注文打ちの大脇差が完成しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下は打ち下ろし直後に刀匠から頂いたコメント↓

 

寸法は、刃渡り59センチ、800gです。
元3.3センチ、先3センチ
元重7.8ミリ、先6.8ミリになります。
先重ねを薄くすると,必然的に幅は狭くなります。

大切先なので、先幅が無いと、もやしの様に細くて頼りない切先になりますから、先重ねが厚いのはご理解ください。
 

試し斬り刀が2尺4寸で750g、居合刀が700gなので、刀並みです
 

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測ってみると、現状では

 

重量779g

鞘を払って1114g

 

登録証の数値は

刃長58.9cm

反り:1.5cm

 

他は、、、

茎長:17cm

横手から先:15cm

柄長:20cm

 

銀の庄内ハバキ

ミズメの柄

正絹の摘み巻

鮫皮は黒漆塗りの腹合わせ

黒石目の鞘

 

この脇差は「長船兼光を手本にした」と伺ったのですが、こんな極端な形状の刀は古刀期にはないと思いますので形状の事ではないのだと思います。

 

この刀は室内戦闘用の刀というコンセプトで作りました。「ぶっ殺してやる!」という気迫を感じさせる力強い一振りになったと思っています。手持ちの大刀と外装を合わせていますが、大小一対というよりこれ自体が短めの本差しといった感じです。

 

 

 

 

 

↑この助光刀匠作のオソラク造りの短刀の大切っ先をそのまま大脇差につけて欲しいと刀匠に依頼しました。きっとカッコイイだろうと思ったのですが、完全な素人発想です。しかし、そこは現実との折り合いをつけて上手く形にして頂けました。

 

この短刀の切っ先は18cmだと所有者の方から伺ったのでそのサイズでお願いしていましたが、バランスの兼ね合いから1寸短く15cmにした方が良いだろうとの事で私の刀の切っ先は15cmになっています。

 

 

 

↑打ち下ろし時点の刀身

 

この写真を見て少々禍々しさを感じたので茎に何か良い言葉でも入れておこうと思い「破邪顕正」と彫ってもらいました。仏教用語です。

 

仏教用語なのになんとなく中二病くささを感じます。

 

↑手持ちの刀:大中小

真ん中が今回の大脇差

 

 

 

 

 

↑真っ黒でわかりにくいのですが、左から順に「捻り巻き」「摘み巻き」「平巻き」

 

写真ではわからないと思いますが、左の二つは右側の脇差よりも柄糸のグレードが高いので光沢が強いです。注文打ちの左側二つはコンクールで入賞歴の豊富な職人の作です。

 

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余談ですが、今回ハバキを外そうと思ったら全く動かなくてかなり焦りました。こんな事ははじめて経験しました。

 

 

↑刀身の上からハバキごとレンズ拭き用の布を被せて、その上からこの当て木をハバキに当ててコンコンしたら幸い刀身にキズができたりせずにすぐ外れました。

 

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以下は雑感

 

「最強の刀が欲しい」という中二病的な発想から注文打ちでの刀作りをはじめました。最強というか最良の刀の形状を探っているうちに、すごく普通の寸法・形状の刀になっていきました。つまり「普通」と呼ぶようなスタンダードな刀の形状というのは、それが大多数の人にとっての最良の形状だったので「普通」になったのだと思い至りました。

 

・身幅が広ければ柄が太くなる

・重ねが厚いと重たくなる

・刃長が長いと不便で扱いにくい

・鋭角な大切っ先は先端が欠けやすい

 

特別な用途がなければ刃長・身幅・重ねともに普通くらいの、鎬造りの普通の刀が凡人にとって最強というか最良なのだと感じました。太さ・重さ・携帯性などが。

 

大刀はそのように考えて作ったのですが、今回の大脇差は敢えてそこから外して見た目の好みを第一優先で考えてみました。

 

今回は好き嫌いが大きく分かれるようなクセの強い刀にしようと思い、冒険してみました。

 

刃長60cm弱という長さは何かと使いやすい長さかと思います。室内戦闘は50~60cmくらいが良いと聞きますし、欧州のカットラスという船内戦闘用の刀もその長さです。また戦国時代の末古刀にも60cm前後の刀が多いです。

 

しかし、刀身重量779gというのはこの長さに対して明らかに重たいのです。この長さだと片手で扱える550~600gくらいが理想だと思います。

 

この刀は並みの定寸の大刀より重たい。

 

↑このお茶一本分くらい余分に重たい。

 

また、極端な大切っ先で先重が厚いので先端重心でもあります。凡人が片手で振り回すのは少し難しい。そしてハバキも強度を考えれば銀ではなく銅で作るべきです。

 

そこを理解したうえで、敢えてこういう刀にしました。

 

もちろん使えない刀などでは全くないはずです。

 

ハバキに関しては二重ハバキではないので強度的にはそこまで問題ないかなと考えます。刃長が短い分、テコの原理的に大刀ほどハバキ元に負荷がかからないはずでもあります。

 

重量は重たいけど、これは力量次第でもあります。また豪壮だけど短いので大刀と同じ程度の重量です。両手なら凡人でも問題なく振り回せます。大刀を豪壮にしてしまうと凡人には扱えないでしょう。私の手に余り過ぎない豪刀が出来たのではないかなと思っています。もしこの刀と同じ形の定寸刀を作るとすると、単純に刃長・重ね・身幅を1.2倍にして計算したら体積は1.72倍になるので1350gになってしまいます。

 

 

そして、なんと言ってもこの刀は備前長船助光刀匠の作であり、柄は頑丈なミズメの柄です。基本構造が頑丈です。

 

極端な大切っ先は鋭角になるぶん鉄が少なくなり理論的には強度が弱くなり先端が欠けやすいはずですが、裏を返せば鋭角で敵に刺さりやすいという事です。また先端重心なので短い割には斬撃力に優れます。

 

狭い室内の戦闘で敵の頭蓋骨を叩き割ったり、肋骨の隙間にねじ込んで内臓に突き立てたりするのには力学的に優れていると思っています。

 

助光刀匠がブログなどで書かれている日本刀のなんたるかというようなものとはかけ離れた思想の刀なのですが、依頼者の意図を汲んでこういう刀を作って頂く事ができました。

 

 

 

 

↑こういう人が振り回していそうな刀をイメージしたのでもっと野蛮で下品な感じになるかと思っていたのですが、刀匠の技量でとても美しい刀に仕上がり驚いています。

 

 このような刀は注文打ちでなければ入手できないと思います。とても満足のいく刀ができあがり嬉しい限りです。

 

格闘戦用の短刀も欲しい・・・

 

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後日追記

 

刀剣画報に載せるための写真をプロに撮ってもらいました

 

 

 

 

 

 

 

 

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注文打ちの大刀の方↓

 

 

 

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