2023冬アニメ 3月2日視聴分 | アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2023年冬アニメのうち、3月1日深夜に録画して3月2日に視聴した作品は以下の4タイトルでした。

 

 

もういっぽん!

第8話を観ました。

今回は金鷲旗編の開幕エピソードで、青葉西柔道部の面々が福岡に到着してから、その翌日の1回戦の先鋒戦の途中までが描かれた回であり、金鷲旗編の導入回であったといえます。決定的な場面というものは描かれなかった繋ぎ回であったと思いますが、内容は盛りだくさんで相変わらずグッとくる場面が多々あり、全体的なワクワク感がたまりませんね。それに、遠征ということでテンションが上がってるというのもあってか、いかにも部活動って感じで楽しそうで良いです。とにかく金鷲旗編に入って更に一気に盛り上がって来た印象です。

とにかくここに来て一種の無敵状態に入っているような印象があります。キャラが魅力的なので、何をやっても楽しいという状態です。この作品はキャラデザインが決して萌えるものでもなく大して魅力的ではないので「キャラが弱い」と勝手に決めつけていましたが、その認識は間違いのようです。いや、序盤は確かにそういう見方は間違ってはいなかったと思います。だが毎回しっかりキャラを掘り下げて丁寧に描いてきた結果、キャラデザインなんか関係なく、5人のキャラ、いや夏目先生も入れて6人のキャラの魅力が最高潮に達してしまっていて、彼女たちが何をやっても面白いし愛らしいと思えるようになってしまっている。いやまぁ、もちろん1つ1つのセリフや行動が一見何でもないように見えてしっかり緻密に計算されて描かれているからでもあるんでしょうけど、それでもやはりキャラの魅力がここまでの積み重ねの結果、しっかり仕上がってきているのは間違いない。

そして、驚いたことに、この第8話にきて作画がむしろ良くなってきている。そしてキャラデザインもなんか可愛くなってきている。並の作品なら崩れ始めるタイミングなんですけどね。柔道の試合のシーンの作画なんて凄く良かった。今回の最後の方の未知と湊の試合なんか、これまでで一番の熱気と迫力で非常に素晴らしかった。これはつまり、この作品は最初からピークを金鷲旗編に持ってくるようにしっかりペース配分を計算して作られてきているということです。ストーリーは原作準拠だからアニメ制作班の仕事ではないが、やはりピークを金鷲旗編に持ってくるための種蒔きとして前半のメンバーが揃っていくエピソードを丁寧に描いていった。種蒔きであの感動の連続ですからね、金鷲旗編は期待が高まります。そして、そのピークに合わせて、作画やキャラ描写のピークも持ってこようとしているのでしょう。なんか私たち視聴者が勝手にこの作品を「ダークホース」扱いしてますけど、案外と制作側は最初から本気で優勝を目指していたのかもしれませんね。

あと、やっぱり今回特に際立っていたのは園田未知の主人公感でしたね。ムードメーカーっぷりが素晴らしいし、皆の未知への信頼感の高さ、敵さえも魅了する楽しむ能力の高さ、これらの未知のキャラクターを見事に表現しきっている伊藤彩沙さんのアフレコが素晴らしい。あと、福岡南の梅原役の加隈亜衣さんの博多弁のアフレコがむちゃくちゃ可愛かったのは、さすが福岡出身だけのことはありますね。

それから、今回からOP曲の映像がかなり差し替え分が多くてマイナーチェンジしましたね。といっても基本的には同じ映像なんですが、冒頭の影絵みたいだった複数の組手カットが青葉西の面々の顔がちゃんと映るようになったり、これまで未知と早苗と永遠だけの3人バージョンだったカットが全部が南雲と姫野先輩の加わった5人バージョンに変わったり、随所に南雲や姫野先輩のカットが追加させていたりして、全員集合バージョンの新OP映像に変わりました。EDもこれまでにも細かく変わっていたりして、結構弄ってきています。このあたりはやはり制作スタッフの作品愛が強いのを感じさせてくれます。「良い原作をちゃんと良いアニメにしよう」という真っ当な感覚が感じられて嬉しいです。

さて、それで今回の内容ですけど、まず冒頭は青葉西の面々が福岡の空港に到着した場面から始まります。金鷲旗大会というのもありますけど、夏休み初日というのもあって旅行気分で浮かれまくっている未知と南雲、早苗はキャプテンになったようで責任感の塊のようになって未知や南雲を注意しまくっていたり、永遠は飛行機に酔っていたり、各人様々ですが、3年の姫野は福岡に来てはしゃいでいる未知を見て、自分が1年や2年の時は全国大会に出るために福岡に行くなんて考えもしなかったと嘆息します。部活は人数が足りてなかったし、自分は弱いし、そんなガラじゃないと思っていた。でも未知は1年生なのに全国大会に全く物怖じしていないから凄いなと姫野は思う。そんな生き生きとした1年生の中で自分はちょっと場違いな気がする姫野でしたが、夏目先生は姫野にとって最後の試合なのだから「ゆっくりじっくり楽しもう」と言ってくれる。1年生たちのペースに無理に合わせようとしなくていいし、全国大会だなどと気負う必要も無いのです。3年生で最初で最後の金鷲旗大会に挑む姫野は未知たちとは違いもう二度目の金鷲旗大会は無い。だから思い出作りだと思ってじっくり楽しめばいいのだと夏目先生が励ましてくれているのだと思い、姫野も気持ちが落ち着いて元気が出ます。

