2024夏アニメ 8月1日視聴分 | アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2024年夏アニメのうち、7月31日深夜に録画して8月1日に視聴した作品は以下の5タイトルでした。

 

 

【推しの子】(第2期)

第16話を観ました。

今回はいよいよ舞台稽古が本格化して、最後は舞台の本番初日を迎えるところまで描かれましたが、稽古をガッツリ描くという感じではなくて、短いエピソードを繋げていくような構成で、あんまり大きな盛り上がりがあるエピソードではなく、繋ぎ回という印象でしたね。お芝居に関しては次回以降の舞台本番でガッツリ描いていくのでしょうから、今回はあえて描かないようにしているのだろうと思われ、むしろ稽古のオフショット中心の内容でした。

まず最初は五反田監督の家にアクアとあかねが行った前回の場面の続きです。ここでようやく少しは元気になったアクアとあかねが五反田監督と食事をしたりしますが、その後、アクアの小学校時代の俳優仕事の映像をあかねが見る場面があり、ここでの五反田監督との会話場面で、アクアが昔から「感情演技」が出来ないことにコンプレックスを持っていたことが分かります。それでアクアは「自分には才能が無い」と言うようになったのですが、それは五反田監督が思っているような単に「感情演技が出来ないから役者の才能が無い」という意味で言っているのではないのでしょう。

アクアは子役時代からよく撮影現場でPTSD発作を起こして倒れていたようで、それはつまり前回、稽古場で喜びの感情演技をするために楽しいことを考えた際に雨宮吾郎が頭の中に現れてアクアを恫喝したのと同じような出来事が、子供の頃からアクアの頭の中で起きていたのだということを意味します。おそらく、それがアクアが「自分には役者の才能が無い」と考えるようになった原因です。それはつまり「雨宮吾郎が邪魔をして感情演技が出来ない」「だから自分は役者の仕事が出来ない」という意味であるように思えますが、本質はそれだけではなく、アクアは雨宮吾郎に「お前の人生は復讐と償いのためだけにあるんだ」と恫喝されるたびに「自分が役者をしているのは復讐の手段に過ぎない」と思うようになり、「こんな自分は本物の役者ではない」と思うようになり、それで「自分には才能が無い」と言うようになったのでしょう。

おそらくアクアは本当に「自分には才能が無い」とは思っていなかったはずです。五反田監督も言っているように「感情演技」が出来なくても演技は出来るのであり、アクアはそれを器用にこなすだけの才能はあった。頭の中は三十代の男であるアクアは子供の頃から五反田監督が理解している程度には自分の才能についても理解は出来ていたはずです。それなのに何故アクアは「自分には才能が無い」などと嘘を言ったのかというと、それは役者を辞めるための口実だったのでしょう。

アクアは雨宮吾郎に「復讐のために役者をやれ」と命令されて、それに反抗したのです。「復讐のために芸能界に関わるのなら裏方だって良いはずだ」とは1期の序盤でもアクア自身が独白していましたが、それは要するに脳内の雨宮吾郎に対する言い訳で言っていたのです。そうしてアクアは子供の頃に一旦役者を辞めて裏方になった。

どうしてアクアは「役者をやらない」ことにこだわったのか?それはアクアが役者の仕事が本当は好きだったからです。好きだから「復讐のため」になんかやりたくなかったのです。復讐のために自分の好きな役者の仕事を汚したくなかったのです。だから役者を辞めて裏方に回って、裏方をやりながら復讐を果たそうとした。だが結局、やっぱり役者の仕事が好きだから、こうして再び役者の仕事をやってしまっている。だが脳内の雨宮吾郎と折り合いをつけていくために「自分はあくまで復讐のために役者の仕事を利用している」と自分に言い聞かせて生きているのです。

