沈 | 心から

心から

その日その時に感じたままを、筆に託して表現してみます。
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$心から

今日は小雨。

昨夜の満月がウソのよう。

昨夜、冴え冴えと輝き、降り注いでいた光の筋が、

今日は冷たい雨となって、空から落ちてきます。

そのせいか、今日は少し気分も沈みがち。

どんどん沈んでいって、下の方でどんよりと溜まっている「沈」を書いてみようと・・・。

だけど、沈みっぱなしでいるわけにもいかないと、

最終画で、しっかりと受け止め、

最後は、大きく上に向かわせました。


つくりの「冘(ちん)」の甲骨文字は、「牛」+「川」からなり、

牛を黄河の底に沈めて神に供える、「沈祭」という祭礼を行うさまを表します。

金文では、「人」+「-印」の会意文字で、

人間の首や肩をー印の重荷で押さえて、深くしたに押し沈めるさまとなります。

何だか恐ろしい!

「氵:水」+「冘」で、水中に沈めること、となり、

転じて、静か・落ち着くことの意にもなりました。


この字を使った熟語で、まず思いついたのが「沈黙」。

いつもの私には耳の痛い言葉なのですが、

遠藤周作氏の『沈黙』を呼んだ時の衝撃は、未だ忘れることができません。

無宗教の私には、神に対する気持ちを理解することができず、

しかし、神を信ずる者の強さを見て、考えさせられ、

胃が痛くなったのを覚えています。

対象が神であれ何であれ、信じることの重要性を思い知らされました。


今の私は、ちょっと軽いなぁ。

時には、静かにじっくりと「沈着冷静」に行動しなきゃ、と思ってはいるのですが。


余談ですが、「沈菜」はキムチのこととか。

キムチだけではなく、日本のお漬物も「沈菜」ですよね。

沈むことは、そこで時期を見ることにも繋がり、

その間に蓄えて熟成させ、ころあいを見計らって、一気に浮上すれば良い!

そのための準備期間と考えれば、

「沈」も、とても大切なときなのでしょうね。