そうして旅館に到着して、やたらと豚骨ラーメンを食べたがる未知に夏目先生が「遊びは試合が終わってから」と釘を刺し、未知は早く試合を終えてラーメンを食べたいとか、初日に敗退すれば2日目は遊び放題だとか呑気なことを言い出す。それを聞いて姫野はやはり未知も楽しもうとしているのだなと思って微笑ましく見守りますが、未知は「やっぱり2日目まで勝ち残りたい」と言い直す。このメンバーで試合するのが1日だけなんて勿体ないから、勝ち残りたいと言うのです。あれほど福岡でラーメンを食べることを楽しみにしていた未知が、やっぱりこのメンバーで試合することの方が楽しいのだと言う。そこにはもちろん「今回で最後となる姫野も含めたメンバー」という意味が大きい。

何か漠然と試合以外の楽しいことも考えてリラックスしようかと考えていた姫野でしたが、未知たちが自分と一緒に試合することを楽しみだと言ってくれているのを聞いて、自分も未知たちと一緒に最後の大会で試合をすることが楽しみになっているのだということに気付いた。その楽しい時間を少しでも長く続けること、それが夏目先生の言った「ゆっくりじっくり楽しもう」という言葉の意味なのだと思い、姫野は少し気持ちを引き締める。全国大会だからといって気負うことなく、ゆっくり楽しもう。だから、そのためにちゃんと集中してベストコンディションで臨んで、1つでも多く勝ち進んで、少しでも長く今のメンバーでやれる柔道を楽しもう。そう思って姫野をはじめ全員が気合を入れ直しました。

しかし、そんな青葉西の面々の中で、その試合のメンバーに入れていない南雲だけがちょっと寂しそうにします。今さら試合に出たいとかワガママを言うつもりは無いが、こうして試合メンバーの気合が入ってくると、どうしても自分だけ気持ちが置いていかれるような気がして、未知たちと同じテンションになれないことに戸惑いがあるのです。南雲がメンバーを外れると決まった時に未知は南雲も一緒に戦うんだと言ってくれたが、南雲はこうして福岡までついて来て試合に出られないのではやはり自分はチームの一員ではないような気がしてしまう。剣道部ではずっとレギュラーだっただけに、どうしても南雲はこういう立場に慣れなくて、ついネガティブな気持ちになってしまうのです。そして、こんなマイナスな想いを抱えた自分が此処にいて未知たちと一緒にいても良いのだろうかとも思ってしまう。

そんな南雲を気遣ってか、未知と早苗が夏目先生の怪我を未然に防ごうとする徹底的な指導方針がちょっと厳しすぎるというような話をしたところ、それを聞いていた姫野が夏目先生が怪我をさせない指導を徹底しているのは過去の経験が原因らしいという話をする。それは、夏目先生が高校時代に所属していたバレー部で、練習中の大怪我が原因で3年間試合に出られなかった選手がいたからだという話でした。その苦い経験があるから、夏目先生は生徒が怪我をして試合に出られなくなるようなことは無いように徹底的に指導する方針なのです。夏目先生が未知たちとの初対面の時に「貴重な3年間を棒に振るようなことがあったら辛いからね」と言っていたのは、その高校時代のチームメイトのことだったんですね。

その姫野の話を聞いて、未知たちも夏目先生の生徒への深い愛情を改めて知り、軽々しく批判したことを反省しますが、この姫野の話が南雲の心を動かしたのは、また別の理由によるものでした。それは、その大怪我をした選手が3年間試合に出られなかったということは、3年間試合に出られなかったのにバレー部を辞めていなかったという意味だからです。3年も試合に出られなかったのに彼女はバレーを辞めなかった。それどころかバレー部に在籍し続けていて、出来る範囲での練習も地道に続けていたのです。そして、南雲たちは知らないことだが、夏目先生がその選手の現在の実業団での活躍の記事をチェックしている場面も描かれていることから、その選手は3年のブランクを乗り越えて復帰して今や実業団の有名選手として活躍しているのです。

彼女は3年間試合に出られなくても腐らずバレーに打ち込み続け、高校時代の夏目先生たちはそんな試合に出られない彼女をチームの一員として受け入れていた。だから彼女も自分は試合には出られないけど、チームの仲間を支え続けた。そんな深い絆があるからこそ、彼女が試合に出られなくなった原因である「怪我」というものが夏目先生の心に深い後悔となって刺さり続けて、その結果、絶対に選手に怪我をさせないという方針となっているのです。