それでアクアは今回この場面で、あかねに「どうして演劇やってるの?」と問われて「もし俺の目的が人を殺すことだったらどうする?」「芸能界の上の方に目的の人間がいて、そいつを殺すために上に行きたいのだとしたらどうする?」と問い返す。そう言えばあかねみたいな真面目に演劇をやっている子は動転して話が終わるとアクアは計算したのですが、あかねは前回アクアが寝込んでうわ言を言っているのを聞いた場面で、これまでに自分が知り得た情報をパズルのように脳内で組み合わせて、アクアがアイの隠し子であって、14年前にアイを殺した犯人に復讐しようとしているという事実に辿り着いていましたから、むしろこのアクアの言葉は答え合わせのようなもので、アイを殺した犯人は芸能界に居て、アクアはその人間に復讐して母の仇を討つために役者をやっているのだと確信しただけでした。

そこで普通ならあかねはアクアに幻滅してもいいはずですが、あかねは1期のリアリティーショー編でアクアに命を救われていますから、アクアの助けになることなら何でもやりたいという気持ちになっている。だから「私も一緒に殺してあげる」「罪を背負うなら私も一緒に背負いたい」と応えて、逆にアクアを動転させます。

あかねは相当の覚悟で言っているのだが、こんな話は突き詰めても非建設的でしかないので、とりあえずあかねはそれは「彼女の責務」だと言い、アクアにも「彼氏の責務」を求めるというレトリックを使って話題を建設的な方向に切り替えます。それでアクアの「彼氏の責務」とは「彼女」であるあかねが有馬かなに勝つための手助けをすることであり、有馬かなと舞台上で相棒役である姫川大輝があまりに演技上手であるので現状では勝ち目が無い。だからあかねの舞台上の相棒役であるアクアが姫川に負けない演技が出来るようにならねばならない。そこで五反田監督に相談してみたところ、やはり「感情演技」をやるしかないということになる。それで結局アクアは舞台の稽古が終わった後、毎日あかねと一緒に五反田監督のもとに行き感情演技の特訓を受けることになります。

この後は、ルビーが級友のみなみと一緒にアクアの舞台稽古を見に行って役者の鴨志田にナンパされそうになったみなみにメルトが助け舟を出して、メルトが鴨志田に侮辱されたりする場面が描かれたり、楽屋での雑談場面で実はあかねがかなに憧れて子役になったということが判明したり、あかねとかながレスバ合戦したりする場面が描かれたりします。ルビーとみなみのコントとか、あかねとかなのコントとか、美少女のギャグシーンはやっぱり楽しくて華やかで良いですね。そんな中、ルビーがアクアがあかねとエロいことをしてるかもしれないという話を聞いてそれを強く否定する場面は印象的で、それは16歳で自分たちを産んだ母アイのケースを理解している者同士の強い信頼感が垣間見えました。

そうして舞台本番に向けて稽古が進んでいくのですが、具体的な稽古シーンはあまり描かれず、あかねとかな、メルトと鴨志田、アクアと姫川というそれぞれのライバル関係がヒートアップしていく模様が示唆されていき、いよいよ舞台初日を迎えたところまで描かれて今回は終わります。ただアクアは結局は感情演技が出来るようにはなっておらず、雨宮吾郎の幻影にも悩まされ続けたままのようです。しかし、どうもそれを逆に利用して演技をやろうとしているみたいで、それがどういうものになるのかは次回を楽しみに待ちたいと思います。

 

 

グレンダイザーU

第4話を観ました。

今回は前回のラストで円盤で墜落してきて救助されたデュークの幼馴染のナイーダが、やっぱりそれは演技で、デュークの命を狙うという話です。ナイフでデュークを刺そうとしたりしますが牧葉ヒカルが現われて邪魔に思ったのか途中でやめたりします。ただ、どうもナイーダの様子がおかしくて、どうやらガンダル達に洗脳されていて、本来のナイーダの人格との間で葛藤しているみたいです。本来のナイーダというとカサドの従者のような立場で、それはそれでデュークの敵対者という立場であり、カサド救出のために動いているはずなんですが、どうやらカサドに従っていたのはデュークに近づいてフリード星やルビーナに関する情報を伝えるためであり、カサドに忠誠を誓っていたわけでもないようです。しかしガンダルにデュークを殺すよう洗脳されてしまったのでややこしいことになっているようです。

