準については同じ

●株主保護のための事前的手段
・募集事項の決定についての取締役会の決議(会社法240条1項)
→委員会設置会社では執行役への委任が可能である
→非公開会社では募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社においては取締役会)に委任する場合は、定款の定めによって委任することができる
・公開会社における発行事項の通知・公告(240条2項,3項,4項)

・会社が株主以外の第三者に対して有利な払込金額で募集発行についての株主総会特別決議(240条1項)
→株主総会での募集発行の理由の説明(238条3項)
→公開会社、非公開会社を問わない

・発行差止請求権(会社法247条)

●株主保護のための事後的手段
・不公正な価額で新株予約権を引き受けた者の差額支払義務(会社法285条1項)
・新株予約権発行無効の訴え(会社法828条1項4号)
・新株予約権発行の不存在確認の訴え(会社法829条3号)

【⑤について】
 この方法として自己金融があるが、剰余金分配可能額から資金を調達する自己金融は、任意積立金等を不当に資金運用すると会社にひいては株主の利益を害するおそれがあるので、業務執行として取締役会設置会社では、取締役会の決議を要する(362条2項1号)