その話を聞いて、南雲はそれこそが真のチームメイトというものなのだと痛感した。それに比べて、まだ怪我もしているわけでもなく、単に試合に出られないぐらいでチームの一員じゃないなどと感じてしまっている自分はなんと甘えているのだろうかと南雲は深く反省した。夏目先生が南雲を試合に出さず、それでも福岡に連れてきたのは、そうした自分の高校時代のバレー部でのチーム内の絆を踏まえてのことだったのです。だから、自分はその夏目先生の期待を裏切ってはいけないと南雲は思った。いや、純粋にその選手のようでありたいと強く思えた。それで南雲はいきなり未知の身体をマッサージしてほぐし始める。朝からの長旅で身体が疲れていて、このまま試合をすれば本調子が出ないし、下手したら怪我をする恐れもある。だからチームの一員として自分の出来ることは、試合に出るメンバーが戦いやすい状態を作ること。それが「一緒に戦う」ということなんだと思って行動することによって、南雲の中に感じていた他の4人との心の距離が解消していき、5人でのチームのムードもグッと良くなった。

その後、旅館を出て開会式に向かおうとするが5人は遅刻しそうになってしまう。夏目先生が先に開会式の会場に入っており、生徒だけの行動になってしまったので色々と上手くいかなかったようです。そうして焦っているところで博多弁の大柄な女子生徒に出会い、開会式の会場まで案内してもらえて何とか間に合いました。

そして開会式の場面となりますが、さすが予選無しの全国大会だけあって凄い規模の開会式です。未知は目を輝かして、姫野は深呼吸して緊張を和らげようとし、永遠と南雲は落ち着きなくキョロキョロし、学校名のプラカードを持った早苗は緊張で固まっています。そして開会式が終わって巨大なトーナメント表が貼り出され、未知たちはそれを見に行きます。とりあえず未知たちが掲げた目標「2日目に勝ち残る」ためには4回勝たないといけないようです。まずは1回戦を勝つことが当面の課題ということでトーナメント表の中に青葉西の校名を探す。すると1回戦の相手は福岡南高校だと分かり、なんとさっき会場まで道案内してくれてすっかり未知と意気投合した大柄な女子生徒、湊幸が選手をしている学校だと分かった。

この福岡南というのが凄くイイんですよね。部員は梅原、湊、野木坂の3人だけで全員1年生。かつては柔道の強豪校だったが近年は成績が残せず5年前に柔道部は廃部になっていて、今年になって新入生の3人が5年ぶりに柔道部を復活させてインターハイ予選も出て、今回は3人で金鷲旗大会にも出てきたという。なんかすごく青葉西の未知たちと似てるんです。ただ違っているのは、この福岡南の場合は昔は強豪校だったので柔道部のOBがいっぱいいて、ものすごく期待されている。特に金鷲旗大会は福岡で行われる全国大会ですから、OBの皆さんが大挙して応援に駆け付けるという。だが、湊以外の2人はそんな強い選手というわけではなく、湊と一緒に柔道をやりたい梅原、そして人数合わせで参加してくれた野木坂という感じで、地元の大きな期待が身の丈に合わないプレッシャーになってしまっている様子。それでも必死で頑張ろうというひたむきさが良い。

一方、青葉西の5人は旅館に戻って露天風呂に浸かりながら作戦会議です。金鷲旗大会は団体戦のみで、インターハイ予選の時とは違って勝ち抜き方式となります。勝ち抜き方式というのは、先鋒同士でまず戦い、勝った方の先鋒がそのまま残り、次は相手チームの次鋒と戦い、また勝てばそのまま相手チームの中堅と戦うという感じで繰り返していき、負けるまでは戦い続けるという方式です。先鋒が負けたら次が次鋒の出番で、その次は中堅という感じで、最終的に相手チームの5人目である大将を先に倒したチームの勝利ということになる。だから極端な場合はこっちの先鋒1人で相手チームの5人全員を倒して勝利してしまうこともある。その場合はこっちの残り4人は出番無しということになります。

ただ青葉西の場合は試合メンバーは4人しかいませんから、大将は無しで「先鋒」「次鋒」「中堅」「副将」の4人編成となります。また、1回戦で決めたオーダーはその後2回戦も3回戦も変更は出来ないらしい。だからオーダーは慎重に決めねばならない。そして勝ち抜き戦の場合は特に先鋒が重要だという話を聞いて、最初は早く試合がしたいと思って先鋒に手を挙げていた未知も遠慮がちになる。一番重要なポジションならば自分よりもエースの永遠がやった方がいいと皆も言うだろうと思い、自分がやりたいと強く主張しない方がいいと未知も思ったのでした。

だが、姫野は「勝っても負けてもチームに勢いを与えてくれる元気な先鋒がいい」と言い、全員一致で未知を先鋒に推してくれる。全員、未知がこのチームにこれまでもずっと勢いを与えてくれてきたことを分かっているのです。早苗はまた未知と一緒に柔道をやりたくて柔道部に入った。永遠は未知と一緒に柔道をやりたくて青葉西に来た。南雲は未知と一緒に部活やりたくて剣道部を辞めて柔道部に入った。姫野は未知と一緒にやってまた柔道を好きになりたくて柔道部に復帰してきた。みんな未知に背を押されて柔道をやっているのです。だから、このチームに勢いを与えてくれる先鋒は未知以外はありえないというのが4人の一致した考えでした。

