【1日目】刑事訴訟法過去問練習 | うんちくコラムニストシリウスのブログ

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【問題】憲法33条が保障する令状主義について説明した上で、現行犯逮捕、準現行犯逮捕、緊急逮捕につき論ぜよ。
 令状主義とは、強制処分をするには、事前に裁判官の発付する令状によらなければならないとする原則である。これは、捜査機関から離れた公平な立場にある裁判官に、令状発付の権限を与え、その要件や必要性の有無について事前に審査させ、捜査機関の権限濫用から人権侵害を防止しようという憲法33条の趣旨に基づく。しかし、どのような場合でも、必ず令状の発付を必要としたのでは、捜査の必要性、ひいては実体的真実の発見(刑事訴訟法1条)という刑事訴訟法上の目的が損なわれてしまう。そこで、①令状主義の例外を認める必要性があり、②令状主義が採用された趣旨である人権侵害防止の要請を没却しない範囲で、憲法及び法律で、令状主義の例外を認めることができる。そこで、以下では令状主義の例外である現行犯逮捕、準現行犯逮捕、緊急逮捕について述べる。
【現行犯逮捕(刑事訴訟法213条)】
 現行犯逮捕とは、「現に罪を行い、または現に罪を行い終わった者である」原稿犯人(刑事訴訟法212条1項)に対する無令状の逮捕のことである(213条)。そこで、まずは現行犯逮捕が強制処分であるにも関わらず、令状なく許される理由が問題となる。この点については、現行犯逮捕では、(1)犯人を検挙するためには、裁判官による令状発付を待っている時間的余裕がなく、速やかに逮捕する必要性が高いこと、(2)人権保障の観点から犯罪と犯人が明白であり、事前の誤認逮捕のおそれがないことがその理由である。もっとも、その例外は令状主義の趣旨である人権侵害防止の要請を没却しない範囲で認められなければならない。そこで、現行犯逮捕で無令状の逮捕が認められるには、①犯人および犯罪の嫌疑が明白であり、②犯行と逮捕行為との時間的場所的接着性があり、③逮捕の必要性(刑事訴訟法199条2項但書)を要件とするのが相当である。
【準現行犯逮捕(刑事訴訟法212条2項)】
 準現行犯逮捕とは、212条2項の「各号の一にあたる者」で「罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる」準現行犯人に対する無令状の逮捕である。そこで、まずは準現行犯逮捕が強制処分であるにも関わらず、令状なく許される理由が問題となる。この点については、準現行犯逮捕では、現行犯逮捕と同様に、速やかに逮捕する必要性が高く、212条2項各号の要件をみたした場合、誤認逮捕のおそれがないことがその理由である。そして、準現行犯逮捕で無令状の逮捕が認められるには、①犯人および犯罪の嫌疑が明白であり、②犯行と逮捕行為との時間的場所的接着性があり、③逮捕の必要性(刑事訴訟法199条2項但書)があり、④212条2項各号の該当性を要件とするのが相当である。ただし、準現行犯の②の要件については、最大限数時間以内と現行犯逮捕に比べ緩やかに解するのが相当である。
【緊急逮捕(刑事訴訟法210条)】
 緊急逮捕とは、一定の重大犯罪で、高度の嫌疑があり、緊急性が認められる場合に、これらの理由を告げて無令状で逮捕することである。そこで、まずは緊急逮捕が強制処分であるにも関わらず、令状なく許される理由が問題となる。さらに緊急逮捕については、憲法33条が現行犯逮捕の場合のみを令状主義の例外としていることから、同条に反するかも問題となる。この点については、緊急逮捕では、①真実発見の観点から犯人を検挙するため、令状発付を待っている時間的余裕がなく速やかに逮捕する必要性が高く、②緊急逮捕は緊急状態下での重大犯罪に限っており、その跡直ちに令状請求が必要とされており、令状主義の趣旨である人権侵害防止の要請を没却しない範囲であることに鑑みれば、憲法33条に反せず、無令状が認められると解するのが相当である。そして、緊急逮捕で無令状の逮捕が認められるには、①犯罪の重大性、②嫌疑の充分性、③緊急性、④逮捕時における理由の告知、⑤逮捕後「直ちに」逮捕状の請求をすることである(210条)。