それで、ガンダルは巨大な円盤獣を地球に向けて突っ込ませて、そのタイミングでナイーダがデュークを刺してデュークが重傷を負ったものでグレンダイザーで迎撃出来なくなってしまい地球は危機に陥ります。更にナイーダはデュークや光子力研究所もろとも陽子爆弾で心中しようとする。だがもともとデュークを愛していたナイーダは、デュークに共に生きようと言われて正気に戻り、円盤に乗って巨大円盤獣に突っ込んでいき陽子爆弾で巨大円盤獣もろとも自爆して果てて地球とデュークを救った。そして最期にデュークにルビーナが生きていることを伝えたのでした。

 

 

時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん

第5話を観ました。

今回は前回の政近がアーリャになんかカッコいいことを言ってアーリャが「好き」だとかロシア語で言った場面の流れを受けて政近が帰宅したところから始まる。帰宅すると有希が風呂場の脱衣場で全裸で居て、妹のお着換え遭遇イベントとなるが、これは有希がイタズラで仕込んだものであり、ここから有希と政近の痛々しくも笑える兄妹オタトーク合戦となりますが、やっぱり有希のキャラは強烈であり、これはまた視聴者の心を鷲掴みにすることでしょう。実に下らなくて痛々しい会話内容なんですが、どうせシリアスにやっても痛々しいこの作品なのですから、どうせ痛々しいのならこういう笑えるやつの方がいい。「こういうのでいいんだよ」と大いに思わせてくれるものがありました。

ただ一応はちょっとシリアスな部分もあって、政近が生徒会に入ることを喜んだ有希ですが、政近がアーリャと組んで生徒会長選挙に出ると聞いてちょっと凹んだ様子。そもそもどうして有希がそこまで生徒会長になることにこだわるのかとか、どうして政近が有希に協力出来なくて申し訳なさそうにしてるのかとか、どうも政近の家族には複雑な事情がありそうです。ただまぁ、大体は想像はつくし、たぶんラノベっぽくてクサい話なんだろうと思うので、あんまり興味は無い。そんなことよりも空元気で政近のベッドの下に潜り込んだ有希が身体が引っかかって出られなくなったりする方が面白いし、この作品の魅力だと思う。

その後は政近にカッコいいことを言われて政近を意識するようになったアーリャと政近のすれ違いコメディ展開となるが、政近はアーリャが「好き」と言ったことはテキトーにスルーして、それよりも有希がアーリャがEカップだと言っていたことの方が気になってアーリャをエロい視線で見まくってしまう。まぁすれ違いコメディにすらなってなくて、ただのエロイベントでしたね。だが、まぁそういう頭の悪いところがいい。変にスカした天才キャラなんかで政近を描くより、こういうバカなエロガキとして描く方が面白いに決まってる。最後は新キャラの更科先輩も出てきて政近が新たな生徒会の一員として挨拶して終わりだったが、後半パートはエロいギャグは良かったが、全体的にコメディの繋がりがイマイチだったように思う。

 

 

恋は双子で割り切れない

第4話を観ました。

余計なオタク語りがとにかくウザい。多分こんなふうに批判されても作者や制作側は全く気にはしないでしょう。確信犯的にやってることだから。従来のアニメの脚本の作り方はエッセンスだけを抜き出して構成する韻文的なものであり、それに対してこの作品は日常をそのまま切り取る散文的な試みなのでしょう。言わば今期の「義妹生活」と同種の試みなのです。ただ、こっちはとにかくその日常がオタク臭が強すぎる。それこそがリアルなのでしょうけど、リアルな日常会話なんてつまらないものだと考えれば、確かにこの作品の再現率は凄いものです。そういう意味では驚嘆に値するが、しかしこれをずっと見続ける気はあまり起きない。あとまぁ、そういうの抜きにして純粋にラブコメとして見ても、3人とも湿度が高すぎて根暗すぎて、ちょっと見てて疲れる。そういうわけで今回で視聴は切らせていただきます。

