2023秋アニメ 12月18日視聴分 | アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2023年秋アニメのうち、12月17日深夜に録画して12月18日に視聴した作品は以下の4タイトルでした。

 

 

アイドルマスター ミリオンライブ!

第11話を観ました。

今回を含めて残り2話となり、今回はいよいよライブシアターのお披露目公演が始まります。未来たちチームエイスのデビューもお披露目公演と同時にやるみたいで、その前にチームセブンスはフェスで既にデビューを果たした後という描写になっていました。ただセブンスは今回のお話の中でミリオンスターズの仲間たちの前で歌やダンスを披露する見せ場がしっかりありましたので良かったと思います。

それで今回はお披露目公演を控えて、なかなか一緒に集まることが出来ない各チームなんですが、最初の野外の手作りライブの時のことを思い出して未来たちが皆と心は1つだと認識し、そこにプロデューサーが来て合宿をしようと提案し、お披露目公演の前に全員が一緒になれる時間を出来るだけ作ろうと、ライブシアターで39人皆で合宿することになる。

ここでファーストからエイスまで8チームの各メンバー達の色んな楽しそうなシーンがてんこ盛りとなりますが、序盤は誰が誰なのか分からない状態であったのが、こうして1クールを経過しようとする段階になると、さすがに全員とまでは言えませんが、結構それぞれのメンバーに思い入れを持てるようになっています。それはこの作品がこれだけの大人数のキャラを上手く描写出来たということを意味しているのでしょう。

そうしたワチャワチャした流れの最後にチームセブンスがギターの弾き語りとダンスを披露して、ジュリアが「ここだとホームって感じがして緊張しない」と言ったので、挨拶のスピーチを担当していた琴葉が「このライブシアターは私たちにとって皆さんとの大切なお家のようなもの」という文面を思いついたりします。そして皆で手作りライブを思い出し、あの時皆で手を繋いで歌った時にみたいにまた歌いたいと言い合い、未来がプロデューサーに何かを提案する場面が描かれます。そしてお披露目公演の前の晩は未来たちチームエイスはステージの上で布団を並べて寝て、39人皆と想いが繋がって想像もつかない世界が広がっていくのだと認識します。

そしてお披露目公演当日となり、プロデューサーは「皆で繋いできた輝きを見てもらおう」と皆を盛り上げ、全員での掛け声の温音頭は最初の手作りライブの言い出しっぺの未来にやってもらおうということになり、全員で円陣を組んで、未来が「私たちのバトン、最後まで繋いでいこう!」と声を掛けて全員がそれに応える。

そしてステージ上で最初に琴葉の挨拶があり、その後、チームシックスのライブステージでお披露目公演はスタートし、続いてソロ曲のトップバッターはなんと翼でした。実は翼は事前にプロデューサーに直訴して「一生懸命な静香やいつも本気の未来を見て、自分も負けていられないと思ったんです」と、トップバッターを志願していたのです。そして翼のステージは大成功で会場は大いに盛り上がりお披露目ライブは順調なスタートを切ったところで今回は終わりますが、何やら機材トラブルを予感させるような描写もあったりして次回の最終話はもうひと悶着あってドラマ的に盛り上げてくれそうですね。

まぁ今回はライブ前に全員の見せ場を作ろうという趣旨の回で、ドラマ的に深みがあったわけではないですが、しっかりアクセントとなるドラマは描けており、いつもながら作劇が上手かった。そしてやっぱりライブの華やかさは見事なもので、それだけでも十分盛り上がりましたね。次回の最終話も綺麗に盛り上げて締めてくれそうです。

 

 

MFゴースト

最終話、第12話を観ました。

今回はMFG第2戦の芦ノ湖のレースの予選トライアルが描かれ、いよいよカナタが予選に挑んでスタートしていった後、トライアルの途中で終わって、続きは「NEXT SEASON」で2024年にやるということが告知されました。「NEXT SEASON」と言ってるところを見ると劇場版とか特番じゃなくて1クールアニメで2期をやるということだと思います。まぁ2期も同じような感じで盛り上がるんでしょうし、父親探しとかラブコメ展開なんかは2期の方が盛り上がるかもしれませんね。

今回の内容としてはレース描写の方は別に大したことはなかった、いや実際は大したものなんですが、この作品の基準で言えば大したことはなかったといえます。それよりも良かったのはカナタの特殊能力が明かされたところですね。目で見たものが映像となって脳に残る母親譲りの特殊能力があるのだそうで、それでデモ走行の映像を見ただけでコースを完全に把握して走れていたんですね。そういえばそんな感じのことをカナタも言ってました。ただ、良かったと思うのは特殊設定そのものじゃなくて、その特殊能力を知った恋の母がカナタに母親みたいに絵画をやってみないかと勧めてカナタも乗り気になるところでした。思えば、そういうカナタの穏やかで優しい性根がこの作品の癒しポイントでしたね。