未知は大喜びし、そして未知がもし負けてしまった後はしっかり自分がフォローすると言って早苗が次鋒に立候補する。中学時代は柔道を始めるのが遅かった早苗が先に戦って、負けて未知を敗戦処理にしてしまうことが多かったが、今はもう早苗もすっかり自信をつけて、未知のミスのフォローをする言えるまでになったのです。

そして、未知と早苗がもし続けて負けてしまった後は確実に勝ちを取り返さなければいけないということで、ここでエースの永遠を中堅に据えようという姫野の意見を遮って、南雲は姫野が中堅で出るべきだと意見する。試合が久しぶりな姫野は負けたら後がもう無い副将で出るよりも、よりプレッシャーの少ない中堅で出た方が戦いやすいはずだというのが南雲が姫野を中堅に推す理由でした。確かに一理はあるが、そこにはおそらく言外に、この大会が最後となる姫野の出番を出来るだけ多くしてあげたいという南雲の想いが込められている。

それは言い換えれば、それだけ永遠が強いということです。永遠が出たらそのまま敵の大将まで倒して試合が終わってしまう可能性が結構高い。もし永遠が中堅で姫野が副将だったら、その場合は姫野の出番は無くなってしまう。もし姫野の出番はがあるとしたら、それは永遠でさえ勝てなかった相手との試合だけということになる。姫野にとって金鷲旗大会の最初の試合がそんな最強の相手との試合であり、そこで瞬殺されて終わりではあまりに気の毒といえる。だから、もっと姫野にこの最後の大会を色んな相手との色んな試合を楽しんでもらうためには、永遠の前に出場できるオーダーでなければならないのです。自分自身が試合に出られない悔しさがよく分かっている南雲だからこそ、姫野に対してそうした細やかな気遣いが出来るのでした。

その南雲の気持ちを理解して姫野が中堅を引き受け、そして、もし3人が負けても敵の残り全員を倒して必ず青葉西に勝利をもたらす最後の砦として、エースに務めを果たすよう南雲が永遠にハッパをかけ、永遠が副将と決まった。このように、すっかりチームの一員として強い自覚を持つようになった南雲がむしろチームを引っ張っていっているのがなんとも頼もしい。そして、このオーダーを自分の考えていたオーダーと同じだと言って夏目先生も賛成してくれて、青葉西の6人は心を1つにして翌日に試合に臨むことになります。

そして後半パートは未知が子供の頃の夢を見ている場面から始まる。それは未知が柔道を始めた頃のことで、なかなか上手く投げることが出来なくて一本を取っても気持ちよくないと未知は文句を言う。どうやら「一本を取ると気持ちいい」というのは兄の受け売りみたいで、最初に未知が柔道をやり始めた時に兄に教えられたことみたいです。だが兄を投げてみてもちっとも気持ちよくないので「一本取っても気持ちよくない」と文句を言うのですが、兄は「それはお前が下手だからだ」と言う。それで未知は「気持ちいい一本」を取るために一生懸命練習して柔道にのめり込んでいった。

そうして初めての公式試合、未知の相手は巨漢の強そうな男子で、未知は苦戦を強いられ、自分はツイてないと思う。だが試合を観戦していた兄は「そういう大きい相手をぶん投げたら気持ちいいんだ」と言い、「初めての試合の相手が大きいなんてお前はラッキーなんだ」とハッパをかける。それで未知は、自分の求めていた「気持ちいい一本を取る柔道」はこういう柔道なんだと実感し、吹っ切れたように積極的に相手に技を繰り出す。これが未知の柔道の原点でした。そして遂に未知の背負い投げが巨漢の相手を浮かせて投げ飛ばそうかという瞬間、未知は起こされて夢から目覚める。

金鷲旗大会の試合1日目の朝でした。それで未知が「でっかい人から取った私の最初の一本が決まるところだったのに」と愚痴を言うのだが、それを永遠が聞いて、それが正夢になったら嬉しいと思う。そして皆で会場に入り、永遠はトーナメント表を見上げ、一番上の優勝のところに指をさして見上げる。未知が気持ちいい一本を決めてチームに勢いを与えてくれたら、もしかしたら自分達でも優勝できるかもしれない。そんな想いでトーナメント表の上の方を見つめる永遠の姿を見て、未知も拳を握り締めて気合を入れます。

一方、久しぶりに試合会場でお互い柔道着を着て霞ヶ丘の白石と出会った姫野は「最後の試合だから緊張する」と言う白石に対して「もっと楽しもう」と声をかけ、青葉西と霞ヶ丘の埼玉勢が集まっている一団の方に2人で視線を送る。それは、お互いの大切なチームメイトと一緒に戦えるかけがえのない時間を少しでも長く楽しもう、そのために勝ち続けようという、姫野から白石への励ましのエールでありました。それでも最後は負けて終わる瞬間は必ず訪れる。でも「最後ぐらい勝っても負けても気持ちよく楽しまなきゃ損」だと姫野は白石に言う。未知の方を見ながら「うちのムードメーカーを見てたらそう思うんだ」と言う姫野の言葉を聞き、白石は姫野も自分と同じように未知と一緒に柔道をやって、もっと柔道が好きになって、そして柔道生活を終えようとしているのだなと実感し、それによって落ち着いた気持ちになります。