 

 

戦国妖狐 千魔混沌編

第3話を観ました。

今回はたまが再登場して真介と再会したことによって、2人が互いに離れ離れになっていた間のことを教える形で、世直し姉弟編の最終話と千魔混沌編の第1話の間に何が起こっていたのかが明らかとなります。そして、ひとまずたまと真介の目指す方向性が明確になり、物語の舞台は戦国時代の京都に移っていきます。

まず冒頭は前回のラストシーン、黒龍と化したムドが月湖を連れ去ろうとして上空に飛び上がった場面の続きから始まります。すると、そこに上空からたまが真介を連れて降ってくる。前回、真介の前に何者かが現われた描写があって終わったのですが、その相手はやはりたまだったようです。たまが真介を連れて千夜と月湖の危機を救うために現れたわけですが、この時点で真介は相手がたまだとは認識出来ていなかったようです。

たまは世直し姉弟編の最終話で千本妖狐と化した迅火と対峙した際に小娘の姿から成人女性の姿に変化したのですが、その時点で真介は野禅と相打ちになって大量出血して気を失っていました。そのまま2人ともりんずの魂寄せの術で山の神のもとに引き戻されましたが、真介はずっと昏睡状態が続き、真介が目を覚ます前にたまは迅火を探す旅に出てしまい、結局は真介は一度も成人女性の姿に変化したたまの姿を見たことはなかったからです。だから真介はいきなり目の前に現れた女性がたまだとは認識出来ないまま有無を言わさず上空に連れ去られて千夜と月湖がムドに襲われている現場の上空に行く羽目となったようです。

たまの方は宿場で真介たちが泊まった時に同じ宿で月湖と風呂場で遭遇して、真介たちと月湖との会話を聞いていたかのように話しかけていましたから、旅の途中で真介の姿を見かけてしばらく観察していたようです。月湖とは面識は無かったが千夜とは面識はあったし、どういう経緯かは分からないが真介と一緒に旅をしているということは仲間なのだろうと察して、真介が気絶している間に千夜と月湖が黒龍に襲われているのを見かねて、真介を連れて加勢に来たということなのでしょう。

そうして上空に現れたたまはムドに対して幻術を使って目くらましをして、それで生じた隙を突いて真介が荒吹でムドに一撃を加えて、ムドの固い鱗を斬ることは出来なかったが、かなりの痛みは与えたようで、ムドが思わず月湖を離してしまい、月湖は地面に向けて落下する。するとたまが幻術で月湖の分身体を大量に作り、どれが本物の月湖か分からないようにします。この幻術を見て、ようやく真介は自分をここに連れてきた妖狐の女性がたまだと気付く。

そうして、たまが大量の月湖の中から1人だけ選び出して抱き留めて保護したのを見て、ムドはそれが本物の月湖だと思って、たまから月湖を強引に奪ってそのまま彼方へと連れ去ってしまいました。だが、それはたまがムドを騙すための芝居であり、たまが抱き留めた月湖は分身体でした。だからムドはまんまとたまに騙されて偽物の月湖を連れ去ってしまったことになります。そうなると本物の月湖は大量の分身体と一緒に落下中ということになりますが、1人だけ小刀を持っている月湖が本物月湖だと気付いた千夜がなうに乗って飛び上がって本物の月湖を無事に保護して一件落着となります。