 

 

君のことが大大大大大好きな100人の彼女

第11話を観ました。

今回を含めて残り2話となりました。前回は羽香里を奪還するために花園家の屋敷に忍びこんだ恋太郎たちが羽香里の母の羽々里と対面し、羽々里が実は恋太郎の運命の人だったことが判明し、目が合ってビビーンときてしまった羽々里がメロメロになって「恋太郎ちゃん!私と付き合って~!」なんて叫んで、そこまでのシリアス展開を破壊してしまったところで終わりました。てっきりそのままイカれた6人目の彼女が誕生して今回は全編がナンセンスギャグになるのかと思ってたんですが、意外にも今回の冒頭で羽々里が正気を取り戻して再び「恋太郎と羽香里が付き合うことは許さない」という母親モードを復活させました。

そこから再びシリアス展開になり、恋太郎は羽々里に羽香里との交際を認めてもらうために試練を受けることになります。まぁシリアス展開になったといっても、この作品は基本ギャグアニメですから、ここで怪しげなウソ発見器が出てきます。これを使って恋太郎の誠実さをテストするのだと羽々里は言いますが、まず機械の信憑性を確かめるために唐音が実験台になることになる。しかし曖昧な答えを全てウソと見なす機械だったため、唐音はブラのカップサイズを誤魔化すことが出来ず白状させられたり、恋太郎のことを世界で一番大大大大大好きと宣言させられてタイトル回収させられたりと散々な目に遭います。

その後、恋太郎が羽香里への愛を同じく世界で一番大大大大大好きと宣言してタイトル回収してそれがウソではないと判定されたりする場面は結果が分かり切ってるので大部分が割愛されたりして、結局はウソ発見器のシーン自体が全くの尺の無駄であったというメタなオチがつき、更に今回は特殊EDであるというメタなネタバレまでする。もう何なのこのアニメ。このアホなノリにいちいちシリアスモードのまま付き合う羽々里も笑えます。

そして、ここからはマジのシリアス展開となり、羽香里が思い余って自分が死ねば恋太郎は自由になれると思って自室の窓から飛び降りて死のうとするので恋太郎がそれを止めに行き、唐音が羽々里を食い止める。そして「羽香里がいるなら幸せになれないなんてことはない」という恋太郎の言葉で羽香里は自殺を思いとどまり恋太郎のもとに戻ろうとするが、冷静に戻ったことで恐怖心で足がすくんで落下してしまう。その手を握った恋太郎は羽香里と一緒に落下して、屋敷の壁を蹴ってなんとか池に落ちて2人は無事に生還します。

そうして恋太郎と羽香里は抱き合い、唐音は自殺しようとした羽香里に怒って引っ叩き、唐音と羽香里は抱き合って泣く。これによって羽々里は恋太郎の羽香里への想いは真実だったのだと悟り、恋太郎に羽香里のことをよろしくと土下座して頼む。それを見て恋太郎は羽々里が全て羽香里のために自分がどうなってもいいという想いで行動していたのだと悟り、そんな羽々里にも幸せになってもらいたいと思い、羽香里も羽々里も両方とも幸せにすると宣言。前回ラストの羽々里から恋太郎への「恋太郎ちゃん!私と付き合って~!」への返答ということになり、6人目の彼女はなんと羽香里の実母の羽々里(29歳)になったという驚愕の展開となります。

ここからは羽々里は完全にキャラ崩壊してデレデレで甘々なモードになりますが、原作既読者から見ればこれが本来の羽々里というキャラです。完全にイカレてます。この後は女子たちの入浴シーン、唐音のヘソチラに興奮する恋太郎とのイチャイチャシーン、そしてパジャマパーティーのお着換えシーンなど、可愛いが盛りだくさんで、可愛いものに目が無い羽々里が恋太郎と一緒に嬌声を上げてひっくり返ったり、目を覆いたくなるシーンが続く。完全にキャラ崩壊した実の母を見ていたたまれない様子の羽香里が見ていて笑える。そして最後は羽々里が大人の女の色気ムンムンで恋太郎を自分の部屋に誘う場面で今回は終わり次回の最終話に続きます。トンデモない最終話へのヒキですね。

しかし今回はその後の特殊EDの狂気に全部持っていかれた。もうアホかとしか言いようがない内容だが、これこそが原作の世界観そのもの。てゆーか今回は全編が最後の入浴シーン以降やこの特殊EDのようなノリを期待していたんですが、案外シリアスだったなぁという印象。まぁシリアス部分も良かったですけどね。羽々里が登場して以降のカオス展開こそがこの作品の本質なので、是非とも2期が見たいところですね。この作品はこの後、7人目以降の彼女たちがネタキャラばっかりになって、いっそう面白くなっていくので2期をやるべき作品です。次回は2期の告知があることを期待したいと思います。

 

 

オーバーテイク!

