こんばんは。ノックノックスのヤストミです。
こどもの日、皆様はいかがお過ごしでしたでしょうか。私は息子と二人公園へ行き、パズルを組み立て、ラーメンを食べ・・・と、普通で特別な1日を過ごしました。稽古中から息子とゆっくり遊ぶことができなかったので、今は息子と過ごすことにできるだけ時間を割きたいのです。今うちの子は3歳半ですが、喋ることも一人前になり、立派にコミュニケーションが取れるようになってきました。おもいやり観劇回にも参加していましたが、「お父ちゃんの仕事場おもしろいね~」と言ってくれたのが、父親としてはとても嬉しかったです。
さて、話が逸れてしまいましたが、本日も昨日に引き続き「幸せの標本」の登場人物についてお話をさせて頂きます。
ゴリライモと対になる存在の手羽先は、賢く、そして孤独を抱えてきた文鳥です。人の手を離れ、厳しい自然界で文鳥が生き残っていくのは至難の業です。他の動物はもちろん、カラスなどの大型の鳥類からも狙われたことでしょう。彼女は持ち前の知識と、そして運の良さ(?)で、過酷な世界を生き延びてきました。「宇宙船から光が・・・」と話していたように、確実に興味を持ってここへやって来ているわけですが、それが寂しさゆえなのか、(彼女が生きている)世界に嫌気がさしていたからなのか、それは手羽先自身にしかわからないところです。
ペットショップで彼女を買った親子は悪い意味で相当なものですが、お母ちゃんには甘えているところを見ると、根っからの人間嫌いではないようです。 そこが後述のトカゲとは大きく違っていて、動物サイドと人間サイドで分けた場合に、ちょうどどっちつかずのポジションに彼女はいます。トカゲにそこをいいように利用されてしまったり、ゴリライモに対しての嫉妬心が結果として自分の居場所を無くしてしまうことにつながるなど、手羽先の魅力はその脆さにあるのかもしれません。また、蜜蜂のことをあれだけ流暢にゴリライモ相手にレクチャーできるのにも関わらず、美味しそうだからという理由でお母ちゃんの大切な種を食べてしまったり、土だからここでしちゃってもいいと考えたり、そういうギャップも彼女の魅力です。
そもそもゴリライモのせいとは言え、お母ちゃんの大切な・・・しかもお父ちゃんの大好きだった・・・菜の花の種を食べてしまったことがわかってからの、ゴリライモとのやり取りは見ていて辛いものがありますが、ゴリライモの探求心のように、彼女の根底にある嫉妬心が彼女を突き動かしたのかもしれません。とは言え最後のやり取りでは、この作品のテーマ、メッセージを背負うキャラクターとして嫉妬心を超え、地球の〝一生き物〟としてトカゲと対峙しています。結局は手羽先も優しい心と、しっかりとした芯を持っているのです。
そんな手羽先や、無垢なゴリライモを手玉に取って楽しんでいるトラブルメイカーがトカゲです。彼には名前がありませんが、これはものがたりの中で明かされていないだけで、実際のところどうなのか・・・これは彼に聞いてみないとわかりません。自然環境をめちゃくちゃにしてしまった人間に対し、他の動物以上に憎しみを抱いています。何があったのでしょうか。故郷の野山を奪われてしまったのでしょうか。家族を、それとも恋人を殺されてしまったのでしょうか。本人は何があったか教えてくれませんが、とにかく色々とあったのでしょう。憎しみ過ぎてある意味達観している部分もあるくらいです。彼の放つ言葉の多くは現代人にとっては耳の痛いものばかりです。それを次から次へと繰り出してくるわけですから、お母ちゃんはさぞかしうっとおしかったことでしょう。
ゴリライモに「あんまり意地悪言うと潰しちゃうぞ」と言われていたように、この宇宙船の中で過ごす動物としては、食物連鎖の最下層に位置します。フィジカルの勝負では誰と戦っても勝てません。手羽先とはもしかしたらいい勝負ができるかもしれませんが・・・どうでしょうね・・・?負けそうですよね。それなのに、彼は口先だけでゴリライモや手羽先に揺さぶりをかけていたわけですから、口が達者で片づけてしまうにはもったいないくらいのクレーバーさを持ち合わせていると言えるでしょう。
お母ちゃんに直接「あなただって家族じゃない」と言われた手羽先と違って、最後の最後まで憎まれ口をたたいていた彼は、最終的にお母ちゃんの(と言うかこの宇宙船の中での)家族になれたのか・・・誰しも気になるところだと思いますが、これはご覧になった方がお好きに解釈して頂くのが良いのではないでしょうか。私は家族になれた・・・と思いたいです。
癖の強い動物たちの中にあって、唯一まとも(?)な存在なのが船長です・・・いえ、それは過去公演の話・・・。池田さんという器を受けて船長は今回の公演で随分と変化しました。
以前の記事で初演の船長はチンパンジー型の宇宙人だというお話をしましたが、ツアー版、沖縄版でもその設定は踏襲しておりました。しかし今回はその設定は一度サラにしまして、どんな宇宙人かは特に決めないことにしました。その宇宙人が、人間の皮?ガワ?を被っているのが今回の船長です。前回までは「目に入ると痛い」だったものが「目に入ると痛いんですねぇ」と発汗機能に対して無知なところがあったり、ゴリライモと手羽先を探す際にちょっとだけ猟奇的な目をしていたり・・・どんな生き物なのか最後まで分からないという魅力が加わりました。ステレオタイプのタコみたいな宇宙人もありですし、私は勝手にウルトラマンに登場したメフィラス星人だと思って稽古場から見ておりました。
「チャンスを与えているのです」と本人が言っていたように、御親切に星々を巡りやばそうな星に手を差し伸べるのが彼の仕事です。どうやって生計を立てているのでしょう。そもそもそういった価値観はないのかもしれませんね。きっと下っ端なのでしょう。中間管理職と言ったポジションではないでしょうね。上からやんや言われていそうです。とは言え、そのおかげで多少の自由が効いているのかもしれません。彼の故郷からすると辺境の星である地球に派遣され、わけの分からない生き物と一緒に暮らすわけですから、手羽先と出会うまではやる気も出なかったことでしょう。(いや・・・そんなことはないか・・・)
蜜蜂を増やすことができたら・・・またはできなかったら・・・これがものがたりの大きなポイントになってくるのですが、劇中でこの“期限”的なものはあえて発言していません。途中で「183日目ですね」という会話がありますが、これによって割と長い間宇宙船にいるという事実と、1年の約半数・・・ということは期限は1年間くらいなのかな・・・?と想像してもらえたらいいな、と私は勝手に思っております。しかしもしかしたら期限は無限かもしれませんし、船長の気分、もしくは船長の上司にあたる〝故郷の星にいる偉い人たち〟の気分次第かもしれません。いつでも生き物は、それより強い生き物の都合でその運命が決まっていくのです。
さて、2日間に渡ってお届けしてきた登場人物についてのあとがきですが、こちらは今日でお終いです。
明日は楽隊について、少しお話ができればと思います。それではまた明日。
追伸:
蜜蜂クイズの正解者にお送りするプレゼントですが、こちらは明日発表致します。お楽しみに。
写真撮影:勝見里奈





