ちなみに、訴訟物理論をなぜ一番最初に習うかというと、「訴訟物は、訴訟法理論を訴えの提起から判決まで貫く基本概念(バックボーン)である」とも考えられてきたかららしいです♪
→具体的には、①二重起訴の禁止にあたるか、②処分権主義(246条=裁判所は当事者が申し立てていない事項について判決をすることができない) の理解、③既判力の拘束力(後訴の判断は前訴の判断に拘束される=前の訴訟と矛盾した判決を下すことができない)に関係するから。
旧訴訟物理論:実体法上の請求権一つにつき訴訟物は一つである
新訴訟物理論:訴訟法独自の観点から訴訟物をとらえ、事実上同じ請求である場合には実体法上の請求数にかかわらず訴訟物は一つである
【事例で考えてみると・・・】
同一の事案に対する損害賠償請求で債務不履行(民415)と不法行為(民709)に基づく請求が可能な場合、旧訴訟物理論ではこれらは別の訴訟物ということになり、新訴訟物理論ではこれらは同一の訴訟物ということになる。
→①旧訴訟物理論であれば債務不履行で判決が確定した後でも不法行為で訴訟ができる(二重起訴の禁止にはならない)が、新訴訟物理論の考え方を採用するとできない(二重起訴の禁止にあたる)ことになる。
→②旧訴訟物理論の考え方を採用すると、債務不履行に基づく請求を行った場合、裁判所は不法行為責任に基づいて損害賠償請求認容(損害賠償支払 え)判決をすることができない(両者が訴訟物を異にするから)が、新訴訟物理論の考え方を採用すると、「受給権」という一つの訴訟物の範囲内の事柄である 以上は許される、つまり判決が可能となる。
→③旧訴訟物理論の考え方を採用すると、(1)前訴(債務不履行責任に基づく訴訟)の確定判決の既判力は、②後訴(不法行為責任に基づく訴訟)に影響を及ぼさない。
【裁判実務はどちらを採用しているか?】
→裁判実務・司法研修所は旧訴訟物理論を採用している→なぜか?
→①基準の明確性
→旧訴訟物理論の方が、当事者の攻撃防御の目標・裁判所の審判対象を明確にする、といわれている。新訴訟物理論によると、当事者は、「とりあえず この法的構成で争っているが、後日のために他の法的構成でも主張・立証しておかなくては」と考えなければならなくなる。裁判所も「こういう点の主張立証は 不要なのか?」と釈明を求めなければならない場合が生じ、釈明の負担が増大しかねないということが言われている。
→②結論の不合理(簡単に言うと、③って矛盾してねという批判)は信義則によって解決できる
→旧訴訟物理論の主張者も、「このような訴訟(債務不履行に基づいて損害賠償を起こして負けた後に、不法行為責任に基づいて損害賠償を請求する訴 訟)を許さない」という点では新訴訟物理論と同じ結論を導く。ただし、旧訴訟物理論からは、当然には、このような結論を導けないので、信義則(民訴法第2 条・民法第1条2項)を持ち出すのである。つまり、このような後訴は、信義則に反して許されないものと解釈する。
【学説】
●代表的な旧訴訟物理論の学者(少数派)
・伊藤眞(東京大学名誉教授、三ヶ月章の弟子)
・上田 徹一郎(関西学院大学名誉教授)
・兼子一(故人)(元東京大学教授)→最初の提唱者
→民事訴訟学の通説の大半は未だ兼子一の説に拠る(wikiより)
●代表的な新訴訟物理論の学者(多数派)
・新堂幸司(東京大学名誉教授、兼子一の弟子)
→新堂の学説は、判例・実務に直接取り入れられるには至らなかったが、その問題意識が民事訴訟手続の運用の改善に資するところは決して小さくなかった(wikiより)
・三ヶ月章(故人)(元東京大学名誉教授、細川内閣法務大臣、兼子一の弟子)→最初の提唱者
→その学説は、後に新堂幸司等に引き継がれ、発展をみたが、裁判実務に受け入れられるまでに至らなかった。しかしながら、民事訴訟の紛争解決機能 を強調し、裁判のあり方・運用の改善の必要性を再認識させるなど、大きな影響を与え、2008年現在民事訴訟法学会においては多数説となっている (wikiより)
【結論】
個人的には、旧訴訟物理論派
<参考>
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