最終話、第12話を観ました。

綺麗に物語を完結させた最終話だったと思います。割と落ち着いた印象の最終話であり、大きく盛り上がるという印象ではなかったが、物語的には大部分はもう前回までで描き切っており、今回は綺麗に締めたという印象。まぁレースシーンはかなり盛り上がりましたけど、このように見事に物語を着地させて綺麗に締められたという点と、1クール全体を通しての安定感は抜群で、明確なテーマが一貫して描かれたシナリオも、物凄いクオリティで最後まで描き切ったレースシーンも含めて、地味ながらも間違いなく名作であったと評価せざるを得ないです。

では、この作品の明確なテーマとは何だったのかというと、それは第1話で提示された「頑張ること」と「応援すること」の話なのでしょう。第2話から第11話までかけて、まず「頑張ること」とはどういうことなのかについてが綿密に描かれました。色んなキャラの様々な試行錯誤のドラマの末に辿り着いた結論は、「頑張ること」とは「ミスも含めて自分に向き合い、自分の弱さに打ち勝つこと」ということになります。それはあくまで自分の世界での戦いであり、必ずしも正しいことと見なされるわけでなかったり、正解といえる方法でなかったりする、孤独な戦いとなります。だから常に恐怖がつきまとう。

それゆえ、人間はその恐怖に打ち勝つ力を得るために「応援」を必要とするのでしょう。但し、それは「応援される」という意味だけではない。むしろ「応援する」ということによって人間は「頑張る」ための力を得るのでしょう。何故なら、人間は誰しもが自分との戦いの中で生きているものだからです。それはレーサーやスポーツ選手だけに限らない。一般人も含めてみんな日々の生活の中で自分と向き合い自分の弱さを乗り越えるために頑張っている。だから、自分と同じように頑張っている人を応援するのであり、応援することによって自分も勇気づけられる。自分を乗り越えようとしている人を応援し、その人が自分を乗り越える姿を見ることによって、応援した人も自分を乗り越える勇気を貰い元気になるのです。そのようにお互いに応援し、応援されることによって人間は生きる力を得ていく。そういうことが今回の最終話では描かれ、第1話で示された「頑張ること」と「応援すること」のドラマが1つに繋がってフィナーレを迎えたのでした。

「オーバーテイク」というのは「追い越す」という意味ですが、互いに「オーバーテイク!」と応援し合うことによって人は「自分を超えていけ!」という励ましを受け勇気を得ていくのでしょう。そういうベタなテーマが描かれた作品だったのだと思います。だが物語のテーマなんて常にベタなのであり、そのベタをベタだと意識させないように受け入れさせるために物語というものはあるのです。そういう意味で、この物語はとても良く出来た物語だったのだと思います。

作劇面では、今回、最終話は富士スピードウェイでのレースが描かれ、様々なキャラの物語が綺麗に着地していったのも素晴らしかった。冒頭の場面では早朝に富士スポードウェイに向かう車中で悠が錮太郎と太に新聞配達店の所長にレースを頑張るよう言われたという話をして、それを聞いて錮太郎が、もう以前のように頑なな悠ではなく他人の応援を受け入れるようになったことを嬉しそうにします。

また同じく富士スピードウェイに取材のため向かう別の車中では、冴子が孝哉に悠の写真をしっかり撮らせるために自分が他の取材の写真を撮ると申し出て、自分は孝哉の写真のファンなのだと照れ臭そうに言います。以前はただ孝哉を心配しながらも気を遣って腫れ物に触るような対応であったが、冴子も孝哉を応援する姿勢をちゃんと示すようになったようです。

そして富士スピードウェイに到着して小牧モータースのブースに来た孝哉は、そこに置かれたマシンに貼られた地元の商店街のたくさんの店の名前のステッカーを見て「俺、こんなにたくさんの人と一緒に悠くんの応援をしてるんですね」と太らに言う。その応援は間違いなく悠には力になっている。商店街の人達の出してくれたお金で今回は1回限りの万全の態勢で悠は表彰台を狙っている。だからこそ、その皆の後押しで悠が表彰台に登った時の写真を撮ることが孝哉にはむしろ大きなプレッシャーとなってのしかかっているように描写される。