そして試合開始が迫り、天音は黙って拳を突き出して永遠にグータッチを促す。青葉西と霞ヶ丘は決勝までいかないと対戦出来ない。それは極めて可能性が低いことだが、それでも互いに勝ち残って決勝で戦おうという誓いでした。それを見て、結局両校の10人でグータッチをして円陣を組み気合を入れることになりました。

そして青葉西の1回戦、福岡南との試合が始まる。最初に整列した時、お互い最初は相手が5人だと思っていたら、青葉西は4人しかおらず、福岡南は3人しかおらず、互いにキョトンとして、お互い似た者同士なのかもしれないと思い、同じような思いを抱えてこれまで頑張ってきたんだなと思うと相手に親近感と敬意が湧き上がってくる。でも、だからこそ全力で戦って勝ちたいという想いも強く込み上がってくる。先鋒は未知と湊の試合となり、試合開始前に気合を入れる未知に対して永遠は「私も夢の続きを見てみたい」と声をかけ、大きな相手である湊に気持ちいい一本を決めてほしいと檄を飛ばします。

実は湊は見た目が巨漢であるだけでなく、インターハイ予選では福岡の個人戦70キロ級3位の実力者なのだという。南雲からそう知らされた一同は驚き、そのことを未知が知らなくてノビノビ戦えて良かったと思うが、南雲は事もなげに「未知には伝えている」と言うので皆は更に驚く。南雲は「未知はその方が嬉しいだろうから」と言う。未知の柔道の原点は「大きくて強い相手から一本を取るのが一番気持ちいい」だからです。そのことを幼馴染の南雲が一番よく分かっている。

実際、未知は湊と組みあって、その強さをひしひしと感じながら喜びを覚えていた。そして、永遠に言われたからだけでなく、未知自身もあの夢の続き、初めての一本をとった時の歓喜を、この試合でまた味わいたいと思い、湊と激しい攻防を展開する。そんな2人に対して、両校のメンバーが熱い声援を応酬して大熱戦となる。そして未知はこの熱気と迫力こそが全国大会なのだと歓喜に震える。そして今までで一番勝ちたいと強く思い、それが相手の湊も同じなのだと知り、同じように頑張ってきた似た者同士の好敵手と認め、嬉しくなるのでした。そうして試合の決着はつかないまま次回に続きます。

 

 

トモちゃんは女の子!

第9話を観ました。

今回はなんと意外にもキャロルと御崎先輩の恋物語でした。というか、主人公カップルの恋愛をなかなか進めていない段階で、こんなサブキャラ同士の恋愛をガッツリ描くとは思っていませんでした。この2人が婚約者という設定なのは分かってはいましたが、ただのギャグ要員としか思っていなかったのでこんな展開になるとは予想外でした。しかし前回のみすずとキャロルが不良に絡まれるエピソードから話が繋がっていて、ちゃんと伏線はあったんですよね。そして、こうしてちゃんとサブキャラの恋愛にも決着をつけてくるということは、おそらく主人公カップルの恋愛もちゃんと決着まで描いてくれるのだという意味なのだと思います。実際、今回もキャロルと御崎がメインで描かれつつ、淳一郎の心理にも斬り込んでいっていますし、みすずの心理もしっかり描かれていました。まあ淳一郎と結ばれるのは当然トモなんでしょうけど、その2人が結ばれる過程でみすずの果たす役割は欠かすことが出来ないものみたいですから、みすずが今回今までで一番人間臭く描かれたのは重要だと思います。

おそらくキャロルというキャラはみすずの変化を促すために登場したキャラだったのでしょうね。そして、みすずが変化することによって、膠着状態だったトモと淳一郎の関係が動くのでしょう。そういう意味で、今回のエピソードで最重要であったのは、キャロルと御崎先輩の恋愛の行方よりも、むしろその過程におけるみすずとキャロルの遣り取りの方だったのでしょう。だからラストシーンもキャロルと御崎先輩の場面ではなく、キャロルとみすずが仲直りする場面だったのだと思います。もちろん話の展開としてはキャロルと御崎先輩の恋物語がメインであり、それはそれでとても感動的なものでしたが、真に注目すべきはキャロルとみすずの関係であったのではないかと思います。

まず冒頭は、キャロルのために強くなりたい御崎先輩がトモの家の道場に入門するという展開から始まります。御崎先輩がそのことをキャロルに話すと、キャロルはトモに嫉妬してしまい、淳一郎をデートに誘って逆に御崎先輩を嫉妬させて気を引こうとします。そういうキャロルの行動がトモと淳一郎の間を引っ掻き回すことになると思って介入しようとするみすずでしたが、そうやってトモと淳一郎の関係を操ろうとするみすずの方が2人の自然な関係を邪魔しているとキャロルに示唆されてしまいます。