その後、真介とたまも降りてきて千夜と月湖と合流しますが、たまの方は千夜が記憶喪失になっていることは知らなかったようで、千夜が自分のことを覚えていないことに驚いたりしますが、とりあえず宿場に逗留して改めて互いに自己紹介することになります。そうして真介は千夜と月湖を外に行かせて、たまと2人きりになってから話を始めます。わざわざそうしたのは、せっかく記憶を失った千夜が人間として生き直そうとしているので千夜に過去の話を聞かせたくなかったからです。

そういうわけで、ここから世直し姉弟編の最終話の後のお話となります。たまの方は断怪衆総本山の戦いで迅火が暴走して千本妖狐になってしまい山の神のもとに引き戻された後、真介が昏睡からいつ目覚めるか分からない状況で真介の目覚めを待つよりも、とにかく早く迅火を探し出そうと焦って山の神のもとから旅立ったのだが、結局全く手がかりが掴めず、現在は幻術の師匠の闇に教えてもらった凄腕の占い師を探している途中なのだという。

一方、真介の方は目が覚めた後、山の神に「3ヶ月修業してから迅火を探してほしい」と依頼され、その報酬として「灼岩を目覚めさせる」と約束されたので、その依頼を引き受けて3ヶ月の山の神の修業を受けたのだという。真介はそれで「いかに自分が弱いか思い知らされた」とか言っていたから、よほど過酷な修行だったようです。ただ結果として真介は以前よりは確かに強くなっていた。だから前回も単独で普通の闇を一蹴出来るぐらいの力をつけていたし、護符の術なんかも習得出来ていたのです。

そうして3ヶ月の修業を終えた頃、真介は山の神と千夜が対峙している現場に出くわした。山の神は千夜の封印を解いて「仕事」を依頼しようとしていたようです。おそらく「仕事」とは真介が探し出した迅火の始末であり、そのためにまずは千夜にも修業を受けさせようとしていたのでしょうけど、千夜はこの時点では記憶を失ってはおらず、断怪衆の霊力改造人間としての自意識を保っていましたから、断怪衆の敵である山の神の依頼など受けるつもりは無い。ましてや実の父であり師匠である神雲を封印した山の神は親の仇、師匠の仇であるわけだから、千夜は山の神を殺そうとして戦いを挑んできた。それで山の神もあくまで千夜が自分の言いなりにならないというのであれば、いっそ殺してしまおうとしていたのですが、千夜がトドメを刺される寸前に真介が割って入って千夜を庇い、山の神は真介もろとも攻撃しようとしたが、ここで何故かりんずが山の神を邪魔して、おかげで真介は千夜を連れて脱出することが出来た。だが、それでも山の神の追撃によってダメージは受けて、それで月湖の村に落下し、千夜は記憶を失ったというところで千魔混沌編の第1話冒頭に繋がるのです。

そういうわけで、真介は山の神との約束は反故にしてしまったので、もう灼岩を目覚めさせてもらう話は無くなってしまった。その代わりに迅火を探す必要も無くなった。だが、真介はもう灼岩には会えない以上、せめて迅火には一度会いたいと思い、山の神の依頼とは関係なく元仲間として迅火を探し出そうと決めて、それで今こうして旅を始めているのです。一方、たまも迅火を探して旅を続けるのだが、たまはたまで占い師を探して迅火の行方を探るというアプローチでいこうと決めているので、それぞれ別々に旅をすることにして、新しい情報が手に入ったら式神で連絡を取り合おうということになった。

そうして真介たちとたまは別れて旅立つこととなったが、別れに際してたまは千夜に「力ある者が戦わずにいることは難しいぞ」と忠告する。だが千夜は「それが人になるために必要な道のような気がする」と言われ、たまは力を求めて人間から千本妖狐になってしまった迅火と真逆なのだなと思い、フッと微笑んで「人間になれるといいな」と言って千夜を見送った。そうしてたまが歩き出すと、しばらくするとムドが襲ってきた。ムドはまだ千夜を食らって月湖を攫い、真介やたまを殺すことを諦めていなかったのです。それでたまは幻術でムドを挑発してムドを自分に引き付けて、先夜の方にワザと行かせないようにして逃げたので、おかげで真介や千夜はムドに邪魔されることなく旅を続けることが出来て、京の都に到着した。