そして早朝のレースコースの上でタイヤのゴム片を拾っている悠のもとに春永と徳丸がやってくる。ここで徳丸が、悠がベルソリーゾで走っていた時に怒鳴ったことについて謝罪する。悠が後ろからかけてくるプレッシャーに苛立った徳丸が怒鳴った時の話だが、あれについて徳丸は「俺は自分自身のプレッシャーに負けていた」と認め、その八つ当たりで怒鳴ってしまって悪かったと悠に謝ってくれたのでした。そして、そのことを復帰してきた春永と走って気付かされたのだと言い、徳丸は春永に対してもこれまで春永の気持ちを理解してやれなかったことを少し申し訳なさそうにします。悠もまた自分が徳丸になじられたことで動揺したのは自分の弱さであったと自覚しているので、むしろ自分に向き合うきっかけであったと感謝している。そして3人は互いにレースでの健闘を誓いあう。

そして予選の結果、悠は6位につけ、ベルソリーゾはファーストドライバーの徳丸が1位につけ、セカンドドライバーの春永は2位につけた。そうして本番のピットに復帰してきた春永にファンの女子が寄ってきて引っ込み思案の亜梨子はそれを遠目に見て再び春永が遠い人になったように寂しく思うが、春永はファンの子達に「僕は自分のことをジェームズ・ハントだと思ってたけど、僕が目指すべきはニキ・ラウダだった」と言う。そして「それに気付くことが出来たのは僕の人生の大きな前進だと思う」と言う。これはファンの子達に向けているように見せかけて間違いなく亜梨子での言葉でした。そうして春永は「ありがとう」と言った後、亜梨子にそっとウインクして、亜梨子は感激します。

また、徳丸にもしっかりファンが出来たようで、最初は春永ファンの友達に連れられて来ていたという女の子が、徳丸がセカンドドライバーとしてチームを支える姿を素敵だと思ってファンになったと言ってくれる。しかし今はファーストドライバーだと言う徳丸にそのファンの子はもちろん今も素敵だと言う。ファーストもセカンドも立場の違いは関係なく、チームのために走る徳丸の本質をしっかり評価してくれるファンもいるのです。

スタンドで観戦する冴子のもとには三日月飲料の広報だった佐藤がやって来る。佐藤は小牧モータースや孝哉の件で何度も上司に掛け合って擁護してスポンサー復帰を願い出たそうだが聞き入れてもらえず腹を立てて三日月飲料は辞めたらしい。そして自分の力不足を冴子に謝罪した上で、すっかりF4レースのファンになったそうで、今日は一緒に悠の応援をしたいと言う。

そして決勝レースの前の昼休みに悠は孝哉の様子が気になって話しかけてくる。そして、縁もゆかりもない自分に期待して応援してくれたことに礼を言う。更に孝哉の自分たちへの応援を「無償の愛」のようだと言う悠の言葉を聞いて孝哉は可笑しくなる。そんなふうに言われたことによって逆に自分が決して「無償」で悠の応援をしていたわけではないことに孝哉は気付いたのです。ちゃんと見返りは貰っていた。だから自分は悠を応援していたのだと孝哉は思う。そんな孝哉に悠は「頑張ってね」と言い「応援してる」と言って孝哉の胸に向けて拳を突き出す。まだ人物写真を撮ることに躊躇いがあるのだろうと気付いてエールを贈ったわけだが、それこそが孝哉が悠から返してもらい続けていたものであった。そして同時にそうして孝哉を応援することもまた悠自身の活力の源となっていたのでした。

そして決勝レースの前の昼休みには、特等席でコースを見下ろす太のもとに笑生がやってきて、2人は悠の父の澄の思い出話に花を咲かせて、笑生は太にまた一緒にやろうかと言うが、太はそういうのは若いヤツ同士で決めればいいと答える。人生の主役はいつだって若い奴なんだと太は言います。その息子の錮太郎はベルソリーゾの春永に亜梨子を巡ってライバル意識を燃やして相変わらず絶対に負けないと意地を張っています。

そうして決勝レースが開始され、悠は錮太郎のアドバイス通りの走りでスタート後すぐに順位を上げていき、先頭を走る徳丸と春永に次ぐ3位に浮上する。それを見て太や錮太郎は拳を握り、冴子と佐藤も喜び合うが、冴子は孝哉の様子も気になってプレス席の孝哉の姿も望遠鏡で確認する。するとやはり孝哉は人物写真で切り取る一瞬の重みに押しつぶされそうになっているようで、冴子は心配します。