しかしキャロルの方もトモと淳一郎の間を引っ掻き回す行動は自覚していて、それを止めようとしてくれたみすずに酷いことを言ってしまったと反省して落ち込みますが、トモやみすずと喧嘩したと落ち込むキャロルを淳一郎は励まします。ただ、それでデート続行となりキャロルが淳一郎の家にまで来て部屋で2人っきりになると、キャロルは自分の恋愛が上手くいかないのは淳一郎のせいだと言って淳一郎をイジメ始める。それでキャロルが淳一郎の頬にキスしたりベッドの上で押し倒したりすると、淳一郎は怯えてしまい、女性恐怖症であることが明らかになる。淳一郎がトモを女性として見ることが出来ないのは女性恐怖症が根底にあったんですね。ただ、淳一郎が女性恐怖症を克服するためには逆にまずトモを女性として認めて受け入れることから始まるはずなんですが、淳一郎は子供の頃のトモとの「男と男の約束」の決着がついていないのでトモを男として見ることを止めることが出来ないのです。ただ、女として成長してしまったトモと男同士の決着をつける手段が分からず、淳一郎も苦しんでいる。

結局、淳一郎の心を搔き乱してしまったキャロルは反省してトモと淳一郎に謝って帰り、翌日はみすずにも謝る。また、淳一郎とデートしたと言ったら御崎先輩もちょっと嫉妬してくれた。だが、みすずはキャロルにこれ以上引っ掻き回されても面倒だと思い、さっさとキャロルと御崎先輩をくっつけてしまおうと考える。それでみすずはキャロルがいつも笑顔を崩さず余裕の態度で本音を見せないことが上手くいかない原因なのではないかと思い御崎先輩に話を聞いてみると、御崎先輩はキャロルの精神的な強さに対して劣等感も抱いてしまっていることが分かった。それでみすずはキャロルの弱さを御崎先輩に見せることで2人の関係を変えようとして、キャロルをちょっと動揺させてやろうと思い「御崎先輩はキャロルのことを何とも思っていない」と伝える。

ところがキャロルは泣いて家に帰ってしまい、そこまでキャロルが御崎先輩のことを好きだったとは予想していなかったみすずはキャロルを傷つけてしまったことで慌ててしまい、こうなったら御崎先輩しか事態を解決できないと観念して、御崎先輩にキャロルの家に行ってキャロルと向き合ってほしいと頼む。御崎先輩もキャロルに誤解されてしまっていることに焦って、いつものように笑顔で迎え入れてほしいと願ってキャロルに会いに行くが、キャロルが号泣しているのを見て、自分の真の弱さは勝手にキャロルを強いと思い込んでそれに甘えて自分が強くなることを怠っていた臆病さだったのだと気付き、そうした心の弱さを放置したまま表面的な強さで誤魔化そうとして空手をやったりトモの家の道場に入門したりしていた自分の浅はかさを自覚した。

キャロルはいきなり自分を振った御崎先輩が現れたことで怒り狂い、それはみすずの嘘だったのだと聞くと、今度はみすずに対する怒りを爆発させる。それほど本心を露わに曝け出すキャロルの姿を初めて見た御崎先輩は、わざと悪役を買って出てくれたみすずのためにも、やっと本当の顔を見せてくれたキャロルのためにも自分も臆病者のままではいられないと覚悟を決めて、キャロルに愛の告白をします。それを聞いてキャロルも満面の笑みを浮かべて愛の告白を返してくれて2人は両想いとなります。

そして、どうして自分のことが好きなのか問う御崎先輩にキャロルが子供の頃からずっと好きだったから理由など無いと答えるのを聞いて、御崎先輩は今までずっと表面的な偽りの笑顔だと思っていたキャロルの自分に向ける笑顔が実はずっと真実の笑顔であったということに初めて気づく。そして、キャロルがいつも笑顔なのは真実の気持ちを隠しているからなのではないかと心配しているキャロルの母親に、そんなことはないのだと言って安心させます。昔はどうであったかは分からないが、今のキャロルにはトモやみすずのような、ちゃんとキャロルを愛してくれている友人がいて、その愛を感じてキャロルは心から笑っているのだと言ってくれる御崎先輩を見て、キャロルの母も少し御崎先輩のことを見直します。

御崎先輩はキャロルの笑顔が決して表面的なものではないと知ったことによって、キャロルがトモやみすずとも本当に良い関係なのだと知り、キャロルが自分の力でちゃんと幸せを掴んでいることを理解した。それがキャロルの真の強さなのだということが分かった。だから「僕が幸せにします」などという薄っぺらい言葉ではなく「キャロルなら大丈夫です」と言ってキャロルの母を本当に安心させることが出来た。それゆえにキャロルの母も御崎先輩の成長を認めたのでしょう。

そして最後、被り物で登校してきたキャロルに怯えまくるみすずとか、キャロルに頬にキスされてビックリするみすずとか、仲直りの場面のみすずがとにかく可愛かった。これでまたみすずの人気が上がってしまいますね。

 

 

転生王女と天才令嬢の魔法革命

第9話を観ました。

今回はアニスとアルガルドの姉弟喧嘩の決着がつく話でした。私は原作未読なのでハッキリとしたことは分からないんですが、色々と原作を端折っているせいなのでしょうか、話が粗くて、ちょっとよく分からないところが多かった。ただ、それでも今回は良いエピソードであったと思います。