京の都に着くと、真介は千夜と月湖に二条御所に届けてほしいと言って手紙を託します。その宛先は雷堂斬蔵でした。斬蔵は世直し姉弟編の序盤で迅火と戦い、その後、真介に魔剣の荒吹を譲り、京の都に行って将軍の護衛をするとか言っていたので、将軍がいる御所に居るのです。真介が「挨拶をしておきたい」と言っていた相手は斬蔵のことだったんですね。そういえば斬蔵が真介に荒吹を託した理由は、断怪衆に粛清された妹の氷乃の敵討ちという意味合いもあったので、真介としては断怪衆との戦いを終えた今、その顛末の報告をしておくべきだと思ったということなのでしょう。

そういうわけで千夜と月湖が御所に向かって歩くことになりますが、その途中で千夜は突然に奇妙な女に「後ほど狂神として参る」「せめて人気の無き所で」と言われる白昼夢を見て、月湖と別れて1人で廃寺に行きます。おそらく先だってと同じように狂神が襲ってくるのだろうと思い、月湖や他の人々を戦いに巻き込まないようにと千夜は考えたのですが、あの「狂神」を自称していた女もそう望んでいるようであり、正気を失っているようには見えなかったので千夜は不思議に思います。ただ、おそらくこうして自分の行く先にいつも狂神が現われて戦いを挑んでくる原因は自分の中に居る千の闇のせいなのだということは千夜にも理解は出来ました。ただ体内の千の闇たちが望んでいるように戦おうとは千夜は思っていない。千の闇の能力を駆使して狂神から逃げきってやろうと考えていました。

そうして廃寺に狂神が現われて千夜を襲ってきた。その姿はさっきの女とは全く違っていて、巨大なこけしのような奇妙な姿であったが気配はさっきの女と同じであった。そうして千夜は闇の能力を使って逃げ回り戦いを避けて山の中に逃げ込んで狂神から逃れようとする。千の闇の力を持つがゆえに戦いを挑まれ、千の闇の力を持つゆえに戦いから逃れることも出来るという大いなる矛盾を感じつつ千夜は逃げ続けるが狂神を振り切ることは出来ず、狂神はこけしの中から先ほどの女の姿を現わすが、既に正気ではないようで、月湖の村に現れた狂神と同じように意味不明な言葉を呟き、千夜に猛攻撃を仕掛けてきて千夜は絶体絶命となる。その中で千夜は神雲の教えを思い出し、闇を倒す戦いの宿命を思い出す。そこに狂神が千夜に「殺してほしい」と迫ってきて、千夜は仕方なく狂神を殺す。

そこに御所に手紙を届けて戻って来た月湖となうから千夜が狂神と戦っているのではないかと聞いた真介が駆けつけてくるが、既に戦いは終わっており、狂神は最期に「五人組に虚を衝かれて逆らえなかった」と言い残して息絶える。それを聞いて真介は慌てて五人組の情報を聞き出そうとするが狂神の死体はそのまま虚空に消えてしまう。五人組とは例の迅火が千本妖狐になった際にその場に居た五人組であり、真介はどうして五人組が千夜を狙うのかの理由も知りたかったが、同時に五人組が迅火の行方を知っているのではないかとも思っていたからです。

しかし今回も何の情報も得ることは出来ず、千夜は「戦いたくなかった」と涙するので、真介は「生きてりゃいい」と慰める。そして月湖のもとに戻るが、すると月湖と一緒に見知らぬ男がいるので、真介が誰なのかと尋ねたところで今回は終わり次回に続きます。