レースは春永が先頭の徳丸にしっかりプレッシャーをかけ、そのプレッシャーに耐える力に目覚めた徳丸があくまで自分と戦いながらレースを引っ張る展開となり、その2台に悠が追いすがる形となりました。だがレース中盤にアクシデントが発生します。周回遅れのマシンが徳丸のマシンと接触して、徳丸のマシンのフロントノーズが折れ曲がってしまったのです。誰もが徳丸は処置のためにピットインすると思いましたが、徳丸はピットインせずにスリップストリームで春永のマシンを引っ張って春永を先頭に立たせると外側にコースアウトして棄権しました。

自分がピットインしてレースを継続しても優勝はもはや望めない。それならばと徳丸は、自分がピットインせずに春永をサポートすることでチームの勝利を目指したのです。セカンドドライバー時代はそういうことを義務的にやっており内心では嫌がっていた徳丸でしたが、それをファーストドライバーの立場で自らの判断で進んでやったというのは、春永のやっていたことを見習ったということでもあり、あくまでレースが自分との戦いだと気付いたことで立場の拘りに縛られることが無くなったということであり、徳丸の成長であった。そうして徳丸の成長を知り、笑生は嬉しそうにします。

これで徳丸は悠との勝負に敗れたことになるが、アクシデントの末に見事なチームプレーで成長を示しての敗退ですから、決して実力で悠に劣ったという形ではなく、しっかり徳丸にも花を持たせた描き方になっているのが素晴らしかったです。そしてレースは徳丸に代わって先頭に立った春永と、それに追いすがる2位の悠とのマッチレースとなるが、春永もまた大事故からの復帰初戦というハンデがあってのこの見事な走りですから、決して敗れても恥ずかしくない、しっかり花を持たせた描写になっていて、これもまた素晴らしい。

そうして春永と悠の熾烈な先頭争いの中、プレス席の孝哉のスマホには冴子からの電話がかかってきて「貴方が押さえるべき一瞬は悠くんが教えてくれる!」と檄を飛ばして、さっさとカメラを構えて集中するようにと言う。それを聞いて孝哉は気を取り直してカメラを握りしめ悠の走りに集中する。そしてレースは春永が1位で悠が2位のまま最終ラップに突入し、皆が双方に声援を送る中、孝哉は自然に「頑張れ」と何度も悠への応援の言葉を繰り返す。そして悠と初めて会った時に「応援なんて相手のためじゃない、自分のため」と言われたことを思い出し「その言葉は正しかった」と心の中で呟く。そして、それは「だってそうだろう?俺は君を応援しながら、こんなにも力が湧いてくる」と言うと、孝哉は顔を上げ、そうやって悠を応援することによって自分を鼓舞するかのように「頑張れ」とまた繰り返す。孝哉だけではなく、冴子も、錮太郎も、太も、商店街の皆も、悠を応援することで自分たちの人生を奮い立たせている。同様に春永を応援して亜梨子も笑生も「頑張れ」と声援を送る。

そして同時に、春永と激しいデッドヒートを繰り広げながら悠もまた亡き父との最後の別れの場面を思い出していた。「頑張ってね」と言う自分の応援が父の重荷になっていたのだと今までずっと思っていた悠であったが、突然そうやって自分の応援を受けた後、部屋をそのまま出て行ったと思っていた父のその後の場面の記憶が甦った。父は決して迷惑そうになどしておらず、嬉しそうな笑顔で自分とグータッチして「頑張る」と言って出かけていった。その父の顔を思い出した悠は、父も自分と同じだったのだと気付いた。父は自分の応援を走る力としてくれていたのだと。そして同時に、そうやって父を応援したことが自分のレーサーとしての力になっているのだということにも気付いた瞬間、悠を捕えていた呪縛は解け、悠は春永を抜き去っていた。

そのままチェッカーフラッグ目掛けて走ってくる悠のマシンを見て、孝哉は静かにカメラを構えると、チェカーフラッグを受けて優勝した悠の姿を撮影し、悠はプレス席の孝哉に向けて笑顔を送る。そんな悠と、健闘の末2位となった春永の2人に対して徳丸が拍手を送り、孝哉はピットに降りていくと、戻ってきてマシンを降りて春永や徳丸とじゃれ合う悠の姿を何枚も写真に撮り、そして悠との約束を果たして、表彰台の一番高いところに登った悠の姿を写真に収めたのでした。それは最初に撮った悔し涙の写真とは全く違う、晴れやかな笑顔の嬉し涙の写真でありました。