まず幼少期のアニスとアルガルドは可愛かった。アニスとアルガルドの魔法バトルも良かったと思います。ただ、よく分からなかったのは、どうしてレイニが生きていたのかでした。ヴァンパイアだから死ななかったみたいですが、魔石を抜き取られてもヴァンパイアのままでいられるものなのでしょうか。まぁそうなんでしょうから生きていたってことなんでしょうけど、説明が不足していてイマイチその原理がよく分からなかった。また魔石が何故か再生した後にレイニが激痛に苦しんだのもどうしてなのかよく分からなかったし、その後は平気そうにしていたのもよく分からなかった。

そもそもアルガルドがヴァンパイア化して何をしたかったのかもよく分からなかったし、それに協力したシャルトルーズ伯爵の思惑もよく分からなかった。どうしてこの両者の利害が一致したのかもよく分からなかった。このあたり、なんか矛盾があって納得いかないというよりも、単に説明が足りていなくて分からないという感じ。このあたりが釈然としないせいで、国王と王妃がアルガルドを裁くシーンもイマイチ感動的に思えなかった。

あと、ユフィリアの乱入でアニスが我に返って戦いを止めるのは分かるとして、戦意満々だったアルガルドまで突然戦いを止めてしまうのはちょっと不自然でした。レイニが死ななかったことでアニスが戦いを続ける意味合いも薄くなったというのもあり、どうも戦いを行き着くところまで行き着かせないために不自然な話の流れになってしまっているように少し見えた。

アニスがアルガルドを殺すべきだったとは言いませんが、アニスにアルガルドを殺させたくないために不自然な話の流れになってしまっているように見えたことは少し残念でした。結局、誰も死なせたくない作品なのだなという印象を持ってしまいました。まぁ誰も死なない作品はたくさんありますから、そういう考え方自体は良いんですけど、ここまで激しい展開にしておいて結局は誰も死なないというのはちょっとご都合主義的でしたね。

レイニが殺されたことでアニスが激昂してアルガルドと戦い、その中でアルガルドが死んでしまい、死にゆくアルガルドから真の想いを告げられたアニスが激しく後悔するという展開でも別に良かったと思います。この物語がアニスとユフィリアが共に世界を変えていく話なのだとしたら、アニスがアルガルドの死という大きな挫折から立ち直り成長する方が分かりやすいし、そこまでアニスをアルガルドとの戦いに駆り立てる要因としてレイニというキャラが殺され役として機能するのは適切だとも思います。

物語の文脈を徹底的に突き詰めるならば、そのようにすべきなのですが、レイニはイリアとの百合要員として必要だとか、アニスという主人公の設定をそこまで重くしたくないとか、死人が出るような作風にはしたくないとか、やはり読者層を意識した中途半端さは感じてしまいましたね。その結果、アルガルドの覚悟も中途半端に見えてしまい、アニスが何をそこまで落ち込んでいるのかもイマイチ伝わりにくい終わり方となってしまいました。つまり、ちょっと酷い言い方をしてしまえば、所詮はなろう系ラノベであって、本気で作られた物語ではないんだなという印象です。

まぁしかし、そういう少し不徹底なところはあるものの、大筋は非常に良かったと思います。それは、これまではお調子者を演じて面倒なことから逃げ回っていたアニスという主人公が初めて大きな挫折を経験したお話だったからです。正直言って、ここまでのエピソードで描かれたアニスという主人公に「魔法革命」などという大それたことが成し遂げられるとは到底思えなかった。それゆえに、この物語自体が浮ついたしょうもないものに見えてしまっていた。

アニスというのは確かに他人には無い秀でた才能は持っていたが、現実に背を向けて戦おうとはせず、その才能をどうでもいいようなことに使い、親から貰った金で自己満足の世界に暮らす斜に構えた世捨て人でした。「魔法は人々を笑顔にするもの」という持論は立派だが、アニスの魔学は人々を真に笑顔にするために世の変革に使われるものではなく、単に目先の面白さを追求するものでしかなかった。そんな奇人の集まりの狭いサークルの中でのみ「あなたは凄い人だ」と言われて喜んでいる程度の人間でありました。まぁ言ってみれば、よくある「追放系のスローライフもの」の主人公みたいなタイプの人です。いわば、ここまでのお話はほとんど「転生王女と天才令嬢のスローライフ」みたいなものだったといえます。

だが実際はアニスは追放されたわけではなく自分で勝手に地位を放棄したのです。まぁ実質は追放されたようなものとはいえますが、それでもアニスにはそれに抗い自分を変革し社会を変革出来るだけの能力も地位もあった。なのにその可能性を安易に放棄してしまった。いや、仮に私が同じ立場だったらやっぱり面倒くさくて逃げると思うので、私はアニスを責める資格はもちろん無いですよ。この作品が普通のスローライフものだったらアニスに思いっきり共感すると思います。

しかし、この作品においては、アニスが世界と戦うことを放棄した結果、その戦いを代わりに引き受けてアニスを救おうとしていたアルガルドという弟が存在していた。そのアルガルドという存在がある以上、どうしてもアニスの非をあげつらうような文脈になってしまうだけのことです。そして今回そうしたアルガルドの真意を知り、アルガルドが力尽きて倒れるのを見たアニスが、これまでの自分の非を認めて、現状はひたすら落ち込んでいますが、きっとユフィリアの支えもあって、やがて初めて社会に向き合い戦おうという覚悟を決めることになるのでしょう。そして、そこから真の「魔法革命」が始まるのだと思います。そうした重大な転機がしっかり描かれた今回のエピソードは、やはり良いエピソードだったと思います。だからこそ、それを徹底するためにレイニやアルガルドが死んだ方が良かったんじゃないかとは思ってしまいますが、大筋としては良かったと思います。

