【2日目】憲法過去問練習(人権) | うんちくコラムニストシリウスのブログ

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 Y(日本弁護士連合会)の行う予定である決議1~4に対し、Yの会員であるXは、①弁護士法45条3項に基づき法人であるYが決議1および決議3の内容を社会全体に通知するための政治活動を行うことは、Yの目的の範囲を逸脱する、②決議1および決議3に基づく活動に基づき、Yの会員であるXを含めた弁護士が納入するYの財政から支出する決議2および決議4は、Yの会員であるXの思想・良心の自由を侵害すると主張している。そこで、以下では①の点および②の点につき検討する。
【①の点について】
 ①の点を検討するためには、まず法人であるYが政治活動を行うことができるか否かについて検討する。すなわち、(1)政治活動を行う自由が憲法上保障される人権であるか(及び法人に政治活動の自由が認められるか)、(2)(1)の前提として、法人に人権共有主体性が認められるか、(3)Yは決議1および決議3に基づく政治活動を行うことが、Yの目的の範囲を逸脱するかを検討する。
(2)について
 そもそも、人権とは個人の権利であるから、その主体は本来自然人でなければならない。そこで、法人は自然人ではない以上、人権の享有主体となり得ないのか否かが問題となる。この点については、学説の通説的見解および八幡製鉄政治献金事件判例は、法人に対しても権利の性質上可能な限り一定の人権の保障が及ぶとしている。思うに、法人の活動が自然人を通じて行われ、その効果は究極的に自然人に帰属することに加えて、法人は現代社会において一個の社会的実体として重要な活動を行っていることに鑑みると、上記の学説および判例の趣旨のように解するのが相当である。もっとも、具体的にどのような人権が法人に保障されるのかについては、当該法人の社会的に認められる実体と各々の人権の性質によって異なる。
(1)について
 まず政治活動を行う自由については、通説的見解は、政治的表現の自由として憲法21条1項で保障される人権であると解している。そこで、次に法人に政治活動を行う自由が認められるか否かが問題となるが、この点について、通説的見解は、政治結社の自由が21条1項で保障されることに鑑みて、広く法人の政治活動の自由も保障されていると解する一方で、法人の性格や具体的な政治活動行為の性質により保障の程度・範囲を個別的に考察すると解している。そして、上記の八幡製鉄政治献金事件判例もは、議会制民主主義を支える不可欠の存在である政党の健全な発展に協力することは、社会的実体である法人に当然期待されているとして、法人の政治活動の自由を肯定している。思うに、法人に政治活動の自由が認められるとしても、法人のもつ巨大な経済的・社会的な実力や、一般国民の政治的自由を不当に制限する効果を伴ったり、法人内部の構成員の政治的自由と矛盾・衝突することを考慮すれば、法人の政治活動の自由は自然人とは異なる特別の規制に服すると解するのが相当である。すなわち、法人内部の自然人の政治活動の自由および外部の一般国民の政治活動の自由を不当に侵害しない限りにおいて、初めて法人の政治活動の自由が認められるにすぎないと解するべきである。
(3)について
 次に問題となるのは、憲法上認められる法人の政治活動の自由とその内部の構成員との私人間同士の利益調整が問題となる。とりわけ、法人の構成員たる私人は各自の考えに基づいて政治活動の自由を有するので思想・良心の自由(憲法19条)との関係が問題になるからである。この点について、私人間において憲法の人権規定が適用されるのかが問題となるが、三菱樹脂事件判例は、私的自治の原則を尊重しながら、同原則の一般的制限規定である民法上の諸規定の適切な運用によって自由や平等の利益調節を図るべきであると判示している。さらに、今日私的自治の原則と人権保護の調和を図る必要性があることを考えれば、私法の一般条項を介して、憲法の人権規定ないし趣旨を考慮するのが相当である(間接適用説)。そこで、本問では法人の「目的の範囲」(民法34条)内か否かの解釈の中で調整が図られることになる。すなわち、①法人の目的・性質、②具体的な行為と法人の目的との関係、③問題とされている権利・自由の性質、構成員に求められる協力の内容・程度等を衡量して判断するのが相当である。
●あてはめ
 上記の審査基準に基づき、①について考えると、まずYは弁護士法47条の規定に基づく、加入参加が強制される職業団体(公益法人)である。この公益法人という点を重視すれば、公益を目的とする以上、一定の政治的中立性が要求されることになる。しかし、Yは弁護士法42条2項の内容を準用される団体であり、なおかつ決議1および決議3の内容自体からは特別Yの構成員に対して拘束力のある協力を求めたものではない。したがって、①については、Yが行う予定である決議1および決議3はYの目的の範囲を逸脱したものとはいえない。したがって、Yは決議1および決議3を行うことができる。
【②の点について】
 ②の点を検討するためには、①で検討した法人の政治活動の自由にかかわる問題に加えて、政治献金の寄附が問題となる。法人が政治献金をすることができるかについて、先の八幡製鉄政治献金事件判例は、特約の制約を認めず、自由になし得ることができるとしている。そして、政治献金をする自由が憲法上保障される人権か否かについても、政治献金をする自由が政治活動の一環であることに鑑みて、21条1項で保障されると解するのが通説的見解および判例の理解である。だが、②の点で問題となる政治献金の寄附の自由は、言うまでもなく、①の点において問題となった法人の政治活動の自由と法人内部の構成員との思想・良心の自由との利益調整が、①の点以上に問題となるのである。そこで、以下では、①の点で検討した審査基準に基づき、②の問題点について検討する。
●あてはめ
 まず①で検討したように、Yは加入参加が強制される職業団体(公益法人)である。しかも、構成員に脱退の自由が保障されない強制加入団体においては、多数決によって特定の政治献金の寄附を決議することは、構成員が自己と異なる政治信条を甘受する結果となり妥当ではない。こうした加入強制団体による政治献金の寄附について、南九州税理士会事件判例では、「目的の範囲」外の行為であり、寄附のために会員から特別会費を徴収する旨の決議は無効であるとしている。しかるに、本問においても、上記判例の趣旨と同じく、決議2および決議4に基づくYの政治献金は「目的の範囲」外の行為であると解するのが相当である。したがって、Yが行う予定である決議2および決議4については無効であり、Yは決議2および決議4を行うことはできない。

【解答後の感想】
結論が見えているテーマほど、記述は実は詳細に書かなければ点数に差が開かないから厄介である。

また時間的余裕を考えると、憲法論述は統治→人権、刑事法論述は、刑事訴訟法→刑法と書くのが相当である。