ただまぁ第9話にしてようやく主人公覚醒前、おそらく第10話で主人公覚醒という流れでは、物語の本題を描かずに最終話という中途半端な終わり方になってしまいそうですね。まぁラノベ原作アニメにありがちなことですけど。

 

 

ツルネ ーつながりの一射ー

第9話を観ました。

今回は風舞弓道部が全国大会に向けて夏休みに海辺の弓道場のある宿舎に合宿に行くというお話。そこにダブルブッキングで辻峰の弓道部の5人もやって来ていて、成り行きで一緒に練習することになります。合宿編ということで何となくワクワクして楽しい話であり、風舞と辻峰の交流も描かれたりして、それぞれ人間模様が描かれて、キャラに感情移入が出来る微笑ましいお話でありました。同時に、辻峰の二階堂の抱える想いが明確になったエピソードでもありました。

この「ツルネ」の第2期において描かれている重要な要素は、まず1つは「風舞の5人の息合い」であり、もう1つが「辻峰の二階堂の物語」です。この2つの要素がこのまま別個に進んでいくのか、それとも最終的に一体化していくのかは未知数ですが、一体化していくのだとするなら次回あたりが重大なエピソードになりそうです。

おそらく風舞の5人が必死に取り組んでいる「息合い」が今期の最重要テーマなのでしょうけど、これがどうにも抽象的でよく分からない。実際に抽象的でよく分からないものなのでしょうから、分かりやすく描写してしまってはいけないのでしょうし、分かりやすく描写など出来ないのでしょう。しかし、だからこそ非言語的な表現も出来る「アニメーション作品」で描く価値があるのだと思います。具体的な言語での定義は出来なかったとしても、映像込みの物語の形だからこそ「息合い」という抽象的概念を表現することが出来るのだと思います。

その可能性を示してくれたのが第6話の女子部員たちの市民大会での描写だったのだと思いますが、あれは単に女子3人が弓を引く場面だけを描いて「息合い」を表現したわけではなく、その背景にある彼女たち3人の関係性の物語を描いたのが良かったのだと思います。おそらく最終的には男子5人たちの「息合い」もああいう感じで描くのだと思うのですが、そこに至る前に辻峰高校の5人の「息合い」から何か感じるものがあるのではないかと思えてきました。

私も当初は辻峰側の物語は、あくまで二階堂の物語が描かれるものだと思っていました。しかし今回明かされた二階堂の物語の内容は、かなり個人的な逆恨みのような話であり、あまり真っ当なものではありませんでした。それはそれで筋は通っているので、それでもって物語を作ることは出来ますが、そうなるとダークな感じのストーリーになってしまい、この作品の作風には合わないと思います。だから、あくまでこの作品においては二階堂は「つまらないことに拘っている」という風な描かれ方をされることになるのだと思います。ただ、それでも辻峰の射は揃うのであり、的には当たるのです。

二階堂は個人的恨みを晴らすために辻峰の弓道部を利用しているだけであり、射を揃えようともしていないし、息を合わせようともしていない。他の4人だって同じであるし、そもそも弓道の理論的なことも精神的なこともよく分かっていない。それでも不思議と二階堂と息が合う。「合わせる」のではなく「合う」のです。だから「当てる」のではなく「当たる」のです。これがつまり「息合い」というものなのでしょう。

現状、風舞の5人が5人の動きをピッタリ合わせようとしていたり、過去の自分たちの動きにピッタリ合わせようとしていたりと、とにかく「合わせる」ことから入って「自然に合う」という境地に至ろうとしているのと対照的で、辻峰の5人はどう見てもバラバラなのであり、特に二階堂は最も気持ちが離れているにもかかわらず、その二階堂を中心にして5人が上手く息が合う。だからこそ、そこから風舞の5人が学ぶことがあるのだと思います。

だから、辻峰の物語は二階堂の個人的な物語なのではなく、個人的な物語に固執する二階堂と、その二階堂を受け入れる他の4人との絆の物語として描かれるのでしょう。一見身勝手な二階堂ですけど、その二階堂だからこそ他の4人も共に弓を引きたいと思わされるのでしょう。そうした辻峰の5人の関係性を知ることで、風舞の5人も何かに気付くことになる。そうして「息合い」の境地に至ることになるのではないでしょうか。そのような過程の物語として描くことで、視聴者にも「息合いとは何なのか」が分かりやすく伝わるのだと思います。そういう意味で、次回の合宿所での風舞と辻峰の試合は要注目となるでしょう。

まぁそういうわけで、現状はまだ「息合い」の物語としては難解であり、対して日常描写の方は作画の素晴らしさもあって楽しく観れるものにはなっていますが、あまり本題とは関係ないものとなっています。そういう意味でまだ話としては薄い印象で、次回あたりテーマと日常がバシッとハマるところをそろそろ見てみたいところですね。